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特に、行き先を決めていた訳でも無いですけど
――気になさらず。
[頭を下げる少女に、ゆると首を振って。
考え込む知人を見やれば、くつりと喉を鳴らした。
僅かに首を傾ぐと、さらりと金が揺れて]
あまり考え込まないほうが、良いよ。フェイ。
慣れない事すると、知恵熱出すかもよ?
[冗談交じりに、くつりと喉を鳴らす。]
へ?あ、ああ、うん。
[どこかいくという言葉に既に気持ちは半分ぐらい彼女を見送っていたのだが、それが急に釘をさす言葉に変わればそれこそ鳩が豆鉄砲食らったようなぽかんとしたような顔のあと、首をかしげつつ、うんと頷いた。
この場を平和におさめるなら、それが一番だと判断したからだ]
[静かに二人の会話に耳を傾けていたが。
負けたら全てを奪われる。それは避けようもないだろう事実。
だから、奪われないためには……奪うしかなく……]
[軽く返された否定の仕草に小さく溜息を吐く。
だが元よりそれほどの期待をしていたわけでもない。とりあえず黒猫は研究者そのものではないのだと脳裏に置いて。
後は少女の操作とその結果を黙って見つめていた]
知恵熱って、ちょ、お前ひどい!!
[流石に馬鹿にされたのはわかっていて、カチンときたのかそれこそ猫が毛並み逆立て威嚇するのを思わせる勢いで日碧をにらんだけれど、それが効果があったのかどうかは一切の謎であり]
そーいうこというヤツは、ふらふらしてて瓦礫の下敷きになっても助けてやんないんだからな!!
ん、そーだな。
[人の事まで手が回せるかはわからないし、そこまで入れ込める相手が多数いるわけでもないのだが。
それは言わずに、頷いて。
ぶつかり合う気配が静まったのを感じれば、まだゆらゆらと舞う糸に、意識を向ける]
Halten Sie einen Faden an….
[紡ぐのは、糸を鎮める言葉。
力を失したそれを右手に確りと巻きつける]
さて、どーやら一つ終わったようだし……俺、ちょっと見てくる。
[早口に告げるのと、銀の羽が舞うのは、どちらが先か。
銀翼が開き、屋上を蹴る音が周囲に響く]
[騒ぎ始めたユリアンと、それを相手にするエーリッヒを振り返る事はなく。
何処か――と言った以上、すぐに建物に戻る気もないようだった。]
[──────ぴしり。]
[彼女の内面。『ナターリエ・ヘルゼーエン』としての意識に、一筋の罅が入る。
もちろん、意識の音が外部に漏れ出ることはなく、そばの二人がそれに気付くことはない。]
――あれ、言ってる意味バレちゃいました?
[威嚇する青年の様子に、更にからかう様にくつくつと喉を鳴らす。
先程まで、虫の居所が悪かった腹いせ…と言うわけでは無いけれど。
続く言葉には、僅かに翠を細めて]
…あれ。助けてくれないんですか?
そうしたら、こんなところじゃ直ぐに死んじゃいますね。僕。
…良く、わかんないや。
違う気が、するけど…。
[背中に広がる赤い血だまりはどんどんその範囲を広げ、痛みにゆがんでいた顔はゆるやかに瞼を下ろしかける。]
[確かに、誰をも助ける事はできない。
けれどせめて、護れるなら大切な人くらいは。
むしろ、自分を護れなくても大切な人くらいは護れるかもと
遠くない未来、彼女が思う時は来るだろうか。
未来を知らない彼女が自分の未来ではなく、
誰かの未来を先に見つけたならば――]
あ、待って――。
[銀の翼が舞うのを追って、白の翼も宙に踊る]
テメ。
流石に俺が三歩歩いて忘れる鳥頭でも、馬鹿にされてることぐらいわかるっつーの!!
あー、ムカツクーーーーーーーーー!!
[青少年の騒がしい声はきっとあたりに大きく響いたに違いない。
けれど続いた言葉に、僅かに小さくつまって]
…な、なんだよ。
じごうじとくってやつだろ。
こんなところに呼ばれるくらいなんだから、どうにか切り抜けろよ自力で!
[見上げた空には、透明な夜が広がる。
煌めく星のひかりは、遠く。
銀が、舞うのが見えた。]
――……きれい。
[続いて踊る純白に、緩やかに、瞬かれる緑。]
じゃあ、きっと違うんだわ。
[所詮は影。
決して本物にはなれない]
ま、アタシはアタシ。
他の何者でも無いわ。
誰かに成りすますことはあってもね。
[ユーディットが横たわる地面に徐々に赤が広がる。
それを見ると少しだけ眉を顰めるか]
手当て前に死にそうねぇ。
[スタッフはまだかと流石に辺りを見回した。
自分で応急手当をしようとは思わない。
その手段を持たないから]
あはは、殺すつもりだったんじゃないのぉ?
少なくともボクは、キミを殺すつもりだったよぉ。
[傍らに立つ女性に、いつもの無邪気な笑みを向ける。
倒れ伏していても、その手が鎌を離す事はない。]
[自分を追う、白の翼の思いなどは知らぬまま。
知ったなら、他者よりも自分を、と諌めるのだろうけれど。
感じた血の気配に引かれるように、そちらへと空を翔け]
……って、こいつはまた……。
[ふわり、と着地して目にした光景に。
零れたのは、低い呟き]
[てぃるの言葉に手で目元を拭いながら、
俯いてふるふると首を横に。
けれど、涙はとまらなくて。]
[正面のモニターには、現在地と目的地が、
グリッドの上に示され。]
――…自覚は、有るんですか?
[鳥頭、との言葉にきょとりと瞬いた。
…何気に酷い言葉だが、意図しているのか無意識なのか。
賑やかに文句を告げる様子には、
夜間なんだから、もう少し静かにしたらどうですか、と静かに嗜めて。]
幾らなんでも、突然の崩落にただの「顔のお綺麗なおにーさん」が
対処出来るはずないじゃないですか。君じゃあるまいし。
[続く言葉には、いけしゃあしゃあと]
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