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[アーベルの笑みには気がつかぬまま、
まるで小鳥と会話をするような間があく。
その間も、耳は周囲の会話を拾っていたのだが。
ゆるりと首が回って、今度はユリアンをじっと見つめる。
碧の眸は、全てを見透かさんとするように、瞬きもせずに。]
おや、リディさん、迷子になっていたのですか?
ここにフルーツが……っと。
[しかしそれは、リディを連れてきた自衛団員の言葉によって途切れ、何事も関心がない少女の様子を、単純に腹が減ったものと思えば]
フーゴーさん、リディさんに何かお願いしても?
[フルーツは先ほどヴェルトに与えてしまったことを思い出し、
マイペースに空気を読まず、フーゴーに願い事を。]
言えば信じてくれるの?
[グラスから口を離してフーゴーに言い。
掛けられた声にユリアンを振り返った]
……へぇ。
[動揺を押し隠す。
ウェンデルの問いに下を向いて]
…クロエ、だよ。
[ボソリと告げた。
髪に隠れてその表情は見えない]
―宿屋内酒場―
[フーゴーとなるべく顔をあわせないように壁にむかうような席で、リッキーに注文したワインを嗜んでいた。
人の出入りにもふりむかず、口をひらかないようすは、考えごとをしているようでもある]
――……?
[占い、と、はなしが出始めたのは、少しばかりまえだとおぼろげな認識。
空気がこわばった気がして、さわぎの方角へ顔をむこた]
[状況を把握しようとユリアンとアーベルに意識を向けていたのだが。扉が開く音に反射的にそちらを見たのは職業による癖からか]
嬢ちゃん、無事だったか…。
ああ、デザートで良いか?
[ライヒアルトの願いには短くそう返し。視線は忙しなくユリアン達とリディ達の間を往復する]
占い師が2人ですか…――。
本当に幾多伝わる伝承の中の1つのようですね。
さて、このような時は伝承ではどうしていたでしょうか。
そう都合よく、まとめ役――結社の人が紛れている
…――などと云うことはないでしょうしね。
[フーゴーに願い事を向けた後。
ボソボソと零れ落ちるのは、考えごとの切片。
声音は淡々とし過ぎ、更に常の無表情ならば、
それが本気で考えていることなのか、
冗談ごととして考えているのかは、
周りからは分からないだろう。]
………。
[アーベルからの問いには一度沈黙が返る]
…信じるかどうかは、何とも言えないな。
判別するための『情報』は欲しいと、俺は思ってる。
[返したのはそんな言葉。手がかりは少しでも欲しかった]
クロエ?
……へえ、従妹のこと信じてなかったってことかな。
それとも霊能者かもしれないから取り入ろうって考え?
[一層目を細めて、冷ややかな視線]
まあいい。
お前が庇ってるとも限らないからな。
[そういってポケットから取り出したのは手のひらに収まるほどの木箱。カタン、とテーブルに置くとカウンターの方へ向いて]
おやっさん、悪いんだけど水。
あ、ワイングラスで頼める?
……え?
[思わぬタイミングで呼ばれた、名前。
一つ、瞬いてから、下を向くアーベルに戸惑いを帯びた瞳を向ける]
アーベル?
えっと、それ……って。
[どう、聞けばいいのか。何が聞きたいのか。
はっきりわからなくて。
それきり、言葉は、途切れた]
……。
[少女は周りの喧騒など、何も無いかのように、ボーッとした瞳で、床を見つめ続ける]
みゅ。
[そして、今更気づいたかのように、腕についている鈴を見つけると、それをつつき、チリンという音が鳴ると、ゆっくりと鈴を何度もつついた]
……。
[チリンチリン。
ただ、無表情に少女はつつく]
[クロエとアーベルとユリアンを交互に見やる。]
なんか、複雑そう……?
[占い師が二人だとか、混乱のもとになるとか思いながらじっと二人を見やる。]
[ユリアンと別れた後で宿の自室にて。今まで得た情報を自分なりに整理してみる。人狼、ギュンターの死、処刑、クロエ、霊能者…一つ一つがバラバラに浮かんだままで中々繋がってはくれなくて]
そういえば…人狼騒ぎに必ず出てくるのが居たっけ?なんて言ったかなぁ…。
ああ、そうだ。『占い師』!
クロエが霊能者って事は、占い師も居るのかな?占い師さえ見つかれば…狼が居てもすぐ見つけられるよね、きっと!
[占い師を探す事から始めよう、そう彼女の中で方針を決め、そのためには皆に会って見なければと部屋を出た。]
んー、まずはどこに行こうかな?
[部屋を出た後で行く先を考える。首をかしげた時にあわせるように腹の虫が小さく鳴いた]
まずはご飯!あそこなら誰かしら居るだろうしね!
[ひとまず頭はメニューを決めるのに使われるようだ]
/自室前→宿の食堂
[――……結社のひと。
聞こえたことばに、思わずといったふうにフーゴーを見た]
…、あ、リィちゃん。
[けれどすぐに視線をはずし、フーゴーが声をかけていたリディにかけよる]
だいじょうぶぅ?
さっきのひと、あのときのでしょお?
なんにもされなかったぁ?
[酒の香りをまとわせつつ、しゃがんでといかける]
え? ああ…。
これで良いか?
[かけられた声にハッとユリアンへと顔を向け。言われた通りにワイングラスに水を注いで目の前へと置く]
なるほど。
まぁ、対象としちゃぁ妥当か。
[アーベルの口からクロエの名前が出たのには、とりあえずは一つ頷いて]
伝承じゃぁ、能力者は1人ずつ。
2人目が出るコトも無いこたぁないが。
[青年2人を見比べるように視界に納めつつ。
不意に、口許がニヤリと笑みを作る]
大概は、片方が偽者。
そしてソイツは人狼か、イカれた人間――だったなぁ?
みゅう。
[今の少女にとって、誰が自分に話しかけているのかは、あまりよく分からなかった。
だけど、酒の匂いをさせながら、そばにしゃがんだ人に気づくと、少女は瞳をそちらに移動させて]
……。
[すぐに無表情のまま、その瞳を鈴に戻した。
相変わらず、チリン、チリン、と断続的に鈴の音が聞こえる]
[生物学者は顎にくの字に曲げた指を当て、
考え込むようにことの成り行きを見るも]
ああ、カヤさん。こんばんは。
[新たに増えた人には、律儀に挨拶をすることは忘れない。]
みんな伝承に詳しいんだね……
[ウェンデルの言葉にぽつりと呟き。
リディの様子には気づかないまま、カヤが入ってくるのが見えれば手を振って。
そしてユリアンがなにをするのか、興味津々で視線を向けている。]
情報があることだけを示したかった。
だからまだ「誰」とは言わないつもりだったんだよ…。
[フーゴーの言葉に小さく呟き]
…は。何とでも言え。
[下を向いたまま、力なくユリアンに言い。
強く左右に首を振ると顔を上げた。用意されるワイングラスを横目に見る]
……ごめん。
[チラリとクロエを振り返り、唇だけをそう動かした]
[短く礼をいい水を受け取ると、木箱をほんの少し開いて真珠を一粒取り出し。皆の方へ向き直ると自分の胸先で固定したワイングラスの中にぽとりと沈めた]
じゃあ、ほら、この珠を見て。
[そう促すと自らは目を閉じて。
グラスの縁を二度三度となぞる。目を開き、その指をぱちんと指をならせば反動で波をうった水がじわじわと紫に変化した]
紫は情緒不安定な様…まあこんな状況じゃ当たり前だよなあ。
ま、重要なのはこっち。
[グラスから真珠を取り出して水滴をふき取りながら]
クロエは人狼じゃねえぜ。
真珠の色が綺麗なままだからな。
[摘んで皆に見せながら]
お前はどうだ、アーベル。
─回想・宿屋─
[ゲルダから同意を得られれば、二人でダーヴィッドの部屋に向かって彼を見舞い。
彼から迷惑をかけたと謝られれば、気にするな、と言った後眉を少し寄せて]
…本当なら。
気にせずゆっくり休め、と言ってやりたいが…
そうも、言っていられないようだ。
自分の身は、自分で守られるよう。
早く、起きられるようになれ。
[そういうと、部屋を後にし。
カヤとクロエの部屋はそういえば聞いていなかった、とゲルダとともに酒場へ戻る途中、クロエと出会う。
身体は大丈夫か、と思ったが自分がいると二人がゆっくり喋れないだろうと思い、黙ってその場を後にした。]
え?あ、あれ?
リィちゃーん?リディちゃぁーん?
[ぱたぱた、ひらひら。
ふだんのにぎやかさが見当たらないことにまたたき、鈴へとむくリディの視線をさえぎるよう、手をうごかす。
占い師ふたりのはなしが気にならないでもないが――……]
[酒場に近づくにつれ軽い鈴の音が断続的に耳に入る。音のする方に目をやれば幾度か見かけた少女の姿。何やら違和感を感じたが、それよりも周りに既に集まりつつある人だかりの方へと自然に目がいく]
クロエに…ねーに…アーベル…ユリアン?
他にも結構集まってるなあ。何があったんだろ?
[なんとなく邪魔をしていい雰囲気でないことだけは感じられ、騒ぎの中心から少し離れたカウンター席につき、小声でフーゴに簡単な食事の注文をしようと声をかけてみた。フーゴが気づいてくれればそれで良し。気づいてくれないようならば騒ぎが収まるまで静かに様子を見守るだろう]
[動いている事態が、上手く頭に入ってこない。
ただ、ウェンデルが笑みと共に言い放った言葉に──微か、身体が震えた]
…………。
[声にならない、ごめん、という言葉。
返す術が見つからず、俯いて、軽く、唇を噛む。
カヤがやって来たのにも、気づける余裕はなかった]
[ユリアンに水を用意したついでにライヒアルトに頼まれたものをリッキーに作らせ、運ばせる。時間のかからない、先日と同じフルーツヨーグルトだ]
………。
[占い師が二人現れた状況。明らかに片方は偽物。フーゴーはそれを知っている。故に二人へ向ける視線は見極めるかの様な鋭いものとなった。
カヤがやって来るのが見えると、声は発さずに右手を軽く上げることで挨拶とするか]
[湯で汗を流して、さっぱりしたところで。
リッキーから借りた服に着替えた。]
……うん。もう、大丈夫。
[風邪はすっかりと治ったようで。
女王から下賜された鎧を身に着けてひとつ深呼吸をすれば、気分もしゃっきりとした…ような気がする。
騎士としての身なりを整えて酒場の方に向かうが。
鎧姿に剣を佩いているその姿が、他者に不要な不安を与えるかもしれないという考えは、その頭にはまったくなかった。]
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