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[唐突に頭痛が治まる。それで、分かってしまった。
一つ目の死は、もう通り抜けてしまったのか]
いいえ、大丈夫。
[ミハエルに応えて立ち上がる。バッグには潜ませたままの懐剣。そっと取り出し、エーリッヒにつけられた鞘の傷を撫でる]
[立ち上がったエルザに困ったような嬉しいような顔をして。
けれど何を言っても下がってはくれそうに無いなと思い]
わかった。
[ただそう言って、僅かに前に出る位置につく]
そうですね。
少しでもわかってもらおうと思ったのですけれど…
[神父様に、少し泣きそうな微笑を見せて。]
神父様が必要ですよ、あの子たちには。
みんな、慕っていたじゃないですか。
ああ、はい。ベアトリーチェさんを…
体調が悪い…というより怪我なさってるのでは…?
[困ったように。]
[机の下で目を覚ませば、もう月は皓々と。
ああ、日の光の下で、強く気持ちを持てると思ったのに。
そう思った自分が目を覚ました理由に気がつくのは、
数瞬の後のことだった。
月に照らされた。小さな体。
ひらりとふちどる、スカートのレース。]
ベアトリーチェ…。
[どうして。どうして。
彼女は縛られていたはずではなかったのか。
捕らえられたはずではなかったのか。
アーベルは、オトフリートは?
廊下から聞こえるのは、誰あろう聖職者の声で。
けれども決してそれは、
自分を助けようとするものではなくて。]
こんばんは、ベアトリーチェ。
それはなんだい?なんのつもりですか?
「らくにして、あげるだけだよ?」
なにからだい?
「はんちゃん、かわいそうだから」
[意味のわからない言動。
少女はやさしく、あなたのためだよと笑う。
わけがわからない。わけがわからない。
ああどうしてそれが、自分の母に重なるのか。
[心の問答とは全く逆に、時間は流れる。
少女の刃が、ゆっくりと振り上げられて、おろされた。
その月は、すこしずれるも確実に彼の肩を切り裂いて。]
[悲鳴を上げて、後じさる。
あれほど昨日つぶやいた、『犯人』という言葉が、
口から出ないのは何ゆえか。
それとも彼自身が、
本当は『犯人』などいないと、わかっているためか。
背中に当たるは、割れた窓。
2階とはいえ、豪奢な屋敷は、地上までずいぶんと遠い。
けれど。]
[足を踏み外すようにして飛び降りれば、
植え込みはやわらかく彼を受け止めて。
既に落ちていたガラスの破片が背中をずいぶんと
さしたけれど、かれは逃げる。
かれの視線をもう少し上げれば、]
ふわり。
窓から彼を追う少女の姿が見えただろう。]
そのようだ…。
[クレメンスはベアトリーチェをナターリエに託した。
クレメンスの外套と黒服に血の染みが出来ている。]
ベアトリーチェ、少しお眠り。
目覚めればまたおはようの時間だから。
[ベアトリーチェの髪の毛を撫でつけると、
クレメンスはミハエルとエルザの元へ歩いていった。]
こんばんは。
アーベルは……ここで?
[少し距離を置いて立ち止まり、尋ねる]
[息もたえだえ。血は流したままで、
ただ中庭をふらふらと走り回って。
気づけば背中は外壁のふちにおいつめられて。]
はんちゃん?
こわがらないでだいじょうぶ。
ぜったいもう、こんな思い、しないでいいから。
[少女のやさしい、やさしい声。
ああ同じようなことを言って、
彼の妹は人形の胴体をきりさいていたなあと、
ああ、それなら、今、彼女の人形は俺か。]
いやです。ベアトリーチェ、目をさましてください。
君は、だまされているだけで…
「うるさい」
[二人だけ。顔が曇る。]
…私は。
他の人より、
ほんの少し、
知識を求める時間が、
長かっただけの人間、です。
貴女と二人で、二人だけで、また一人になれば益々、
「あの」人狼に、
立ち向かうのは難しいでしょう。
[今までの被害者を思う。
完全に、弄ばれていた。
この中で一番の実力者であった、アーベルでさえ。]
それに、もしかしたら私は、
…人狼たちに、もう警戒されているかもしれません。
[ベアトリーチェとの戦いを思う。]
最後に。
今、人狼が1人だけでも分かっているならまだしも、
まだ特定できていないのであれば。
…私達は動く事が出来ません。
私が下手に嗅ぎまわれば、唯でさえ警戒されている可能性があるというのに、ますます怪しまれ狙われてしまう。
…これだけ悪条件が揃っている。
貴女はそれでも…私に?
[イレーネの、その視線を受け止め、強く見詰めて]
[それはまるで、くもの糸。
地獄に下りた、くもの糸。
壁に小さくあいた穴。
もう助からないものと思い始めていた。
こんな、年端も行かぬ少女に切りさかれて。
ああ、神様!
(信心をもたぬ自分がこんなところで感謝するのは、
なかなかな筋違いだとおもうけれど)]
[くもの糸を逃すまいと、穴をくぐる。くぐりかけた。
けれども、その瞬間目にしたものは。]
ギャ!!!!!!
[けれども彼の一瞬の安堵は。
追ってくるその少女と、
まったく同じ顔をした首に、打ち砕かれて。]
ふりかえれば、同じ顔。同じ顔。
少女の首。否、彼女には胴体があって…それから、手には武器を携えて……武器?ぶき?
武器ってなんだ?僕にはわからない。
武器ってなんだ?
これは…ベアトリーチェ、
君は、だって、『犯人』の、しくんだことで…
[彼の言葉を待つことなく、
きらきらと、刃がなんども振り下ろされて]
[困ったようにベアトリーチェをうけとって]
ええ、ゆっくりおやすみなさいな。
傷は癒しましょう
[少女の姿にそう囁き、
fatherの姿を見送った。]
[傍らのエルザをチラリと見る。相当緊張している]
そうです。エルザが彼を視ました。
先程死体は消えてしまいましたが、僕も銀糸を見ましたし。
[神父を見つめてそう告げた]
[オトフリートの曇った顔を見つめる]
立ち、向かわなくても、そのうちきっと、殺されるわ。
クレメンスも、ナターリエも、ベアトリーチェも、変。かな、しい・・・。
狼さえ、倒して、しまえば・・・。
[オトフリートは気付いているだろうか。
初めて話した夜に比べて、...の言葉は流暢になっている。
感情は少しだけはみ出る。
それはここで、みんなから、得たもの]
やだ・・・殺してほし、くない、の・・・。
[眉を顰める。これは...の、悲しいとき、苦しいときの癖で。
死にたくない。
それは大前提だけど、でも、悲しくて]
ギャ! ギャア!
[旅人の叫びは、少女の振り下ろす回数に反比例して
少なくなり。最後は、振り下ろされる刃に対して、
なにも、なにも、反応を示さなくなり。]
少女は旅人の胸にうずくまっていた。
かわいそうなこどもを、母親がだきしめるように。]
へーき、はんちゃんは、こう、ならないから
[小さくつぶやいた彼女のささやきを、聞くものはいない。
壁の外の彼女の首は、彼をみつめて。
彼を殺した彼女は、やさしく旅人の目を閉ざして。]
[近づいてくるクレメンス。長く伸びた影。その黒衣]
[神に仕えるものは、何故黒衣を好む?]
ええ、ここにいたわ。
[月も傾いたせいなのか、もう、噴水に虹は架かっていなかった]
[オトフリートの最後の言葉には]
・・・・・・特定するわ。
[強い視線にをたじろぐことなく、受け止めた。きらりと目が、月光に照らされ]
そう。・・・あなたを。
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