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[瞬きを一つ。アーベルの想いはまだエルザの中から失せきらずに、蒼い煌めきを瞳に宿すか]
彼の首から、ロザリオが外れていたわ。
[その意味まで問うことはしなかった。哀しい妄想かもしれないから]
獣の王にして、太陽の煌きを持つ金の狼。
その君が何故、エルザを庇おうとしているのか理解が出来ないね。
[クレメンスは、続ける]
……僕、が?
[流石に何を言われたのか分からなかった]
何、を……
[けれど自分は何の血を引いていた?
揺らぐ。揺らぐ。揺らぐ]
違う……
[呆然とただ否定する]
ロザリオ…アベールが身に着けていたものだね。
それも消えてしまったのか……。
[呟き。
そして、ミハエルに]
いいや、君は人狼だよ。
君を見た。
[再度告げる]
僕は、ただ。
ただエルザを護りたいだけ。
[震えながら答える]
何故、貴方は僕を人狼だと言う?
[気が付きたくなくても気が付いてしまった]
[傍らのエルザが震えている]
[そちらを見ることが出来ない]
[キッとなって、クレメンスをみる]
…世迷い言は聞かないわ。
そういうあなたは何者なの。何を証拠にミハエルを、人狼だなんて言うの?
言っただろう。
・・
私は、君を「見た」
ジプシーの人狼の御伽噺のカードゲームには、「占い師」というものがあるらしいね。狼を識る能力を持つものだ。
世迷いごとではないよ、エルザ。
君が霊を見る事が出来るように、私は「目」で狼を識る事が出来る。
[軽く、目を擦った。モノクルがなくても、ここに来てからよくなった視力、そして]
見た?占い師の能力で?
僕を見たのならその答えは出ないはずです。
[息を吸い込む]
[顔を上げてキッと神父を睨みつける]
…そうか。そういうことか。
残酷な神が支配する、神の箱庭。
その神が楽しむための駒として使うのは。
聖職者。
神の声を代弁し、神の代わりに力を振るう者。
そういうことですか。
[震える手で剣を抜き、構える]
ならば、貴方が人狼だ。
[くすり]
…そういえばあったわね。狼を知ることの出来る能力者が。『狂信者』と言うカードだったかしら?
誰の趣味なのかしらね。似合いすぎているわ。
[エルザの言葉に小さく瞬く]
[そうだ、そのカードも在ったのだ]
人狼、でなければ、人狼に組するもの。
狂信者、ですか。
…させませんよ。
僕には力は無いけれど。
エルザをみすみす殺させるようなことはしない。
人狼は、皆、常にそういうらしいね。
[クレメンスは、懐から一冊の本を取り出した]
人狼達の生態を詳しく書いた本だ。
そう、だが、私が何故人狼だと君は言えるのかな?
ジプシーのカードゲームには「狂人」というカードもあるらしい。それは、人間でありながら、人狼に味方するものだ。
では、尋ねよう。
狼に高らかに問う!
[歌うように声が響く]
契約の神、嫉妬する神の僕であるばかりか、あなたは人狼にまで跪くのかしら。
[くすくすと笑う]
…退きなさい、月に魅せられし者よ。自分もまた哀れな生け贄と気づかないの?
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