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[ヘルムートはその様子をどう見たか]
[――自分の戸棚は開けていない。
荷物を先に見つけたから]
[Brigitte=R=Eglantier]
[文字盤。記憶の彼方。
あのとき、何があったのだったか。
押し込められ――奥にあったものを手にする。
それはパスケースか、*はたして*]
[ブリジットとハインリヒは、此処に来る以前からの縁だと聞いていたので、彼女がハインリヒ荷物を探しはじめた事そのものには驚かなかった。]
何か──重要なもの、か?
手伝って問題無ければ、手伝うが。
[ハインリヒに*問うた*。]
[オトフリートが石に変わった経緯を知る。
少女の言葉に、息が詰りそうな気分になる。]
えぇ…本当に。
神様は―――残酷ね。
[大事な人ばかり、消えてしまうのだろう。]
……っ、…どうして
なの かしら。
私にも…解らないわ。
[涙が零れ落ちそうな時、少女の手の感触に救われる。]
情けないわ…私。
ベアトリーチェに…
貴方の言葉に救われてる。
私も…貴方を護るわ。
エーリッヒの分も…必ず。
そして…貴方のお母さんに会いに行きましょう?
[手を引かれると立ち上がり空いた手で下り階段を導く。]
一緒なら…平気?
[オトフリートの事は問わなかったが
注射を誰かがして助けようとしていて
目覚めたら石という事は、ハインリヒが
何か知っているという事の推測までは出来た。]
―→2階 部屋6―
…アーベル、…
[ナターリエはまだ眠っているだろうか。
他に人が居ると思っていたが姿はなかっただろう。
部屋を見渡せばオトフリートの石像。]
……
[また知らない間に、人が石になってしまった。
既に病のせいではない死が訪れすぎている。]
あ、……杖、だったわね。
[落ちていた少女の杖を見つければ少女の手にそれを]
―衣装部屋―
[硬く、そのままの姿で石になってしまった女に話している。]
……そう、すべて、うまくいっているかに見えた。
仕事に誇りをもっていたし、信頼も受けていた。
だけど、悪いことが2回重なった。
ひとつは、自分のうちが焼けた。
誰も命は落とさなかったけど、
うちがなくなって……それを支えに生きていた祖母が、まるで枯れるように亡くなった。
いつでも、まるで花びんに生けたダリアのように優雅で落ち着いた人だったのに。僕は祖母が好きで、いつまでも、祖母はそんな人なんだって思ってたから、
だから、それがまるで焼けてしまった煤みたいになったのが、信じられなかったし、つらかった。
もうひとつは祖母が亡くなってしばらくして、
化学繊維工場の火事があった時、
きっかけは仲間のミスだった。でも命は落とさなかった。
爆発を受けて、火の中に取り残された。打ち所が悪くて、意識あるのに、身体はまるで動かなかった。
そんな僕を舐めるように火は襲ってきた。
結局は助けられたのだけど、僕は、そこで大事なものを失った。
僕は、火が怖くなってしまった……。
もちろん、そんな告白はしなかった。ただ、それまでじゃなくなった…。
周りは何もいわなかったし、気づいてなかったかもしれない。
だけど、僕は駄目な人間になっていった。
そして、メデューサに患ったと診断されたとき、
僕は思った。
ああ、これで、僕は焼け死ななくてすむ……。
火の中で死なずにすむんだって………。
[そして、立ち上がる。
それから、石像になった女性に口付けて……]
僕は、美しいものを助ける
そして、その人らしい姿で石になってほしい。
ねえ、狂ってる?
だって 人は、
いちばん輝いている時に、
そのままの姿でいるほうがいいと思わないかい?
[その場でしゃがんで、少女の手を握るように杖を握らせ
そっと、そっと静かに、囁くように少女へ問う。]
ピューリトゥーイ…の事、どう思う?
エーリッヒを石にしたのは、きっと…――彼ら。
[唇を緩く噛んで、赤いアルゴルを想い浮かべる。]
……
[空いた手に持つのはカルテと救急箱、そして小さな紙。]
(――…ペガスス。)
[紙を見下ろしながら、赤い髪の青年を思い出し]
お願い――…負けないで。
[病にも、薬にも。ふたつの意味を重ね呟き星に願う。]
―衣装部屋から一階ロッカールームへ―
[部屋を出た時、階下に向かう気配を感じて、そのままそっちに向かう。
そして、ヘルムートとブリジットがロッカールームに入っていくのを見た。
ポケットの中のカードキーを握りしめる。
そして、同じ場所へと足を向けた。]
……ツヴァイ?
[そして、ロッカールーム内にヘルムートとブリジット以外の人物を見るだろう。]
みんな、探し物か?
アーベル…皆は何処に行ったか知らない?
ゼルギウスに繋がるヒントを手に入れたの。
[顔を上げカメラを持つ彼に問いを投げるだろう。
この紙はユリアンが居なければ手に入らなかった。
それを無駄にしたくない。
何か、と問われればメモの内容も伝えるだろう。]
…ハインリヒに渡す物もあるし…
……
[カルテを見て、そこにダーヴィッドのカルテもあると気付く。ハインリヒのメモ書き、あの時の光景を思いだした。
彼が――赤星。「言わず」とも「印す」事なら出来る。
壁の茨で左手の指を刺し、ダーヴィッドの名前の上に赤い丸。]
…探して来るわ。
ベアトリーチェ…一緒に行く?
[遠く…鏡の先を見つめている。紺青の髪の男の姿。]
『―――…もう、疲れたんだ。薬は間に合わない。』
[寸分変わらぬ声でそう言った。]
『やってきたことは全て無駄だった…この病は治せない。』
[諦めきった、咳交じりの男の声。]
『どうせもう…助からない。』
[誰も、救えない。][俺も…お前も。]
[―――…ならば、いっそのこと…]
[鏡の向こう側、
紺青は虚ろを見つめて……その手で、首輪を断ち切った。]
[ただ一人を救おうとすることが、何故こんなにも難しい。]
『――…このまま狂えてしまえたのなら、どれだけ楽か。』
……お嬢さんが探してるのは、もしかして俺の荷物か?
そんな重要なものでもないし、あまり気にしなくても
…いいんだがね。
[ブリジットがロッカーを探す姿に苦笑が零れる。
先程掛けた警告は少女には届かなかったのか。
――…軋む音。赤く滲んだまま凝固した拳を緩く握る。]
…お前さんは。
何か用事があってここに来たんじゃないのか?
[手伝うというヘルムートには首を横に振って用件を促す。
用事はロッカールームにあるのか、それとも男にか。
言っている間にダーヴィッドも姿を現した。
少し、休みすぎたか…そう呟いて。
立ち上がると数度、自分のこめかみを小突いた。*]
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