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─1階・広間─
[ゲルダの短い礼の言葉には、鸚鵡がばさりと羽ばたいた。
気にしないで、とでもいいたげな様子、その意図が伝わるかは定かではないが]
ああ、ここじゃ色々と問題あるだろ。
準備までは、手ぇ貸すから、後、頼むよ。
[そんな鸚鵡の様子に、ちら、と視線を向けた後、蒼の瞳はやって来たクロエへと向けられる]
─広間─
[準備が出来るまでの間、カルメンは何かを見るようにキョロキョロと辺りを見回す。
時折首を傾げたりもした]
…は、す。
あーかーいー?
[見えるはずの無い瞳で何かを視ているのか、そんな言葉を口にしたり]
……っ。
[ダーヴィッドの言葉にひゅっと息が漏れた。
この具合の悪い自分でも分かるぐらいの血の匂いに、ある程度までの推察はしていたが、それ以上の出来事だった]
な……。
[何事か言おうと口を開きかけたが失敗して、声にならない声が漏れる。
胸がざわざわする。吐き気がまた巻き起こってきた]
ん……。
[一度、口を真一文字に引き締め、改めて、言葉を紡いだ]
誰が……?何の、為に……?
団長さん、ですか?
[ロミルダは眉を寄せて、大丈夫なのかと問いたげに口を開きかけた。
それに被せるように、続きが聞こえた]
…息?
[一度、二度、またたいた後。
やがて理解したのか、くっと眉が下がった]
[まだ綺麗な布を湯につけ、固く絞る。直接遺体には触れていなかったが、掃除の際に付着した赤が、透明な湯と混ざった]
……はぁ。
[気を落ち着けるように息を吐いて、エーリッヒの頬に、そっと布を押し当てた]
自衛団長さんに、先生。
……どうして。
[怪我はないらしいとは聞いても、不安は残る。或いは不安に思うのは――別の事]
誰がっつーか…あれは、なんか。
[広間の方角を見る眼差しは、遠い]
――…まるで、獣に喰われたような…。
[そこまで言って、頭をがしがしと掻く]
本当に、人狼でも居るんでなきゃ、そんなん有り得ないんだよな、…ったく。
ただでさえ、見張りが居るから内部の人間が疑われるってのに…。
ん?いや…
少しは俺は耐性もある…ほどでもないかもしれんが鈍いんでな
それに…間違ってもカーラの着替えの手伝いをするわけにはいかんしな
[そう礼をいうクロエに返し、徐々に生々しい赤が消えたのを確認しつつ、血に濡れた布を水につける]
─集会所・広間─
あ…ありがと、うん。助かる。
[黙々と掃除をするゼルを手伝っているところにユリアンから声をかけられ。微温湯を用意してもらったことに礼をいい。
ゼルから気遣われれば無理に微笑んで]
あたしは、大丈夫。ありがと。
…ぁ・・・ダーヴィッドさんか、良かった…。
[ロミとブリジットの姿を見れば、来ちゃいけない、と言い掛けるが、ダーヴィッドが配慮してくれたのを見て安堵の息をつき。]
……いや、どう考えても、そっちの方が重労働だし。
[ゼルギウスとローザの礼に、軽く肩をすくめる。
ちなみに、ダーヴィッドがいて助かった、という部分には、口には出さぬものの、しっかり同意していたりする]
……て。
蓮?
蓮が染まるのは、夜んなってからだろ?
[それから、カルメンの声に不思議そうに瞬いた]
とりあえず、僕らが使ってる部屋で着替えてしまうのがいいかな。
もう少し頼むね。
[こちらを見るユリアンに再び頷く]
心強いですね。
じゃあ僕はその分カルの着替えをしてきます。
[ゼルギウスに言って]
あかい?
集会所近くの蓮は白くなかったっけ。
[カルメンの言葉に首を傾げる。
細工のために観察していたはずのユリアンに問いかけた]
……あ、着替え。
[ゼルギウスの言に、視線を落とす。
エーリッヒが身に纏う衣服は色濃く染まっていて]
フォーサイスさん……その。
掃除の後で構いませんから、手伝って頂けますか?
けも……の。
[ありえない。
これだけ厳重に見張られているということは、厳重に警備されているということでもある。
どこからか迷った獣が、この中に現れ、自警団長の命を奪ったなどと。
つまりは───]
───人……狼。
[遥か昔聞いた御伽噺。
獣が人に化け、人を喰らうのだという化け物。それが人狼。
獣の痕跡も無いのに、獣に襲われたのだとしたら、そう考えるのが当然なのだろう。
だが、ブリジットに残る最後に理性がそれを否定した]
そんなの……ありえない。
人狼だなんて……。
[否定の言葉を口にしたところで、景色がぐにゃりと歪む]
…人狼。
[ロミルダは口を引き結んで、うつむいて、しばらく黙り込む。
膝の上の両手を、きゅっと握った]
…だったら、
見つけたら、いいですか?
[洩れた声は小さく、けれど部屋の中の2人に届くには十分なくらいの音量]
蓮…?
[盲人のカルメンが蓮が赤いというのは?と内心で首を傾げつつ。無理に微笑んでいるがわかるローザに]
なら…はやいとこすますか。しっかしまあ厄介なことになっちまったなぁ
[死したものを哀しむというよりも、これから先のことを考えるように呟く]
ん、ああ、りょーかい、と。
[クロエの言葉に頷いて。
蓮の事を問われると、がじ、と頭を掻く]
ああ、基本は白。
確かに、花が開いてから、赤く変わるけどさ。
にしても、色が変わるのは大体遅くなってから、ゆっくりだから。
まだ、白のはずなんだけど。
あーかーいー、はすー。
そこー。
[指差すのは先程までギュンターが居た場所。
勿論花らしきものは無く、今はローザ達が掃除をしている場所である]
じーちゃ、の、そば。
[掃除をする手を止めて、ゲルダの方を向き]
ゲルダさん、もし気分悪くなったら休んでね?
貴女まで倒れちゃったらきっとエーリッヒさんが気に病んじゃうよ。
って…蓮?
まだ咲く時間じゃないんじゃないかな。
[カーラの問いに、素で答え。カーラの目が見えないことは忘れていた。]
俺が焦っても、どうしようもないんだよねぇ。
[酷く柔らかに呟いて。
そうしてようやく、二人に視線を向けた。
一人は否定の言葉を。
もう一人は、]
…え?
[驚きに、眼を瞬かせた]
[人が死んで、細工所ではないのだが。
現実逃避か、意識はそちらに刹那、それていたものの]
……え?
そこ……って。
[示されるのは、先ほど紅が満ちていた辺り]
……じい様の……側、に?
いや……それより、なんで、お前。
そんなの、見えるん……だよ?
そんな重労働でもないぞ…いや、そりゃ、この中じゃ年いってるほうだろうけど
[なんて肩を竦めるユリアンには冗談めかして返し]
ぁあ。やれる人間がやるのが一番ってな。
まあそれよか…長い付き合いみたいだし、上手く伝えるか。どちらかくれ。
[とクロエに。カルメンに上手くこの状況を伝えるか否かの選択も含めて
自分がやるならあっさりと告げてしまうだろうし]
あかい、って。
……ビュルスさん、見えるんですか?
[とは言え、彼女の指差した方向を見ても、何も見えない。それどころか、団長の亡骸も、もはやない。
向ける眼差しは、怪訝なものになった]
うん…
なんで、こんなことになっちゃったんだろ…。
…まさか、本当に…じゃない、よね?
[ユリアンの返答には、そんなことないよ?と答え。
ゼルの呟きには頷きを返し、眉をひそめ目を伏せ。
誰にも聞こえないくらい小さな声で呟いた。]
ぅ?
じーちゃ、いる、そこ。
おひげ、もじゃもじゃー。
[ギュンターの姿が視えていることが嬉しいのか、表情と声は楽しげなものに。
何故と問われてもカルメン自身分からず、首を傾げるばかり]
わかんない。
でも、じーちゃ、みえるー。
となり、あかい、はす、あるー。
[姿が視える喜びが勝っているのか、視える不思議さは気にならないらしい]
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