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[…椅子を勧めると、自分も椅子に腰掛け…近くにあった緑を基調としたランプに火を灯す]
…あの子が…ね。
なるほど…だから…あんなに。
[初めて出会った時、あんなに寒そうな格好で。
あんなに、人見知りをしていた仕草で。
物珍しそうに目を向けていたのだろうか。
軽く視線を落とし…]
…多分…舞姫、妖精自身が踊っちゃったから、王様が…
怒った、って。思ったんじゃない?
[外とは違い、声は喧騒には飲み込まれず、沈黙を破る。
その落差は耳に声を通らせた]
ミハエル、さん…が、か…
あの子、そう言う所、ちゃんと気をつけてそうだからね…
…でも…今回のは。あの子の、決めたことだし…
色々と、重なりすぎた部分もあるし。
『そう、意地。
それを創り上げる事が意地。
『人として』残したいもの。
そう言ってた。
ぼくら、人と近しく交われても、人になる事は容易くない。
そして、フェーンは。
人になることを選べない。
だから、人として残したいんだってー。
まあ、考えすぎの大バカなんだけどねー』
[最後に、さらりと真理を言ってのけているような]
[やがて飲み終えると、子供は頬笑んで、
そのコップを、そっと店主に返す。
身体は温かい。
声はないけれど、
大切なひともいる。
なつかしいような気もして。]
色々、詰めないとなぁ。
[ぽつり、星を眺めて、呟いた。]
[誰がいても
誰がいなくても
そんなの子供には関係のないこと。
結局のところ、
さらわれた人をみても、
自分がかわりに出ようとしない妖精が、
子供にとっては一番悪いから、
後は気にしないことにしただけ。
誰が妖精だとかも、
もう、気にすることはなく。]
……そっか。
[それ以上、返す言葉も見つからずに小さく溜息を吐いた。
……その返答も、予想していた物だったのだけれど。
ずっと右手に握っていたそれを―――ぐ、ともう一度強く握り締める]
―――そっか、うん。そーか。
判った。納得した。
……――――っユリアンにぃのバカっっ!!
[勢い良く振りかぶって。
右手を離れたペンダントは、相手の額へと目掛けて]
…大馬鹿だな。
[こくりと頷いた]
全く。大馬鹿者だ。
[次いだ言葉は、ユリアンに向けられたものではなかったようで。
遥か遠くを見るように視線が僅かに逸らされる]
[店内が緑の光りに包まれるのをぼんやり眺めながら
勧められる椅子に、礼を言って腰掛ける。]
……色々重なり過ぎた部分か……
なあ、それだけで納得しちゃって良いのかよ…
ユーディットが舞姫を踊ったのは知らなかったが
もし、イレーナの考え通りなら…あの娘さんだって……
[続く言葉は飲み込んで。]
……ユリアンと話しはしたが、
親子喧嘩でここまで巻き込み、巻き込まれって…
……んなっ!?
[突然投げつけられたそれに一瞬戸惑うものの、反射的に手で受け止める。
伝わる感触は、知っているようないないようなだが、それは置いておいて]
……ああ。
バカだよな、どうしようもなく……。
[かすれた声で、呟いて]
[短くなった髪はさっぱりしている。
子供は、大人たちに挨拶をして、部屋に入り込む。
子らはきっとまだ帰らない。
帰ってくる前に……]
[少年が遠くを見た事など、特に気に留めた様子もなく。
ネズミが見つめるのは、銀の燐光をまとう花冠]
『ほんとに、バカで困るんだよねぇ。
……どうすれば、いいのか。
答えは持ってるのに。
ためらってる。
怖がってる。
他に方法がないの、知ってても。
なんで言えないんだろうね、「力を貸して」って、一言が』
[独り言めいた言葉は、僅か、苦笑の響きを帯びていたか]
[礼を言って、腰掛ける]
[何時もと変わらない賑やかさ。きっと、消えてしまった人のことなど知らないから]
[それとも、騙されているのは此方のほうか]
……如何して、こんな事になったんでしょうね。
[呟いて]
[繕われる違和は、もっと大きな違和に誤魔化された]
…あの子が決めたことだもの。
あたし達が…どうこう言える問題じゃないわ。
[アーベルの言葉にはポツリ、と…]
…あの子がミハエルさんを見て…嬉しそうにしてた。
それでも、彼女は決めたのよ?
多分…自分にも、非はあるのではないか、って。
そうじゃなかったら…彼女が、志願する…理由が、無いわ。
[じ、とアーベルの方を見つめ…]
この、舞姫の事がなければ…あの子は、ミハエルさんの元で働くこともなかった…
居なくなった今…
あたしは…それが、全て…無駄だとは、思わない。
[瞼を閉じると、瞼を開き、ユリアンを見つめ]
…ユリアンは…なんて、言ってたの…?
[石を受け止められれば、ギッと睨む様に見上げて]
……っ、バカだって判っててやってるんなら、もー本当バカっ!
ミリィの事連れてっちゃう様な妖精の言うことなんて
一生信じない事に決めたんだからっ!
[肩で息をしながらも一気に捲くし立てて。
ミハエルが奥から出てきたのを見れば、一瞬きょとんとしつつ。
来客が彼だと判れば、あぁ、と頭の端で何処か冷静に納得して]
……あのな…あの子が決めたこととか綺麗事で済ますな。
あの子がそう決めようと思った要員が何かを考えろよ…
そう思ってしまった原因。
あの子に非があるかないかは…知り合いじゃないからわからない
けど、もっとその原因に関わっていたら変えられたんじゃないのか?
嬉しそうにしてたあの子がそんな選択をしないですんだかもしれない、
そうじゃないかもしれない…
ミハエルだってあんな表情しないで済んだかもしれない、すまないかもしれない。
彼女の選択が無駄だとは思わない。
むしろ、彼女の犠牲は他の人の否犠牲だ。
けど、毎回誰かが替わりに犠牲になるのか?
その原因がなにかを知っているのにアンタはまだ傍観を決め込むって言うのか?
[イレーナの目を射るような目で見る]
[問いに逸らした瞳は天を見て。
広がる夜を、彼らを飲み込んだ夜を見る。
結界に閉ざされた空間は、既に飲み込まれているのと同義だろうか]
…さぁ…どうしてだろうな。
何故この瞬間だったのか、此処でなければならなかったのか。
私に解るのは……私が原因の一端であることくらいだよ。
[空を仰いだままに言葉を落とす。
周囲には届かぬよう。彼女にだけ届くよう]
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