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……。
[すやすや、][眠りこける白の獣]
[眼は閉じられて色は知れず]
[一部異なる色は左前脚の青い布]
猫?
[一般的な名を口にせど、背には異なる真白の翼]
[呼吸に][風に][微かに揺れる白][じっと眺める青]
< すぅ、すぅ。
猫は見られていることに、気づいていないのか、とてもやすらかな眠りのなか。
たまにぴくりと羽根は動いて、からだは息にあわせて、すこしゆれて。
……どう見ても、気持ち良さそうでした。 >
[微かに指先が触れる]
[僅かに猫の髭が震える]
……、
[手を引いたが猫が目を覚ます様子はなく]
[もう一度触れて、今度は、毛並みを撫ぜる]
< その手の なで方が気持ち良いのでしょうか。
猫は、かすかに喉をならしました。
目をあける ようすは、ありません。
うっとりとしていて、けいかい、なんてどこかに捨ててきてしまったよう。 >
[毛の流れに添うように指先は伝い]
[羽の付け根近くをほんの一瞬擽り]
[喉の鳴るのに気付くと顎の下へと]
……、気持ち好い?
[問いかけは][届いたか否か]
[ぽとり、手のひらから林檎が落ちた。]
[ころり、転がって猫の近くで止まる。]
< ごろごろごろごろ。
ふるり、ふるえた羽根が、もっととねだるように、隙間をつくって。
あれれ。
さすがに声がきこえ、耳がぴくりと動きます。 >
…きもちいい
< やっぱり言葉じゃなくて、なきごえでした。
耳に届いた落ちる音。
おっくうそうに目を開けて、赤と、その先、かれの姿が、あおい目にしっかり映りました。 >
< みつめあうのか、にらみあうのか、観察しあうのか。
そんなのが続きました。
しっかり止まっているのは、その場にふたり…
ひとりと、いっぴき。
最初に目をはなしたのは、猫の方でした。
すこし頭をはなして、その手にこすりつけると、落ちている赤へとちかづきます。 >
[青の眼が緩やかに瞬かれる]
[白が動くのに釣られて移ろう視線]
[赤が地面に転がっているのを認め、]
ああ。
[声を零して果実を拾い上げる。]
[服の袖で拭う][土が付着して][更にくすむ白]
……起きた?
[しゃがんだ姿勢のまま、問いかけ]
< 肯定は、にゃあ、と小さななきごえで。
こくり、うなずいて。 >
…?
< とりあえず、ふるふると。頭を振りました。
めざめ の ぎしきです >
< 手が上から近づいてくるので、その横に頭をまわりこませます。
だって上からは嫌なんですもの。
すりすりと自らすり寄って、猫はなきました。
でも、きっと、意味までは伝わらなかったでしょう。
目をほそめて、のどを鳴らして、きもちよさそうですから。 >
< さしだされた赤が、なんでだかわからなくって、ふしぎな顔になりました。
どうしよう。
ことばが通じないのは、ふべんです。
猫はまた、じーっと、りんごを通り越して、かれを見ました。 >
……要らない?
[通り過ぎた視線]
[果実を口許に移して一齧り]
[滲み出る水分が喉を潤した]
何、
要るんだろう。
[猫から手を離すと、手招きして膝を叩く。]
< いらない。
にゃあ と ないて、猫はその動きにとまどいます。
しかしなんとなく、さからうのも おっくう で。…たぶん、それは、まだとっても ねむいからでしょうけれど。
四つの足が、こうごに地面をふんで、ためらいがちに、ひざの方へむかいます。 >
< 羽根がちょっと、たよりなさそうに、ぱたぱたと揺れました。
猫の身体は、かれの手の中。
ぽかぽか、おひさまのように、あたたかな体。 >
[枷のない右腕で白猫の躰を抱き上げ]
[温もりより柔らかな感触を求めて撫ぜる]
……とりあえず、
[枷のある左手で赤い果実を放り投げ]
[手のひらで受け止めるとしゃらり鳴る鎖]
行こう、か。
[立ち上がり足を一歩踏み出す]
[歩みに合わせて僅かに揺れる躰]
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