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[静止というよりは。
同じように行きたかった。
だが。
身体がもうついていかない]
殺さ、ない、で…。
それ、を、望ま、ない、人、を……!
[兄は望んだ。
けれどアーベルは望んでいなかった。
そして恐らくは今も]
何、か…。
[クレメンスを見上げる。
何か手段があるのなら]
[昨日と同じように、声を辿る。
否、辿るまでもなかった。
冴え冴えとしたひかりに照らされる、蒼。
薄闇に包まれた世界でも、鮮やかに映える色。
浅くなる息は、急に動いたせいだけじゃ、ない]
――アーベルっ
[何も考えていなかった。
ただ、名を、呼んだ]
あんな規格外の代物、早々殺せねえけどな…って
[止めるまもなく、言ってしまうユリアンを見て苛立たしげに舌打ちを一つ打って]
そんなの知るか。ハインリヒ。俺は人狼じゃないんでね
[そしてユリアンに続くように扉、外へと]
[男は、ダガーを手にしたまま、ユリアンの後を追うように扉を開ける。白い雪の中には、蒼き狼]
アーベル、か?
[初めて見る姿に、ごくりと喉を鳴らした]
[名を呼ばれ、そちらを見る。
ゆるり、傾げられる、首。
開いた口からは、やはり、吼える声だけが響いて。
蒼の風は、何かに突き動かされるが如く、現れた者たちへと、駆ける。
雪の上、跳ねる。
蒼]
何かなんて。
俺が何か出来るとお思いですか?
[シスターの言葉に器用に片眉をあげてみせる]
って、イレーネ君、無理をしてはいけませんよ
[蒼い狼が雪を蹴り跳ねる、男は前方にいるユリアンを思い切り横に突き飛ばす]
退け!!これ以上、殺させたいのか?!
[右手のダガーは、狼に向けられている]
[こちらに向けて駆けてくるアーベルを見て
瞳の奥には朱金が宿る]
結局こうなるのな
[悪態をつきながらも、懐から短刀を一つだしその瞳を狙って、投げつける
最も当たるなどと微塵も思っていないが
投げつけると同時に、二振りの剣を抜く]
[背後からの気配と、声。
振り返り、叫ぶ]
駄目、……っ!
[駆ける蒼は見えなかった。
突き飛ばされた、と気づくには間があった。
雪の上を転がる]
[ハインリヒの動きを視界の隅に捉えつつ。
飛来する、気配。
蒼狼は素早く横へと飛びのいて、それを避ける。
低い唸り声には、微かに苛立ちの響き。
双剣を構える巨漢へ向けて、蒼は再び、雪を蹴る]
…アーベルさん、なんですね。
[残された人狼]
[外に向かう男達を見守って]
[イレーネを庇うように側に]
殺す事を望まないものを殺す、という事は
誰のためにもならない…
それではシステムに抗う事にはならない。
無理、なんて。
[揺れる視界。それでもクレメンスを見上げて]
みんな、してる、わ。
アーベル、さん、だって。
[肩で息をつく]
…望ま、ない。
私に、いま、できる、の、は。
[肩を抱える。
痛みに耐えるために。
少しでも…刺激を減らせるように願いながら]
[こちら目掛けて駆ける蒼狼を朱金が宿る瞳で睨みつけ隙なく構える。
ただ念頭にあるのは回避のみで
体をゆらりと揺らして突進を避けるように体を動かし横に逸れて流そうとする]
そう見えるだけですよ、シスター?
[わらう]
[そしてイレーネに目をとめた]
そうですね。
それなら止めはしませんが…
[いくら遅効性といえど、そろそろ兆候はでるだろうかと考える]
[手を突いて、身を起こす。
複数の、煌めき]
っ、
[蒼狼と対峙する男には届かない。
立ち上がり、自分を突き飛ばしたハインリヒに近づく。
その腕を掴もうと、手を伸ばす。けれど、距離はわからない]
なんで!
邪魔しないで、アーベルが……!
[男もまた、雪を蹴る。蒼き狼に向かって]
馬鹿野郎がっ!!
[獣の足は速い、せめてその足を止めようと、雪の上に落ちたマテウスの短刀を拾い上げ、背後から、狼の後ろ足目がけて投じる]
[また、名を呼ばれた。
ふい、と蒼の瞳はそちらを見やり。
瞬間、対象を捉え損ねる。
突進はいなされ、蒼は前方の雪溜まりへと飛び込んで。
投げられた刃は、後足を掠め、微かに紅を散らした]
[低い、唸り]
[身を翻し、距離を、そして、機を計るよに、低く構えた]
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