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[舌先を差し入れて][甘く]
[せめて苦痛を、少しでも楽にしてやれるように]
[それならば殺してしまえばいいのに]
[どうしても][それが][できなくて]
[苦しめることになるとわかっているのに]
[口唇を離せば、肌蹴た胸元に唇を寄せて]
[先ほど噛み切った、そこに]
[再び舌を這わせて]
[長い、爪が] [精神が]
[そっと] [狂っていく]
[頬を撫でる] [月が遠い]
[はあ、と。
嘆息とも吐息ともつかない息が一つ、こぼれて。
蒼の花に由来する痛みは、もう、ほとんど残っていない。
あるのは、それが裂かれた痛み。
でも、それはよろこびを伴っていたもの。
だから、厭う事はなく]
……あつい……。
[代わりに、酷く感じている事が。
ぽつり、と。声になってこぼれた]
─二階・エルザの部屋─
自衛団のひとたち…
[それは集会場に呼ばれた人達の大半が]
[半分強制的に連れられてきた訳で]
遠く…?
エルザいるなら、どこだっていい
[わらって]
―居間・身上書のボード前―
[ふる、と頭を振ってその考えを追い払う]
…見に行こう。
[彼の部屋が何処かなんて知らなかったけれど]
[妙な胸騒ぎが。
それの疼きが。
二階へと、足を――]
[遠く、銃声が聞こえた。
二階へ上がりかけた足は止まり、窓の向こうを見る]
[明るい室内ではガラスには自分の姿が映るばかりで、何も見えない]
[声が届く][爪は細心の注意で頬をやさしく撫でたまま]
[再び、口付けて]
痛くはないですか?
[耳元で囁いて] [そんなはずもないのに]
[そっと][無理やり奪った蒼の花の咲いていた場所を]
[反対の手の爪で撫でて]
[痛いだろう][思いながら]
[微笑みは][いつもと同じようで]
[そのまま、服を、しっかり広げる]
[心臓の上に、くちづける]
あぁ…彼ら、が…
[つまりはやはりそういうことで]
[その中にブリジットが居たのは、昔の出来事のせいなのだろうけど]
[だからこそ、ここに居てはいけない、と]
ええ、遠くへ。
ここを出ましょう、ブリジット。
一緒に旅をするの。楽しいわよ?
[そう言って、笑いかける]
[投げられた問い。
声が上手く出せないから、頷いて答えた。
蒼の花のあった所が激しく疼いているけれど。
そこにあるのは、痛みと言うより熱さで。
それなら、耐えられるから。
大丈夫だから。
そんな思いを込めて。
ただ、微笑む。
滴り落ちる真紅が。
少しずつ。
少しずつ。
元から僅かだった時間を削って行くけれど。
ただ、笑んで]
−集会所、外−
[周りの家々には光はなく、ただ、その建物にだけ、灯る明かり。
二階のいくつかの窓だけが、外へと光を漏らしている。
…居る。
そう、確信めいた予感。
背中を丸めることもなく、玄関からずかずかと上がりこむ。
足の向く先は階段。]
[うなずく様子を見て]
[泣き出しそうに] [――否もう泣いているか?]
[だんだん広がってゆくあか]
[あまいにおい]
[口付けた場所で、脈打つおと]
[ここを貫けば][おわる]
[いなくなってしまう]
[それでも] [くるしませたくないならば]
さようなら、エーリッヒ
[微笑みと声は][うまくのぼっただろうか]
[分からないけれど]
[そこを][鋭い爪で][無理やりに]
[ 貫 い た ]
ハインリヒ?
[殆ど会話らしい会話なんて交わしたことのない相手だったけど、それでも様子がおかしいと思って]
[声を投げる。
届くかはわからなかったけど]
[立ち止まる自分を追い越した彼の背に]
[貫かれた衝撃。
それは鋭かったけど。
それでも。
それで。
望みは叶ったから]
………………。
[声はやっぱりでなかったから。
ただ、笑んで。
目を閉じた]
[小首を傾げる様子に、そっと微笑んで]
そう、旅に…
一緒にいろんな所に行って、歌を歌って…
ね?楽しそうじゃない?
[真似るように小首を傾げて]
[それが夢のような話とは思っていたけれども]
[いのちをくらう]
[その笑みを見て]
[安心させるように][あかにまみれて][ほほえんで]
[ああ、何か音が聞こえる]
[ふりむいて]
[ふたりに、微笑んで]
[頬を伝うものに気づくはずもなく]
[腕の下で止まった幼馴染に]
[もう一度、口付けた]
[あかいしんぞうを、抱えたままで]
[その話を聞くと、ぱぁと頬を紅潮させた]
うん!
うん、うん…行く…行こう……行こう、エルザ
[ブリジットはそれが夢のような話だとは思っていない]
[エルザを信じている]
抗えなかった……
そう、かもしれません。そうでないのかもしれません
私は
[ハインリヒの言葉に、小さく微笑んだ]
私は、エーリッヒを
イレーネを、たべたかった・・・
[ハインリヒの背で上手くは見えなかったけれど]
[血の臭いと]
[オトフリートの纏うあかだけは]
[いやに、はっきりと目に映った]
[だからブリジットは立ち上がると、エルザの手をとった]
[早く早くとせかすように]
[今にも部屋から外に飛び出してしまいそうだった]
[その手は、腰のホルスターへと伸びる。
銀の弾の込められた、現役時代から愛用していた銃。]
もう後戻りできねぇんだろ?
繋ぎ止めるものすら、自らの手で壊しちまって。
[ゆっくりと、それを抜き、銃口を向ける。]
[――また、死んだ]
[知覚した瞬間、血の気が一気に引く]
[それを無理矢理押し止めたのは]
…痛……っ…
[責めるように走る痛み]
[けれどそれは、不意に、すぅと引いて]
[堪えるように閉じていた目蓋の奥には、青紫の瞳]
殺してください、私を
――ふたりをころすまえに、しんでしまえばよかったのに
[微笑んで]
[それから][エーリッヒの体を見る]
[うごかないからだ]
月が、でるまえに……
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