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そう。
いってらっしゃい。
[赤毛の少女の内心の思いを悟る事もなく。
廊下へと踵を返す背に向ける言葉は、やはり淡々として。
薄紫の瞳には、静かな色彩]
…………。
[零れ落ちる、嘆息。
閉じた鍵盤に、しばし、視線が落ちる]
何故、誰が武器を手にしたか…。気になるのでしょう?
『自分だけ――』人と違う行動を取っては『疑われる』から?
私は…傷つけられない自信なんてありませんけど…、他人が武器を手にしようがしまいが…気にはなりません。
人を疑いたくないから――甘い考えですけどね…
[自嘲的に微笑むと、怪訝そうに返された言葉には答えず――]
そういえば…ハーヴェイさんはご存命の方の存在を、メイさんくらいしか知らないと仰っていましたが…。
何か私を見て…違和感を感じませんでしたか?
[話題を変える――]
[少しずつ距離を取りながら――]
……ボクも…………行こう。
[どこへ、何をしに。
それを言葉にはしないものの。
……それでも、ここにいるよりは、と。
静かに、音楽室を出て、扉を閉める]
…………。
[しばしの沈黙。
やがてその足は、ごく自然に広間へと]
-廊下-
[音楽室を出、ネリーの使用人室の前を通る。
玄関前まで出たが、金の髪の少女の姿はなかった。
外に出たのかと扉を開け、思い直して室内を振り返る。
その視線の先には、館の主が死んだ夜、皆で集った広間。]
人を傷付ける武器が其処に在るのに、気にしない?
疑われるから、ではない。自分に危害が及ぶかもしれないからだ。
[ 話に成らないと、然う云いたげに肩を竦めて云えば、]
人を疑いたくないから、信じたいから、ですか。
俺には出来ない考え方です。其れだけの話。
[次ぐ問い掛けにも動じる様子は一切見せずに、淡々と声を紡ぐ。]
……ええ、ルーサー神父がいらっしゃらない。
そして、貴女が『聖書』をお持ちだ。
[ 少女を見詰める双瞳は何処か冷え、感情を感じさせない。]
態々、「死んだなったのか」――然う尋ねる事は、無粋かと。
……人……異形……。
ねぇ。
なにが、どう違うの?
[自らを異能という立ち位置に置いてしまった巫女には。
それらの相違が、掴めずに。
こんな呟きをもらして、そっと、広間の内へと滑り込む]
─…→広間─
[扉をあければそこには久方ぶりに見る濃茶の髪の青年と、金の髪の少女、殺人者の男と、ヘンリエッタの大切な少女。
この館にまだこれだけの人が残っていることを喜ぶべきか、減った人数を嘆くべきか。
一瞬だけ考えたけれど、彼女にはどうでもいい。大切な人が生きてさえいれば。]
[双眸は前を見据えたまま。
袖のホックを外し、中に収められた黒い塊を掌中に。黒の端には紅い狗。
“弾”の込められていない、武器にすらならないそれを弄ぶかのように掌でくるり、転がす]
焦らさず正直に言って遣れば好いのに……
[琥珀の眸は炎の照り返しを受け][黄金に煌き]
[揶揄する様に][刻まれた笑みは薄く]
[一掻きで掻き落とせるのではと思う程]
[その、大切な人のいつにない厳しい表情に、少女は頬を堅くする。
彼女が見据えるは、濃茶の髪の青年。
”俺が人狼ではないかと”青年の言葉が響いた。]
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