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[でも。
彼が死して、安堵を得たのなら。
笑うことが出来たのなら。
…決して、自分を正当化できる訳ではないが。
それで、良かった。のだろうか…]
…………。
ありがとう、ございました、エルザ…
[まだ悲しく残骸を見詰め]
[何も言わずにエルザやシスター、イレーネが話すのを聞いていた]
[けれど「死」という言葉には反応して]
[剣に軽く手を掛けてエルザの近くへと寄った]
[彼女を守れる位置に]
[カチャリという微かな音が鳴った]
[ナターリエの微笑みには、何も答えられず無表情なまま。
まだ...は、アーベルのあたまとしゃがんで対峙している姿勢。
その姿勢のまま、オトフリートの方を見上げた]
・・・・・・悲しそう。
[呟く。あぁまた、嫌な気持ち]
[ナターリエをじっと見つめて、反感を隠しきれずに]
平等、ね。あなたの言う平等では、結局、強い者しか生き残れないわ。
[イレーネを振り返り]
ハンスが閉じこもってるからって、疑ってはいけないわ。涸れに危害を加えようと言うなら、やめて。エーリッヒだって…。
[エルザのそばによったミハエルに、微笑を向ける。
その彼女に向かって感謝の言葉を述べているオトフリート。
ああ、彼はアーベルと親しかった。
心配そうな眼差しを向ける。]
[エルザに向かって首を左右に振る]
あたしハンスは、あんまり疑ってない。
だってあの人、すごく、怯えてたもの・・・。
クレメンスにも、そう、言ったわ。
[エーリッヒの名前が出て、眉を顰め。エルザは、あの人も「視た」のだろうか]
[ああ、と唇を噛む。自分が『視た』ものを逆に言えば、きっとミハエルの心は楽になる。
けれど、いいのか。
エーリッヒがただ怯えていただけだということを隠したままで、あたしはいいのか]
ハンスを疑っては、ダメ…。だって…
[声が、震える。あたしに、言えるのか?]
[...はシスターに微笑を返す。
けれどその笑みには温度が無い]
自ら命を絶ってはいけないから。
神様の代わりにその安息を齎そうと言うのですか?
[静かに静かに問いかける。
真っ直ぐにシスターを見詰め返して]
[部屋のドアのほうからも人の気配がしたからだろうか?
こちらをちらりと見、また引っ込んだ怯えた男の目。]
…こわい、の?
[見上げて、少女は微笑む。]
だいじょうぶだよ。
神はすべてのものに、平等に試練を与え、平等に安息を与えているのです。
あなたが何を考えているのかわたくしにはわかりません。
神を信じないのはあなたのご自由ですが、わたくしの神をあなたが貶めることをわたくしには許せません。
[それはその宗教を信じるものとして。]
個々によって試練の内容は違います。
あなたがそのような枠にとらわれている限り、あなたに安息は訪れますまい。
[エルザに躊躇わず、そう言った。
自らの信じるものを否定し、その価値観を押し付けようとする彼女に、...は憤りを隠せなかった。]
[ひらりとスカートの裾を翻し、建物の中へと入ると、
ぱたぱたと階段を駆け上がる。
彼の部屋のバリケードに出来た隙間は、小さな少女がくぐるには十分で。
するり、簡単に中へと入る。]
ミハエルさん。
あなたは賢いと思いましたのに、どうして…
わたくしはそのようなことを一言も申しておりませんよ。
[困ったように微笑んで。]
人の命を無為に奪う所業は、自らの命を断つものとおなじ罪。
生きるために既に罪を重ねているわたくしたちに、何ゆえ人が、ただ殺せましょうか。
安息なんて、欲しく、ない。
クレメンスを止めなくちゃ。ベアトリーチェを止めなくちゃ。
[繰り返しては、いけない。失われてしまった、エーリッヒの心臓の音]
やめて。ハンスは違う。きっと違う。
だって…エーリッヒは、人間だったわ!
ただ、怯えて、元の生活に帰りたいってそれだけを願っていたのよ!
[独り言のようにそう、呟くと。
彼はゆるく首を振った。
どういう過程であれアーベルが安堵を得たのなら、
私がそれで苦しんでいてはいけない、と。
そしてこちらを見る二人の目に気付けば、微笑んだ。]
私は、大丈夫です。
ご心配お掛けしたのなら、すみません。
大丈夫、エルザ。
私が貴女を守る。
たとえ、神の代理人からでも。
[...は再びシスターを見つめ]
ならば。
何故神父様はベアトリーチェと約束したのですか。
殺して、解放すると。
無為でなければ良いと、そういうこと?
[どこか無邪気に。
けれど何処までも冷ややかに]
[寒い]
[『時』が近づいている。また、死がこの箱庭を包み込む]
ダメよ。繰り返さないで。
[不安に駆られて振り向いた時、ハンスの部屋の窓が割られているのに気づく]
…だめ…。
[壊れた窓から差し込む月明かり。
その中に浮かび上がる、人形のような少女のシルエット。
手の中で鈍く光るは、重い鉄の刃。]
[男は情けない悲鳴をあげただろうか?
腰が抜けたように這いずって必死に逃げようとしただろうか?]
だいじょうぶだよ。
ちょっとがまんすれば、すぐにおわるから。
もう、いやなこと…ぜんぶ、なくなるよ。
[ひゅうと風を切って振るわれる手斧。
重みに振り回されるように、少女はくるり。]
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