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そう、だね。
僕には僕の思うところがあるよ
まだ、悩むのだけれど。
まだまだ、悩んでいるのだけれど。
[近づく聖なる人の子へと目を向ける。]
[その胸元の逆鱗は、淡く青い光を放つ、透き通ったプレートに見えたかもしれない。
金色に輝く繊細な刻印が、その中に封じられているように、埋め込まれている。
その白い指が触れるか触れないか、と言った瞬間、突然目を開けて、その手首を恐るべき素早さでつかもうとする。
その、縦に切れた瞳孔は、どうやら焦点があっていない様子。]
……少なくとも……生き急ぐ必要はないはずですよ。
[本質が無限にたゆたう虚無の一端である彼からすれば、精霊であるこの少女もまた、限りある存在。
そんな思いからの呟きの真意は、恐らくは届かぬだろうけれど]
頑張る……ですか。
とはいえ。
何をどう頑張ればいいのか、明確でないのが困り所ですね。
[少年と少女をほほえましげに見ながら。]
あぁそっか……そういえば僕の名前言ってなかったや。
おにーさんはアーベル。
今は、西通りの宿に泊まってるよ。
ベアトリーチェは強いんだね。
うん、僕もこの世界は嫌いじゃないよ。
おいおい。神父サマまで。
俺はややっこしい事に首突っ込むのはごめんだ。
どっかで厳重に保管してるんだろ、あれ。
……見に行ったら最後、『好奇心、猫を殺す』って事になるんじゃねえ?
[プリンパフェを食べ、ブラックコーヒーを飲みながら。
見たいとも思わないらしい。]
―Kirschbaum・店内―
[ハインリヒのパフェ処理能力はいつものことなので驚かず、...は二人の会話に口挟む]
クレメンスさん、実は僕も気になってたー
「鍵の書」って凄いお宝なんでしょ?
見つけたら一気に大金持ちになれるよ。
……でもさ、結局「鍵の書」ってどんなものなのかわからないんだよね。噂だと「世界の英知が手に入る」とか「別世界の入り口」とか「錬金術についてかかれてる」とかいろいろなんだもん。
[実際のところどうなんだろうと興味津々]
[立ち上がって、近寄って、そして白い指を伸ばした矢先。
不意に、疾風の力が窓を鳴らす。白い指が止まる。]
[刹那、捕まれる手首。
その感触は、一瞬だけ陶器のように硬く、冷たかったろうか]
…ああ、驚かせたね。
いけない。風邪を、引くよ。
[手首を捕まれたまま、青い鱗に触れるはずだった指は、服をかき寄せる]
よろしく、アーベル。
[小さく首を傾げて]
あぁ、そうだ。宿。
そろそろ一度、戻ろうかな。
[そう告げて、苗床は、桜の樹より離れる]
はな、おいで。
[ひらり、一つの枝に咲いた三ツ花を呼ぶ。
ふわり、蝶のような花は苗床に咲き誇る。]
あそこの料理はおいしいから、行くと良いかもね。
きっと、宿の主も喜ぶよ
[それじゃあ、と頭を下げて*そちらにむかう*]
生き急ぐ。
そうね、そうだったのかも。
[好奇心が心を逸らせた。だからこそ飛び出してきたのであって]
これもバランスだったのよね。
失敗しちゃったかな。
[少しだけ反省の色。いずれまた好奇心に負けるだろうが]
何をどうすればいいのか、あなたにも分からないの?
困ったな。力になりたいのに。
[誰のとは言わないが。目の前の人物には分かるかもしれない]
[少年の嬉しいの言葉に]
きっと桜も嬉しいんじゃないかな?
見守ってくれる人がいるって、それだけで温かくなれるから。
[自分の正体を気づかれているのをやっと自覚しつつ。]
あはは、僕が溺れちゃったら大笑いだよね。
[いなくても、の言葉に、少し眉を寄せ]
いなくならなければいいんじゃないかな?
君が変化から守り続けてあげれば。
それって、難しいことだけど、ね。
おーい、やめとけやめとけ。
『鍵の書』ってのは封印された品物なんだろ。
素人が手ぇ出していいもんじゃねえと思うぞ、いやマジで。
つか、持ち出した時点で自警団に追われるんじゃね?
ギュンターのじっちゃんは怒ると怖いぞ。
ガキの頃、よく拳骨喰らってたからな。あれは痛かった。
[いつの間にか、ハインリヒの思い出話になっている。]
ーKirschbaum・店内ー
そうですねえ、私の聞いたところでは、鍵の書に辿り着くまでには、恐ろしい魔物の出る迷宮をくぐらねばならないとか。
鍵の書そのものに呪いがかかっていて、最初に手にした者は呪い殺されるという話もあるようです。
ああ、ハインリヒさんに依頼にいらした方は、もしやその話をご存知で、あなたに最初に鍵の書を手に取ってもらおうと考えたのかもしれませんねえ。
悩むのは、生きている証だよ。
悩めるうちに、たくさん、たくさん悩むといい。
[ティルの言葉にそう返すと、アーベルと名乗った男の人を見ます。]
ベアトリーチェが、強い?
[不思議そうに、一ぺん、またたきをしました。]
ただ、あるがままに生きようとしているだけだよ。
生きとし生けるものの、権利として、義務として。
……ぁ?
[幾度か瞬いた青い瞳は、小さく丸い瞳孔に。]
すまない、寝ぼけてた…。
痛くは無かったか?
[自分でも驚くほどに強く、力を込められていた指を、緩めて放す。]
[アマンダとダーヴィッドの遣り取りを視線の端で捉える]
ダーヴィッドさん、コーヒーでも召し上がってはいかがです?目が覚めますよ。
[笑顔で声をかける]
えー、好奇心だすと猫が死んじゃうのか。
それは嫌だな。僕、猫大好きだから。
[ちょっと間違った方向で悩む...]
それに魔物がばっさばっさいたら、真っ先に死んじゃうよ。僕、ダーヴィットさんみたいに強くないから。呪いも嫌だなあ。
まあ、それによって変化が生じる事もある。
なので、全てを否定する必要はないでしょうね。
[僅かな反省の色に、くす、と笑み。
それから、僅かに表情を引き締めて]
わからないと言えば、わからない。
わかると言えば、わかる。
しかし、今はただ、時が如何様に移ろうかを見定めるしかない。
……そんな状態ですよ、俺は。
[静かな言葉の後、一転、口調は軽くなり]
力になりたいなら、そのひとが何を望んでいるか。
それを、しっかりと見定めないと?
おいおいおいおい。
だから焚きつけるなって、神父サマ。
[プリンパフェを切り崩しながらも、苦笑。]
一攫千金だの何だのってのは、この歳のガキには早すぎる。
違うか?
[少女に穏やかな笑みを向け。]
うん、強いと思うよ。
悩みから簡単に逃れたがる人も多くって。
そして、逃れる為だけに生きられる権利を捨てようとする人もいる。
実際……そんな人を幾度も見ちゃってるから。
でも、君はそれを生きてる証って自覚してるから、ね。
―Kirschbaum:2F―
[弦の調子の確認を終えれば軽く両の手を握ったあと青年は全てをケースにしまいこむ。
そしてすっかり忘れていた空腹を告げる腹時計に肩を竦めて階段を降りた。
今日も集まりだしている見慣れたような姿に気付けば挨拶くらいはするのだろう]
―Kirschbaum:2F→店内―
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