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─宿屋・裏口─
[一本、吸い終わった所では、と息を吐く]
……一応、行くだけは行く、か。
[食堂でのやり取りは知らず。
知っていたとしても、共に行く選択肢はなかった、けれど]
ま、あの様子じゃ、話すだけ……って気もするが。
[僅かに残る傷。
『結社』がなんであるか、知るが故の反発。
それらは、今は押さえて、自衛団の詰め所へと歩き出す]
─自衛団詰め所─
……じいさま、いるか。
[どこか物々しい雰囲気の詰め所にたどり着くと、出迎えたのは幾つかの鋭い視線]
あー……ぴりぴりすんのは勝手だけど、殺気立つなようっとおしい。
じいさまに用がある……わりぃが、サシで話させてくんね?
[団員たちに向けて言い放つ様には、普段装う軽薄さはなく。
身に纏う鋭さに周囲が気圧される中、団長に来訪を報せに行った団員に、団長の執務室へと通された]
よっす、じいさま、さっきぶり。
[ひら、と手を振る仕種は軽いが、蒼の瞳は鋭いまま]
ああ……別に決定に不満があるとかどーとかじゃない。
そこらは、他の奴らが言いたいだろうから、任すさ。
……それに、『あんたら』が陳情でやり方変えてくれるとは思ってない。
ただ、一つ、確かめたいだけだ。
[ここで、一度言葉をきり。
真っ向、団長を見据えて]
じいさま、あんた。
……今回の事は、俺が前にも巻き込まれてる事、承知の上での決定、か?
[短い問い。それに変えるのが否定であれ肯定であれ。
次に向ける言葉は変わらない]
……悪いが、俺は慈善家じゃないんでね。
自分の力……つかわねぇ、とまでは言わねぇが。
過度に期待されても、正直困る。
[静かな言葉。向けられる団長の視線も、厳しくはあるけれど。
視線は外す事無く]
……大体、探す手掛かり大してねぇんだろ?
そんなんで、一朝一夕で見つかるなら苦労はないだろうし。
何より、俺も死にたくはないんでね。
そっちの期待するようには動かねぇ、と思ってくれるとありがたい。
[ここまでは、鋭さを残したまま、言って。
けれど、直後のため息の後、表情と雰囲気は一気に崩れる]
……ま。
知り合いの方が圧倒的に多いし。
……できるだけ、死人は出したくねぇけどさ。
[ぽつり、と呟いた言葉。それに団長が何か返すよりも早く]
ま、用事はそんだけ。
……じいさまの性格だと、言うだけ無駄だろうけど。
あんた一人で抱えて、どーにかなる事じゃあねぇんだから。
そこら、考えろよな……トシなんだし。
[さらり、とこう言って、執務室を出る。
そのまま、詰め所から出て。
はあ、とため息一つ]
嗚呼。兄弟と呼ばれるな。
隣では姉妹、となるが。
[自ら進んでその言葉を使う事がないようで
何処か他人事のようにゲルダ>>419に声を返し]
なんだ、煽ててクッキーの催促か?
[照れ隠しもあってか冗談めかした口調]
善処してもらえるなら幸いだね。
[それ以上注意を促すことはせずにいるのは
これ以上言っても効果が薄いと思っての事だろう。
首を傾ぐゲルダから本の話題が出れば一寸視線が泳いだ]
あー…、本は好きだな。
伝奇も読みはする。
[活字であれば分類問わずといった所だが其処は飲み込む]
……あー……っとに!
あの勝負からこっち、やる事なす事ケチしかつきゃしねぇ……。
[思い出すのは、帰郷の一因となった賭場の揉め事。
今更な部分もあるため、出るのはグチとため息ばかりだが]
……とりあえず。
もどっか。
[それでも、ここにいても仕方ない、と。
宿へと向けて、歩き出す**]
[サンドウィッチを片手に歓談する女性陣。
時折垣間見える物騒さに片眉がピクと跳ねる。
だからといって冗談半分であろうと思ってもいたから
口出しはせずに使った薬を整頓し袋に詰め直していた]
――…ん。
[ゼルギウスの誘いを断るミハエル>>421の声が聞こえ
手元から視線を外しそちらを向けば
宿屋を出るミハエルの後背が眸に映りこむ]
如何したんだ……?
[表情は見えないが俯き歩む様はらしくなく見えて
少しだけ案じるような音色の呟きが零れた]
[新刊を手にお礼を言い、何かお返しをと言うゲルダにひらひらと手を振ると]
あー、別に良いって。忌憚ねぇ感想さえ聞かせてくれれば十分だ。
……あ、だがどうしてもって言うなら。
[と、そこでふと何かを思いついた様子でそう言うと]
煙草を売ってくれりゃいい。
持ち込みもしてるが、どうにも想定以上に消費が激しくなりそうだしな。
もちろん、お代はちゃんと払うぜ。意地でもな。
[そう言って、ニカッと笑った]
─宿屋・食堂─
あ…私も騒いじゃってごめんね、イレ姉。
赤ちゃん、びっくりしてない?
イレ姉も、体調は大丈夫?
[ゲルダがイレーネに謝るのを聞けば、うるさくしていたのは自分の方だと思い申し訳なく思ってこちらも謝罪をし。
逆にイレーネがゲルダのことを気遣うのを聞けば、自分もゲルダを心配げに見つめた。
だがそれも、ライヒアルトから言われた言葉で唸る自分の頬をゲルダに突付かれ、キーファーからも追い討ちをかけられれば観念したような苦笑に変わって。]
…うん、くすぐったい。
ゲルダの方が頑張り屋さんだよ?
[頑張り屋だから、という幼馴染にはきょとんと首を傾げるも。
ライヒアルトとイレーネ、ゲルダのやり取りを聞けばくすくすと笑みを湛えた。]
うん、わかった。
…まだまだだなぁ、私。
[ライヒアルトからわかってくれたならと言われると困ったように笑いながら頷いたものの小さな声でぼやきを口にした。
心配してもらえるのは嬉しいが、祖父がいなくなって随分経つのにまだ一人立ち出来ていないのが自覚出来るので情けなくも思えて。
そんなところにブリジットがゲルダへと本を手渡すのを見れば、新刊?と首をかしげ微笑んだ。]
ブリジットもお仕事頑張ってるんだね。
あとで私にも読ませてね。
[こちらも本を読みはするが、単純に面白いとか楽しいとか怖いとか悲しいとか、そんな感想しか言えないものだから彼女の参考にはなれないだろうと自覚しており。
いつもゲルダが先に読んでから自分も読ませてもらっていた。]
あ…ミハエル君?
…大丈夫、かな。
[ゼルギウスの呼びかけに、ようやくミハエルが今まで黙っていたことに気付いたものの既に席を立ち出口へと向かうその背中は声をかけ辛い雰囲気で。
大人びて見えるものの自分よりも年若な少年を気遣ってあげられなかったことを申し訳なく思い眉を下げた。
追いかけようかと思ったものの、あの少年が年相応の甘えを見せることを厭う素振りを見せていたことを思えばしばらくそっとした方が良いかと思い、席に着いたままサンドイッチを口に運んだ。]
言わずとも分かっているとは思うが
イレーネの傍では吸うなよ、煙草。
あと、ミハエルの傍でも、な。
[ブリジットの言>>432に思わず念を押す。
何やら含みのある笑み顔>>435が見えて
青年はいやな予感に軽く柳眉を寄せた]
――…なんだよ。
[ぽつ、と返せば本を見せ付けられ
青年は知らず知らずのうちにその動きを目で追い]
読んで欲しいのか?
[意地の悪さが滲む表情が見えたから
問いに問いで返して視線を泳がせる]
[ちなみに。
ゲルダに渡した本と、今ちらつかせている本。
前者は、各種東西妖怪伝承を下敷きとした冒険紀行。
後者は異形の化け物の数多く出てくる伝奇ホラーであったとか。]
[ブリジットがライヒアルトに薦めている本を見ればゲルダの手に渡ったそれとは違うことが解って。
彼女の表情も見るに多分怖い本なんだろうなぁ、などと思いながらもくすくす笑って二人のやり取りを見た。]
―宿屋 食堂―
[席を立つミハエルに気づき、視線を送り]
無理してはだめよ。
[俯き気味のその背に、控えめに掛けた言葉は届いたかどうか。
小さく息を吐いて、前へと向き直った]
それなら、遠慮なく。
[ライヒアルトとユリアンそれぞれの言葉を受けて、籠をテーブルの上に置いた。
掛けられた布を取り、箱を一つ手に取る]
[掌サイズの箱の蓋を取ると、中にはさらに一回り小さなサイズの人形が収められている。
金の巻き毛に黒と銀のチェックのリボンとワンピースを身につける、円らな瞳の少女。
箱の内側にも布が貼られていて、それ自体が小さな小部屋のように見立てられ、傍には同じリボンをつけた黒猫がちょこんと控えている]
あまり派手ではなくて申し訳ないのだけど。
これなら、持ち運ぶのにも便利かと思って。
[別の箱の中にはバイオリンを持つ少年がいたり、綿で作られた白い子犬がいたり、それぞれに違う空間が作られていた。
シンプルなようでいて、細かな部分にまで配慮がなされていることは、見る人が見れば分かるだろうか]
……あら。
これは少し、タイミングが悪かったかしら。
[その中の一つから、赤い頭巾の女の子と間抜けな顔の狼が覗いた時には、そう苦笑を洩らしたが。
一通り見せた後は小箱を元のように仕舞って、相手の評価を待つ]
[本の種類が違う事に青年は未だ気づいていない。
クロエが笑っている要因が
自分とブリジットにあるとは知らず眸を瞬かせた。
視界の端ではカルメンとユリアンの商談が始まる。
カルメンの披露した人形に青年の眼差しは奪われた]
――…へぇ。見事なもんだな。
[男所帯ではこういった人形を目にする事は殆ど無く
意識することも無かったので其れは新鮮に映った。
タイミングが悪いと言った其れもチラと見えて]
ああ、御伽噺のアレか。
[子供に読み聞かせる事があった物語を思い出し
それから自衛団長の話が浮かび曖昧に笑う]
[カルメンが机の上に置いた籠は気になったが、商談ならば邪魔をしてはいけないかと思いそちらへは行かず。
サンドイッチをゆっくり食べベッティに美味しいと微笑み礼を言ったり、サンドイッチに挟まれていたハムだけ抜いて蒼鷹にあげたりしていた。
だがカルメンたちの会話やライヒアルトの感嘆が聞こえれば、どんななのかな、と気になってちょっと落ち着きがなく見えるだろうか。]
]
分かってるなら良いさ。
考え事しててうっかりは止めて呉れよ。
[ブリジットの返事>>443にゆると頷く]
そうそう、あの坊ちゃんだ。
未だ育ち盛りだからな。
[何だかニヤニヤされてる。
少しばかり調子が狂うのか青年は己がうなじを軽く撫で遣り]
――…やれやれ。
読ませて頂こうか、大作家殿。
[彼女の手を留める為に言葉を紡いだ]
―宿屋 食堂―
お褒め頂き光栄だわ。
[他方から掛かる声に視線をずらして、その主であるライヒアルトを見た]
そう、それ。
別のお話にすればよかったわね。
[そう言った時には、既にその箱の蓋は閉じられていたが。
それから視線はその奥、彼と話す女性が持つ本に何気なく向けられた]
気になるなら見せて貰ってきたら如何だ?
あちらさんは人形作家殿。
人形を作るのを生業にしてんだから
見せて貰って作品の感想、言ってみると良いさ。
[落ち着き無いクロエの意識が其方に向いてるのに気づけば
軽い口調でそういってチラとカルメンの方を見る]
愛でられる為の人形、だろ。
良ければ見せてやって呉れるかい?
[コトと首を傾げ話を振った]
如何致しまして。
もっと気の利いた台詞が言えればいいんだが。
[カルメンの返しにクツリと咽喉を鳴らし]
まぁ、気にする奴は居るかもしれねぇが……
物語の結末を思えば悪くはねぇんじゃねぇか?
めでたしめでたし、で終わるだろ、あの話。
チラとしか見えなかったんであれだが、
他のと比べても遜色のない出来に見えた。
其処は売り手の腕次第、だろうよ。
[なぁ、とユリアンに同意を求めてみせた]
勿論。
[ライヒアルトににこりと笑い、一度仕舞った小箱を一つ手に取る。
少し傾けて蓋を取れば、赤と青のコートを着た双子の姿がクロエにも見えるか。
中央の銀の鳥籠の中には瑠璃で作られた小鳥が一羽。
それは少し前に細工師夫婦に頼んだものだったか]
そういえば、その子は?
[中身を掲げたまま、ふと彼女の傍にいる蒼鷹に視線は移る]
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