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[異様に伸びた爪に思わず喉の奥がなり、あの警笛が再び鳴り響く。]
[それでも、弱さを見せれば奪われるだけと睨み付け。]
いいえ、貴女は……少なくとも私の知ってる九条さんじゃぁない。
今の貴女が何なのか知らないけど。
[背には桜の樹、後ろに逃げる事は適わず。なら……。]
私は私、誰かに上げる力なんてないっ!!
[右手をかわそうと横に飛ぶ。]
……俺自身……これが、なんなのか。
なんで、こんな事ができるのかとか……こんな事知ってるのかとか、全然わからない、けれど。
……魂、とか、そういう……物凄く、奥深い所に。
多分、生まれた頃から、なのかな……刻み込まれてるみたいで。
『憑魔』を浄化するもの……『司』。
自分が、そういうもの、なんだって。
[静かに、告げて。
視線は一瞬、アズマの方へと向かうだろうか]
[一瞬、逡巡。
フェンスに背を向けて駆け出す。
鍵の壊れた屋上の扉は開け放ったまま、
踊り場から、次の踊り場へ飛び降りる。
膝を大きく曲げ、片手を軽く床について衝撃を和らげ
即座に伸び上がり、機敏に身体の向きを変えて次の踊り場へ向けて跳ぶ。]
分かった。
…一人で無理はしないようにね。
[気遣うような言葉を紡ぎながらも、その声は何処か愉しそうな。
続く言葉に頷いて、]
行ってらっしゃい。気をつけて。
[少女の姿はやがて見えなくなり。
ゆっくり、後を追うように寮へと歩む。]
ありますよ。
せんぱいももってるの。
あまくておいしい、ちからのみなもと。
[踏み込んだ足でそのまま地面を蹴りつける。
横に飛んだサヤカをしっかりと追いかけて]
いっしょになればそとにでれるようにもなるのに。
ちからがないとそとにもでれないの。
だから、せんぱいのそれ、ください?
[普段ならばありえない跳躍。
左手が狙うのは変わらずその心臓。
と見せかけてその腕を掴もうと]
[マコトがヒサタカに説明を続ける間、ただ黙ったまま。
視線は自らの掌へ注がれる。左手をぐ、と握って、開く。
何かを確かめる様に数回、それを繰り返して。
マコトの口から、『司』の言葉が紡がれた瞬間。
相変わらず黙ったまま、
しかし、ピタリと、動かしていた手が止まったのが
向けられた視界から見えただろうか。]
[『憑魔』に『司』。
願い。叶える。
他者を、喰らう。
狂気に、堕ちる。
そして何より、
“人から生じて、人に憑く”。
―――ああ。
ようやっと、
彼女らの言っていた事が、
少しだけ、理解出来た気がした]
―寮―
[外から食堂の灯がついているのが見えた。靴を靴箱に入れ、其方へ歩む。
瞳は元通り、感情の見えないものに戻っていた。
暫く歩いて見えて来たのは入口と、その前に佇む、]
イチ君?
[何をしているのだろうかと、少し近付いた。]
……人から生じたものだから、人の手で還せ、と。
そういう事なのかも知れないです、ね。
[どこか、苦笑めいた面持ちで言いつつ。
アズマの手の動きが止まった事に、気づいて。
そのまま、物問いたげな視線を向ける。
『わかって』いた? と。込められているのは、そんな疑問]
………あ。
[仔犬を抱き締めようとして、
緩く手で持っていたビニール袋が、
かさりと地に落ちる。]
スケさん?
[友人を、いつものあだなで呼ぶ。
あの日以来、会っていない人物だった。
フユの口から、その名は聞いていたけれど。
以前と、同じように見えて、
どこかが、違うような気がした]
[なおもサヤカに襲い掛かろうというヨウコに目を細め狙いをつけると弓を引き絞り、放……とうとし]
!?
[フユの声に僅かに標準はズレ、矢は桜の木に突き刺さる
声の聞こえたほうに目をやり、]
…………フユ先輩。何で止めるんです?
[冷たい目でフユを見やる]
[注がれる視線に気付いているのか、小さく溜息を零して。
止めていた掌を、ぐ、と握る。
と、ヒサタカから再び投げられる問いに、
手元へ落としていた視線を、ちらりとマコトへ、
そして、そのままゆるりとヒサタカへと向けて。]
ん。
…そういえば、久しぶりかな。
[実際に顔を合わせるのは、と呟いて。
ビニール袋を拾い上げようと屈みながら、]
……何してんの?んなとこで。
それに…犬?
[抱えられた仔犬を見て、首を傾げた。洋亮は未だその存在を知らない。]
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