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……。
[ナターリエが、口に人差し指を添えて―――何故か、妙に艶かしい―――ゆっくりと、エーリッヒのそばへと移動する。
……はたしてそこには、怪しいと思っていた人物ノーラと話しているエーリッヒの姿]
(……どう、とればいいのかしらぁ。
まずは、様子見ねぃ)
[ナターリエの仕草は枯れた老竜にはどう映ったであろうか。ひとまず声を出すなと言うその行動に口を噤み。こそりと覗き込めばそこにはエーリッヒとノーラの姿。
ナターリエが言わんとすることを察し、まずは様子をみることに]
それほど、厭うことがあったんでしょうか。
< 後ろから声をかけたのだから、此方を窺う気配は機鋼の仔竜より悟り易いか。しかしまるで気付いていない素振りで、言葉を続ける >
剣の一は影輝の属を持つ。
そして強き力ほど、揺らげば及ぼす影響も強い。
暴走の前兆が混沌のかけらを変貌させたのかもしれないですね。
この場の均衡は崩れている。
< 後の科白にも、無関係とは思えないというように微か首を振った >
[然程高くもない椅子から飛び降りた仔は、難無く着地を果した。
腰を屈め伸ばされた腕へ常の様に絡みつく。]
…ブリジット、つかれちゃったのかな。
[未だ眠ったままの氷竜殿の顔を覗きこんで、仔は私へと視線を向ける。
かも知れぬ、幼子を抱えたまま果てには昨夜の様子は均衡が失われし所為か
体力の消耗は著しいものに他ならなかったに相違なかろう。]
つかれたら、なんだっけ。
…おみず?
あと、ととさまは、ひなたぼっこでのんびりするといいよって。
[――それは少々翠樹故の影響もあるかも知れぬが。
尤も、雨は上がれども陽が差すには空は程遠い。]
―― 廊下 ――
そうでしょうか?
でも、あの時、ダーヴを送った剣には影輝の気配は無かった…
[感じたのは、天聖と流水、そして得体の知れぬ力。或いはそれが揺らすものの力の一部だったのか?]
或いは、対の剣が、揺らされた者に渡ったことで、もう一方の剣もバランスを崩している?
うっわあ…まじでやばそ…
[また怖い考えに至ってしまって、頭を抱える]
[ノーラの言葉に小さく、ザムエルにのみ届く言葉で囁く]
……なるほどねぃ。
昨日の影の如き、混沌のカケラは、貴方のほうの剣の力の暴走ということかしらぁ。
陽光が消え、月が揺らされていることにより、影がバランスを崩した末の結果、ということも考えられるのかしらねぃ。
ただ、私達が聞いているときにそのような話題になったのが出来すぎ、ということが少しだけ気にかかるかしらねぃ。
[少しだけ思案して、後のエーリッヒの言葉を聞けば]
ふむ。
機鋼のは冷静なようですねぃ。
それは、わからないけど。
実を言えば、影輝の気配は感じていました。
……ザムエルさんから。
確証がなく話す機会も逃していたから、手を出せずにいたけど。
どちらにしても暴走の危険性があるのなら、捨て置けません。
ひとまず話を聞いてみましょう。
< 悩むエーリッヒとは対照的に、顔を上げた >
…おみず、とりにいこっか。
リーチェも、のみたい。
[流石に陽に当たるのが難しいとは幼子も理解したか、
氷竜殿に掛けられた毛布を僅かに直し――否、不可抗力とは云え先程より少々落ちているやも知れぬが、幼子が気付いた様子は無い。
前回と同様、氷竜殿を起こさぬ様に忍び足で部屋を抜ける。
幼子の足跡が、前程より育つのは気のせいか。
結果的に萎れるのは同じであるが、些か奇妙に感じた。]
―個室→回廊―
え、ザムエルさんからって…
[その名が出るのは、意外ではないといえば無いのだが(何しろ剣の所持者候補は限られて来ている)影竜が上げた視線を追って、きょとん]
……いや、暴走と言う暴走はして居らぬ。
力が瞬時に増大した時はあったが、あの後直ぐに抑えておる。
別に要因があるはずじゃ。
促進した部分はあるやもしれぬが、な。
主要因ではないはずじゃ。
[ナターリエから囁かれる言葉に小声で異を唱える]
ノーラは、儂らが居ることに気付いて居るやもしれん。
何せ腕輪──剣があるからの…。
[こそりと、己が左手首に据えられた腕輪を右手で握った。エーリッヒの様子を見れば、状況はそれなりに理解していたようで]
言葉に揺らされはしておらぬな…。
……じゃが何じゃろうか、何かがおかしい……。
[それは近付いたがために気付いた異変。鋼に似た何かが、変化している気配]
あらぁ。
なんとなくは思ってましたが、やっぱりばれていましたかぁ。
[小さくため息。だが其の顔は笑みを浮かべている]
ばれてるなら、此処にいてもしょうがないわねぃ。
[ナターリエが二人の前に姿を現した]
ま。真打ではない私に用は無いのでしょうけども、在籍ぐらいは容赦してよねぃ。
[ナターリエに続き姿を現し]
……エーリッヒ、お主何か変調をきたしては居らんか?
[訊ぬは先に感じた異変について。変じた場所を探し視線を彷徨わせ、辿り着くはエーリッヒの左手]
計ったようなタイミングですわねぃ。
< 口調ばかりが流水の竜を真似、笑みを含んだようになる >
いえ、もし悪い想像が当たっているのなら、
人手は一つでも多いほうがいいのだから、
用がないなんてことはないわぁ?
―食堂―
[窓の一つの鍵をあける。]
[それから、少し開く。]
[ベアトリーチェの居場所を、必ずわかるようにしなければ。
雨の降った後でよかった――水の魔法が使える。]
[メタルの左腕は、大地の司る鉱物より鍛えられる、そのため地竜には変調を気付かれるかもしれないとは思っていた。だからこそ、逃げ出そうとしたわけだが]
いえ、その、別に、大したことはっ!
[ここで寝違えた、はもう無理ですよね、な感じで、じりじり後退]
―食堂―
[片付けると言う月闇の竜にカップを渡し、青年は暫く目を閉じて記憶の整理をしていた。
やがて窓の方へと歩み寄る月闇の姿をレンズ越しの紺碧が追う]
……そうですね。
[花茶を飲んだ身は温かいが、窓の隙間から入る空気は足元へ流れひやりとさせる]
………。
[窓の外に満ちるのは淡い闇か、薄い影か]
……逃げられぬよう、
きちんとしたところで話そうかの?
< 手出しはしないものの、立ち位置の関係で機鋼の仔竜を挟み込むようになり、退路を断つ位置に佇む >
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