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[広間に戻った。ソファに寝ていた筈のアーベルの姿はない。
首を傾げながらも、用意されていた食事を取る。食欲がないということはなかったが、それでも何時もより少ない量を食べ終え、暖炉の前へと移動した。]
なにがあったんだろ。
[多くの人が此処にいた。怪我をしているらしき姿もある。立てた両の膝に顔を埋めながら、昨日の記憶を辿ろうとする。
ぼんやりとした胡桃色は朱色を*映した。*]
[雪が積もった森の中を、静かに...は歩いていた]
……恥ずかしい……。まさか寝ぼけて飛び出すなんて……。
いくら疲れていたとはいえ……。はぁ〜……。
[盛大なため息が口をつく。
しかし心は微塵も晴れない。少なくとも狼という人を食い殺す存在が近くにいる事が証明できたせいで、彼が考えていた仮設が妙に現実味を帯びてしまったからだ]
……まさか能力を持つ人たちと、人狼をぶつけてある種共食いを模索していたなんて、ありえないよね……。
[そう思いたいだけではあるが、未だメンバーの中に人狼がいるとは考えにくかった]
とりあえず、昨晩亡くなった人達の供養を少しでもした方がいいかな。
[死体は放置しておくと獣の食料になり、1ヶ月もたてば骨もなくなるだろう。せめてその前に簡易式でいいから埋葬をと...は思い立ち、足は自然と昨晩の襲撃現場へと向かっていた]
(あれは?)
[と、ギュンター達の死体の傍に、ブリジットがいるのに気づいた。
彼女の手元は傷の手当を進めている]
……邪魔しちゃ悪いよね。
[それがただの自己満足であることは、...は実家で叩き込まれた。
しかし彼的には彼女の行動がとても純真で羨ましいものに映り、そのまま足を集会所へと向ける。
昨晩感じた血臭はどこにもなく、雪の清純な匂いが流れてくる。
その時、集会所の方向で何かが動いた。
瞬間、昨晩の記憶と恐怖がよみがえり、体が凍りつく。
だが、その何かがアーベルだと気づくと、ほっと無意識に息がこぼれた。
話しかけようか? そう思い口を開きかけて、アーベルの慟哭を耳にした]
今日の私はどこにいってもお邪魔虫かな。
[そうごちて、...はもうしばらく雪の中を*散歩することに決めた*]
[中に入った直後、目覚めたらしいアーベルがフラりとした足取りで、外へ向かおうとするのに出くわした]
こら、アーくん
[声は届かず、伸ばした手をすり抜けて、彼の足は止まらない。
後を追って、鴉が飛んでいく]
……ザフィーア、お願い。
[短い言葉にこめられた意味を理解したのだろう、眼差しを一瞬こちらに向け、黒の鳥は白の世界へと舞った]
[耳に届いた叫びには窓の外に視線を投げたけれど、僕は動かなかった。その時、自分がどんな表情をしていたかはわからない]
[風呂から戻って来たリューディアに食事を用意して、食べ終わったあとには片付けをして、けれど、台所から動かなかった。
ここから出られず、助けが望めないなら、どうするか。
そればかりを、*考えていた*]
…ぅー……。
[夢見ぬ眠りに沈んでいた意識は、染みて疼く傷の痛みに引き上げられて。
起きあがろうにも力は入らず、情けなく横たわったまま。]
[広間からはずしていた時、大きな音がした]
[何かと思って外を見る]
[誰かがかけていった]
[廊下から外を眺める]
[大きな声が聞こえた]
なるほど。
殺せ、ということですね。
[薄く開けた窓に、表情は写らなかった]
―昨夜―
[マテウス達が戻って来た後……傷ついた者、疲れ果てた者、正気を失いかけている者……男は、それでもここに死にかけている者だけはいないのだと、そう見極めて、狼達とそれ以外の脅威からこの場を一時でも隔絶するために、固く木の扉を閉ざした]
満月に狼の群れか…出来過ぎな冗談(ジョーク)だぜ。
[男の呟きは誰にも聞こえなかっただろう。そのまま、手当はブリジット達に任せて広間を抜け出し二階へと昇った。一つ一つ、二階の全ての部屋の窓の戸締まりを確認してから自室へと戻る]
[スクラップブックと共に、ベッドの上に投げ出されている古びたナップザック。男はその口を開け、一番底に忍ばせてあった細長い油紙の包みを取り出す]
こんなものあ、使いたくねえんだがね。
[零したのは愚痴か言い訳か、男自身にも判らない。包みを開いて姿を見せたダガーを腰の後ろに隠すように差し込んだ]
[一度階下に戻り、外で起こった出来事の詳細をマテウスやエーリッヒから聞く。やがて意識を失った者や、眠りについた者が増え、張りつめた静寂が夜を満たす頃、男は再び一人二階へと引き上げていった]
[男が果たして眠りにつくことが出来たかどうかは窓から覗く月だけが知る事だ]
[夜が明けてしばらくすると、閉ざされた扉から外に出て行った人影が幾つか。男は黙って二階の窓からそれを見送った。これまで昼間に殺人が行われた例は無い。そう知っていたからだ。]
ほんと、えげつねえ。
[ユリアンと自衛団との会話を耳にして舌打ちした瞬間だけが、僅かに感情の波を示していたろうか]
[無音の世界へ。深い闇の奥へ。
きつく閉じられていたはずの扉は今や開け放たれていた。
一度に戻ってきた記憶は、無秩序な断片を舞わせて。
記憶の欠片に囚われ、外を知らずに昏々と眠る]
……嫌だなあ。
[鈍い光から目を背けて、コンロの上に小鍋を乗せた。
ミルクを入れて火を点け、温まったところに蜂蜜を溶かしこむ。
皆に振る舞うなら紅茶だが、幼い頃から親しんでいる、この飲み物のほうが好みだった。
マグカップに注ぐと、子供心を呼び起こさせるような、淡く懐かしい香りが広がった]
―過去―
[町で白くなるほど雪が積もることはそう多くも無く。
だから久しぶりのお出かけとなったその日は嬉しくて]
…ねえさま、かあさま、どこぉ?
[街路樹の雪を落としている子供たちに見とれて、数歩そっちに近付いただけのはずだった。なのに振り返った時には母達の姿は無く]
…おうち、どこ…?
[フラフラと捜し歩いたが、見覚えがあるものは広場の噴水位で。
怖くて寂しくて、グスンと洟をすすった]
よっ、と。
[暖炉前で膝を抱えるリューディアの傍らへ行き、カップを一つ、差し出した]
飲む?
飲まないにしても、持ってるとあったかいし。
とりあえず、置いとくから。零さないようにね。
[声をかけてカップを置き、立ち上がる]
……養父さん、大丈夫かな……。
[唐突な狼の活性化。
森の方にも、影響は出ているだろうか。
出ているとしたら、それを調べて無茶をしていなければいいのだけれど]
……取りあえず、いつかみたいに枝直しに行って落ちるとかは勘弁な……。
[はあ、と。ため息と共に呟く]
中、戻るか……。
[白の向こうの黒を見やりつつ、呟く。
それがいい、と言わんばかりに、カラスが一つ、羽ばたいた]
[典型的な迷子だった。
けれど年の瀬の時期、人々は忙しくかまう余裕も少なく。
心細くて本格的に泣き出しそうになった時。
どうしたの、という声がかかった]
かあさま、いないの。
おうち、わからないの。
[見上げれば幾つか年上らしい少年。
白い手袋をした手でぐしぐしと目を擦り答える。
少年は困ったような顔をして、ふと雪を掴んで何かを形作った]
…うさぎ?
[どこか歪な雪像。
それでも思いかけぬ小さな作品に涙が止まる]
―二階・自室―
[昨夜は説明を求めるものに話をし、叩きつけたときに飛んできた牙や爪の破片をとって治療して終えようとしたところ、最後に無茶な動きをした代償により痛んだ体をブリジットに見つかり、腕や肩や足に湿布を張ることになった。
礼を述べれば、ふるふると頭を振り、顔色が翳ったのをみて、何を思ったのか察し、これ以上は何も言わずに、剣の手入れのために自室に戻り、手入れを終えた後、疲れを癒すように寝たのであったが]
…っ?
[思わず木箱に手を伸ばして起き上がる。トンっ。という音がしたからだが、だからといって剣呑な気配は感じず、そっと窓を開けた
すると突き立っている矢と手紙。矢を壁から抜き取り手紙を開く。書かれているのは昨日と同じ形態の文字]
[広間には寄らず、上へ上がろうかと思ったものの]
あ……本、忘れてた。
[昨日、下へと降りた直接の理由は、多分まだ置き去りのままで]
無くしたら、怒られるからな。
[小さく呟いて、結局広間へと向かう。
中に入ると、肩のカラスが挨拶するように一つ、羽ばたいた。
もしかしたら、「ちゃんと連れてきたよー」という意思表示なのかもしれないが]
ジャベリンにしては唐突だな…
[いろいろなことが書かれていた。
だがその中で特に目を見たのは、やはり昨日のこと。だいたい察していたらしいが、それによる村の方針のほうであった]
人狼なぁ…本気だってのか?
[ただ昨日の状況は確かに異常ではある
そしてまた昨日と同じように、紙とペンに同じ形態の文字を書いて、矢に括り付けると、荷物からボウガンを取り出し窓から森へ向けて放った]
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