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[単眼鏡を外していたのは幸いだった。実質的被害は真っ赤になった鼻だけで、顔面にぶつかったあと落ちた袋を黙々と拾いあげる]
リディ・・・・これはお前に預ける。
[赤い鼻のまま、手にしていた薬師の忘れ物の写本をリディに差し出した]
薬師殿の忘れ物だ、後で持っていって、ついでに謝って来い。
[ベアトリーチェの予想は恐らく正しい。内心にロマンスの芽が僅かにあったとしても、ここ一両日の騒ぎで、その芽は完全に潰えたろう]
[駆けるうちに、広場に近付いて来る人影ひとつ。
このままだとぶつかると気付き、慌ててブレーキをかけた。
昨日の出来事と違って壁にも激突しなかったのは、
足の速さの違いだろう。
主に、運動神経と年齢の差による]
わったった!
[とはいえ、つんのめって地面に座り込むはめになった]
[妙な視線を向けながら元気に返事をするリディを、ため息まじりに見やりながら、ふと首を傾げる]
・・・・リディ?お前・・・・
[言いかけた言葉は、途中で途切れた]
あ、あー、ミルドレッドさま?!
だいじょうぶ…って、いっちゃった?
[逃げるような後姿、跳ねるみつあみ]
どうして逃げるのだ…?
[彼女を慮れば、
リディらには何となく声もかけづらく。
むぅ、と、
しばし考え込んでから。
残っている人々に会釈をし、どこかへ向かう*]
[なんて言っている間に、凄い勢いで駆けて来る影一つ。
思わず一歩後退るしかできなかったが、幸いにもぶつかりはせず]
…大丈夫、ですか?
[だが座り込む様を見て、姿勢を低くして覗き込む]
あまり無茶をするなよ。
[途切れた言葉の代わりのように、少女の頭を一つ、ぽふと撫でて、改めて広場の中央に向かって歩き出す]
絵師殿、飯は食ったか?
[幼なじみの顔を見て、最初に口にしたのは、そんな問い]
あまり大丈夫じゃない。
[主に精神的に。
つい、本音が漏れた]
……いや。なんでもない。
平気だ。
うん。
[三つ編みが感情に呼応するように垂れ下がっていた。
実際には重力に引かれているだけなのだが]
―広場―
[やってきたベアトリーチェが服を掴むと
自分より背の低い彼女の手をきゅっと上から握った。
それからいくらか来た人たちと話をして。
色恋沙汰には首を傾げたままにこにこと笑う。
ミリィの姿には、やはり少し怯えた様子を見せるが、
ミリィ自身に怯えているわけではないので
暫くすれば、すぐに落ち着く。]
[昨日の様子も見ていれば、今の叫びなどの原因も何となく想像は付いた。
思わず洩れた本音に、同情的なものが緑の内に浮かんだかも知れない]
…えっと。
立てますか?
[ともあれ、立てないようならつかまれるようにと右手を差し出した]
うう、助かる。
[差し出された手を素直にとり、よろよろと立ち上がる。
はあ、と一息ついたところで、真っ先に意識が向くのは袋だ。
ばっと紐を引いて、中身を確かめる]
……無事か。
ううむ、私も修行が足らなんだ……、すまなかった。
エルザ、君がこんな話に興味を示すとは珍しいな。
[小さなベアトリーチェと手を繋いで、子供のような笑顔を浮かべているエルザに普段よりは穏やかな声で話しかける]
[力を込めて引き上げ。
相手が立ち上がるのを見届けてから、手を離した。
袋の中身を確認する様を何気なく見つつ]
いえ。
…相当、参ってますね。
[ミリィがこれ程に取り乱すのはそう見れることでもなく。
眉を下げ、やや苦笑い]
─広場・泉近辺─
……ああ、誰も、そんな事はしない、と思ってるよ、俺も。
[事情を聞いたベアトリーチェの問いに、安心させるよにこう言って。
次いで、やって来たミリィの言葉には]
何を、と言われてもなぁ。
[ただ、こう返すしかなく。
押し付けられた薬に、ほんの一瞬複雑な表情を覗かせたものの、素直に受け取っておいた。
というか、反論する気力自体、ないも同然で]
ああ、つがいの一本、は、俺の手元にある。
って、毛……?
[その意を問おうとするより先の騒ぎの始まり。
何やってんだこいつら、と思いつつ、呆気に取られてそれを見つめた]
う。いや。なんだ。
[苦笑を見せるミハエルに、
既に失われた威厳を取り戻そうと咳払い]
……絵師殿の筆が盗まれたとあっては仕方あるまい。
そのような狼藉を働くものがこの町にいようとはね。
[まだ朱の残る頬は、そればかりではないと物語る]
―(絵筆の噂が広まる少し前)海―
っしゃぁっ
[今日は好調だ。いつもだいたい四回に一度ぐらいの確率で父より先に魚を捕らえれるが、今日がその日だったらしい。得意げな笑みを持って父に見せれば父は微笑を刻む
そして捕らえた魚を繋いでまた、海に入る。
浅瀬は透明。徐々に蒼と闇が濃くなっていく中を闇を見渡すのに長けた左目で見渡しながら深く潜る。]
……そんな風に、考えなくてもいいんだよ?
[その時は、と何か言いかけるベアトリーチェの様子に、掠めたのは、苦笑。
早く帰ってくれば、という言葉には、ああ、と頷いて]
片割れがいないと、こいつも寂しいだろうし、ね……。
[内ポケットの中の漆黒の筆を撫でる。
その後の呟きには、やっぱり同意していた。
かも知れない]
[オトフリートの言葉に、
笑顔のままの顔を向けて、首を傾ける。]
だって、えふでって、行けるんでしょう?
[言いながら、腕を真っ直ぐ上に上げて
天井―正しくは、その上を、指差した。]
…あら、えふでのおはなしじゃないかしら?
まちがったかしら?
[さしてから、色々な会話が交錯していたこともあって
違ったらどうしよう、と、少しだけ眉を下げる。]
[どんどんとエスカレートしていく勘違いに、処置ねぇなあ、と傍観していたら、問いを投げられた。
気だるげに視線を上げれば、そこには幼馴染の姿があり]
……飯。
あ、忘れてた。
[絵筆の盗難に気を取られてそれどころではなく。
長の所で出された香草茶を飲んだきりだった]
[その後もいくつか父とともに漁を行って終え。岸に上がり、いつものように魚を紐で繋ぎ。海水通路を歩く。
違う区画から出てきたリディの後姿を声をかける間もなく見送って。泳いで獲るのは結構しんどいぶん元気だなぁ。と思ったりしつつ、家に戻って]
― 海水通路→家 ―
ただいま。今日は結構調子良かったぜ母さん。
[なんて渡しつつ、真水で塩を落としてタオルで拭いたり等などをする。]
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