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[バサリ、][羽ばたきの音]
や、アーくん。
飲む?
[振り返って歩み寄り、むしろ飲め、といわんばかりに押しつけた]
ザフィーアはご苦労様。何がいいんだっけ?
--外、死体の前--
[暫くずっと、雪の中で死体と供に佇んで。][動くだけの気力が無かったともいうが。]
…帰らなきゃ。
[咳は出なかったが。][少しだけ出ていた風邪の兆候が、ぶり返さないとも限らず。]
[のろのろと大袋を背負い。][ゆっくりと歩き、集会場へと戻ってゆく。]
--→集会場--
[大人から見れば他愛ないそれらも幼い少女には宝物のようで]
わたしも、つくる!
[少年と二人、あれやこれやと雪を固めてゆく。
泣いていたはずの顔はいまや笑っていて]
「レーネ!」
[届いてきた声にパッと顔を上げると、そこにはコートを纏い淡い青の手袋をした青年の姿が]
にいさま!
[少年は良かったねと笑って。
じゃあね、と兄がこちらに来る前に走って行ってしまった。
彼も本当は忙しかったのだろうか]
ありがとー!
[後姿に叫ぶ。辿り着いた兄や母には勿論しっかりと叱られたのだが。その時の楽しさはしっかりと少女の中に刻まれた]
─広間─
て、え。
[押し付けられたカップに、思わずきょとり]
なに、コレ……ミルク?
[ずっと外にいて冷えた手には、カップ越しの温もりも少し熱いように思え、取り落としそうになるのを慌てて支える]
というか、ザフィーアがご苦労様って、何が?
[そして窓を閉めて、体を軽く動かす
昨日は全身が満遍なく痛かったが、それはだいたいいつものこと。一夜寝たらだいたい治まった。とはいえ、特に痛んでいた部分はまだ治まってはいないが、痛いだけならば特に支障もない]
さて…自衛団はいなくなっちまったけど、状況は変わらず、どうするかね
…単なる荒事なら慣れてんだがなぁ
[そう言葉を漏らして、嘆息を一つ。木箱を背負いなおすと広間へ行くことにした]
うん、ホットはちみつミルク。
あったまるよ。
[にへら、と笑みを作った。
――浮かべられていただろうか]
どうせ、御飯も食べてないんでしょ。
飲まないし食べないとか言ったら、
鼻からにんじんジュース飲ませるよ。
[空いた左手の人差し指を突きつける]
さぁて、なんだろうねえ。
ザフィーアだって、寒いしお腹空いてるよねえ?
[そこまで言ったところで、いつの間に目覚めたのか、ぐったりとしているエーリッヒの存在に気づいた]
……と。
パンとスープがありますけれど、持ってきますか?
―広間―
よぅ…あまりいい目覚めじゃねえだろうが、あれから何か変わったことはあったか?
[広間に居る面々にそう声をかけ、暖炉の傍にいき、薪をくべる、と同時に紙をその中に入れて木箱を近くに置き、席に着く]
--集会場・一階広間--
[外にずっといて、体中が冷えてしまったからか。][中に入っただけで温かな空気に包まれ。]
[広間にいた人達にペコと頭を下げる。]
おはようございます…。
[何時もより小さめな声で言って、中へと。]
……ほんと、甘いの好きだなお前。
[一見、いつもと変わらない言葉と笑み。
でもどこか、微かに違和感めいたものを感じたのは気のせいか、それとも。
ただ、それを指摘するのもいい気はしないから、こちらもいつも通りの言葉を返し]
……ていうか、それ、なんて拷問。
[ニンジンジュースの話には、わりと真顔で突っ込んだ。
肩のカラスは、呼びかけを肯定するようにばさり、とまた羽ばたいて]
……ん、そだな……。
つき合わせて、寒い思いさせちまったし……パン、あるなら、ついでにザフィーアにも頼む。
―回想―
[目を閉じたままでいると、腕の中の重みがいくらか増したように感じて。
見ればイレーネが緩やかに眠りに落ちたところ]
無理もないわ…今日だけでいろいろありましたもの……。
[そう言って、慰めるように背を撫でて]
[その寝顔に誘われるように、ゆらりと体が傾ぐ]
あ、おはようございます。
変わったこと…… ですか。
[マテウスの問いに真っ先に思い浮かぶのは、外での自衛団とのやりとり。
けれど、ブリジットも帰ってきたことで、皆の前で口にすべきか、悩んだ。言わないでいるわけにも、いかないことではあるが]
や、……って、ブリジットも飲む?
[手元に一つ残ったマグカップを掲げてみせた]
甘いけれど。
[そのまどろみを破るような強さで扉が開かれ。
静かに、と抗議の声を上げようとするも、皆の姿に言葉を失くし]
[普段、それと縁のない彼女にもわかる。
とても嫌な、血のにおい]
……何が……
[誰も答えない。重く固い表情のまま]
[治療の合間、ぽつぽつと言の端に上るそれで
外で起きた事の顛末を知り、胸元のロザリオを握り締め十字を切る]
[そのまま、部屋に戻るつもりにもなれず。
一人になりたくなかったのかもしれないが]
[イレーネを支えたまま、壁に凭れ。
眠れぬまま時を過ごして]
[気付けば朝の日射し。
外で誰かが叫ぶ声はよく聞き取れない]
[だけど、よくない事だということだけは、その声の荒さで知ることができた]
……本当に、被疑者になってしまったのですね。
[広間に集まる人々を見渡して]
[誰もそうは見えないのに、と小さく溜息をついた]
―→現在・広間―
…あぁ、もらう。
[手をついてなんとか身を起こし、ソファーの背に身体を深く預ける。]
…さっさと治さなきゃなぁ。
[胸元の手帳を取り出そうとして…]
…げ。
[からっぽのポケットに、思わず蒼白。]
あ、どーも……。
[広間に入ってきたマテウスに、一礼して]
昨夜……ありがと、ございます。
[ぽつり、小さな声で呟く。
礼は、立ち上がる契機をくれた事へのもの。
続くようにやって来たブリジットには]
ブリス……?
どっか、行ってたのか?
[案ずるような口調で、問いを投げ]
[ユリアンの手に一つ残っていたそれをみて、自分の分じゃ?と少し躊躇ったが。]
[体が冷え切っていたのもあって、折角だから遠慮せず、こくと頷き受け取る。]
甘いの好きだから。
[ほんの僅かに笑みを浮かべて。][中にあった白い液体に口をつけた。][甘く温かな味が、内側から染みて。][強張っていたものが少し解れた。]
[聞こえた声に、そういや、こっちにもちゃんと礼言わないと、と思いつつ、エーリッヒを見やり]
……どしたの?
[蒼白になる様子に、思わずきょとん、と]
何を言う。甘いものは人類の宝なのだよ。
理屈は忘れたけれど、体の疲れにも心の疲れにもいいんだから。
そして、拷問が嫌ならちゃんと食べなさい。
[大きく頷きながら、したり顔で語る]
了解、あっためてくるー。
[両手も空いたことだからと、軽く手を振り、]
そう、よかった。
[ブリジットの様子に安堵を含んだ声で答え、再びキッチンに入る]
[先に中にいたアベルの頬を見て、薬が少し効いたのか腫れも殆ど残っておらず。][それは少しほっとして。]
[どこかへと問われ、一拍、間が空いたが。]
うん。…直してきた。
[誰を、何を、とは、言わない。]
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