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お風呂ですか?
わかったです。パパにきいてみるです。
[ここのところの豪雨が酷かったので、久しぶりにすっきりしたい人も多いだろう。
公衆浴場を開くよう、お願いしてみてはくれないか。
そんな風に話す団員に、ロミルダは聞き分けよく頷いた]
ふぇ。
団長さんのお話があるですか。
[でも、話はそれだけじゃなかった]
集会所に行くですね。
わかったです。
[続きの話を団員が少し言いにくそうにしていたから、ロミルダはきょとんと首を傾げたけれど、結局はまた素直に頷いた。
お蔭で、その理由についてはなんだか曖昧になってしまったけれど]
じゃあ、準備してくるです。
[スケッチブックをぱたんと閉じて、クレヨンを箱に戻して。
ロミルダは一度家に帰った]
[自衛団員と別れてからしばらく後]
こんにちはですよー。
[ロミルダは集会所の入口からぴょこりと顔を出した。
クレヨンとスケッチブックはもちろん、前に立ち寄った『陸』の子にもらった絵本や、お人形、他のお気に入りいろいろをかばんに詰め込んで]
ふぇ。ロートスがいるです。
それとユーリにぃも、お話聞きにきたですか?
[主より先に色鮮やかな鸚鵡に目が行くのは、仕方のないことだった]
[それから、ロミルダの身上書はこんな風に書かれるのだ]
―――――
■名前:ロミルダ=ペシェル Romilda=Peschel
■年齢:10くらい
■職業:――
■経歴:公衆浴場の管理人の娘。集会所や浴場の周辺で遊んでることが多い。
―――――
[経歴の部分はきっと、自衛団員が代わりに書いてくれたのだろう]
4人目、盲人 カルメン がやってきました。
[雨上がりの澄んだ空気に、甲高いオカリナの音が鳴り響く。
カルメンは家のある筏の端で、ローズピンクのワンピースの裾を揺らしながらオカリナを口に当てていた。
毎朝の、小鳥達を呼ぶ音色。
けれど、今日は一羽も彼らは来てくれなくて]
……?
[聡い耳に羽音は届かず、代わりに筏を踏む靴音が鳴り響いた。
カルメンは音のする方へと顔を向ける]
…じ、えーだん…の…。
[おじちゃん、の声は相手の言葉で掻き消される。
訊ねられたのは豪雨になる前の自分の行動。
雨の降る前に外に出たか、との質問に頷いて答えると、集会場に来るように言われた。
団長が話があるから、と付け足されて]
じー、ちゃ、が?
…うん、いく。
[ほわり、と浮かべたのは笑みだった。
そこで何を言われるのかを知らぬまま、カルメンは自衛団員の後を付いていく。
…と言うよりは、手を引かれていくと言った方が正しい]
[オカリナだけを手に、自衛団員に連れられ集会場へと辿り着く。
そこには既に幾人かの気配があった]
…だれぇー…。
[音がしなければ人物の特定も出来ず。
カルメンは自衛団員の手を離れ、声をかけながら集会場へと入って行った]
[眼が見えぬ故に文字も書けず。
身上書は自衛団員の手で記入される]
───────
■名前:カルメン=ビュルス Carmen=Buers
■年齢:17歳
■職業:──
■経歴:15年前、別のコミュニティで生活していたが、流行病によりコミュニティがほぼ全滅。辛うじて治療が間に合い、現在のコミュニティへと移動して来たのは良いが、病の影響から両目の視力を失った。以後、引き取られた先で世話になりながら生活することになる。
年の割に言動に幼い部分が見られ、年相応の判断等が出来ない時がある。
視力を失って後は代わりに聴力が発達し、人を声で完全に判別出来るようになった他、オカリナを用いて音を奏でることに興味を示し始めている。
最近に楽しみは、小鳥の声に合わせてオカリナを奏でること。時折、旅人達などから頼まれて曲を披露することもある。
一応、一人で行動することは可能。
───────
[身上書の記入を終えると自衛団員は集会場から去って行く。
カルメンは先を探るように手を動かしながら、集会場の中を移動して*行った*]
―集会所・広間―
[愛用の葦笛を苛立たしげに弄んでいる所に聞こえた、声]
……へ?
ロミっ子?
「ろみー、ろみー。
こんにちわー」
[惚けた声に、呑気な鸚鵡の声が重なる。
それから間を置いて、新たに連れて来られた姿に、一つ、瞬いて]
……ちょ、コレどーゆー……。
つか、カルメン、大丈夫かー?
[疑問は過るものの、それは置いて。
盲人の娘に声をかけつつ、必要ならば*手を差し伸べて*]
どーゆーって、何がですか?
[なんだかびっくりしたようなユリアンを、ロミルダは不思議そうな顔で見る]
あっ、カルねぇ。
座るですか?
[そこでカルメンの姿が見えたので、ロミルダは椅子から降りて、向かい側の椅子を引いた]
んしょ。
えっと、今はロミと、ユーリにぃと、ロートスがいるですよ。
[それからロミルダはカルメンに言う。
もっとも声が聞こえたから、カルメンにはとっくに分かっているかも知れないけれど。]
そだ。
お風呂が開くのですよ。
[椅子に座り直してから、思い出したみたいにロミルダは言った]
本当はもっと先なんだけど、最近ずっと雨だったから、特別にって。
今日の朝に薪が届いたばかりだからいいよって、パパが言ってたです。
[にこにこと2人に言いながら、ロミルダはまた*お絵描きを始めた*]
─広間─
[広間に入り聞こえる声。勿論それは聞き覚えのあるもので]
ユーラ、ローミュ。
ローテュ、も、いる?
カーラねぇ、おはなしある、っていわれて、きたの。
[独特な呼び方をして、カルメンはほわっと微笑んだ。
カルメンは名を正しく発音しようとしても、異なる音が混じってしまう。
自分の名前すらきちんと紡げはしなかった。
ユーラはユリアン、ローミュはロミルダ、ローテュはロートス、そしてカーラがカルメンのこと]
じーちゃ、おはなし、なんだろうねぇ?
[じーちゃとは自衛団長のこと。
言いながら、カルメンはユリアンに手を借り、ロミルダが引いてくれた椅子へと近付き。
手で座る場所を確認してから腰かけた]
おふ、ろ?
…おゆ、いい、なぁ。
[ロミルダの言葉に羨ましさを込めながら、カルメンはふわりと笑んだ。
羨望が混じったのは、カルメン一人では浴場は危なくて*使えないため*]
─集会場・広間─
[カルメンに手を貸し、彼女が椅子に座ると、は、と一つ息を吐く]
団長のじい様の話なあ。
楽しい話じゃあ、ねぇ気がするんだよなぁ。
[連れて来られる時に、団員から聞かされた事。
外れの筏近くの蓮の葉の上で見つかったものに関わる話。
二人の様子に、それは聞いてないのか、と察するものの、それぞれの無邪気な雰囲気に教えるのは躊躇われ]
へぇ、風呂開けるんだ。
ま、今の水じゃ、落とすつもりで汚れちまいそうだし……。
[ロミルダの言葉に、悪くないかも、と。冗談めかした口調で笑って]
ん……ぼーっとしててもなんだし、なんか作るか。
メシ食う前に連れて来られたから、腹減ったし。
[じっとしていたくない、という思いからこんな事を言って、*台所へと向かう*]
カルねぇも、あとでいっしょにお風呂行くです。
すっきりするですよ。
[ロミルダはカルメンに言う。
一緒にという辺り手を貸す気は満々みたいだけど、本当のところ役に立つのかは分からない]
できたっ。
ロートス、描いたですよー。
[満足したようすでロートスに見せるスケッチブックには、よくも悪くも子供らしいといえる鸚鵡の絵があった]
団長さんのお話、むずかしいお話ですか?
[ユリアンが言う『楽しくない』の言葉はそういう意味に受け取ったようだ]
むぅ。
よくわかんないけど、がんばって聞くです。
それで、お話が終わったら、陸に遊びに行くです。
[ロミルダはまたにこりと笑う。
コミュニティの子供同士でも遊びはするけれど、陸に寄ったときには新しい友達を探しに行くのが、ロミルダの楽しみの一つだ]
ユーリにぃ、ご飯作るですか?
ロミもお手伝いするです。
[それからユリアンの言葉を聞いて、ロミルダも椅子から降りて台所に行こうとする。
もっとも行ったところで、実際の調理自体はほとんど横で見てるだけに*なるだろうけど*]
いっしょ…。
うん、いく。
[浮かべたのは嬉しそうな笑み。
役に立つかは別として、ロミルダにそう言ってもらえたのが嬉しかった]
おはなし、たのしい、ちがう、の?
じーちゃ、おはなし、するの、いつも、たのしい。
[きょとりとした様子でカルメンは首を傾げる。
時折話してくれる内容は面白いのに、と不思議そう]
[お腹が空いたからと台所へ向かうユリアンと、それを手伝いに行くロミルダの足音を聞きながら、カルメンは音のする方へと顔を向ける。
座った場所から動かないのは、到底手伝えるとは思えないため。
けれど、ふと思い立ち、緩慢な動きで腰かけていた椅子から立ち上がる。
そして床にしゃがみ込み、手をついて先を確認しながら、少しずつある方向へと進み始めた。
これは杖を持たぬカルメンが一人で出歩く時の進み方]
…ま、ど。
こっ、ち…?
[集会場は初めてでは無いため、大体の間取りは分かっている。
当たりを付けたのは窓がある方向。
少しずつ進んで壁に当たると、それを支えに立ち上がった。
見えぬが故に手間取りながらも開く、広間の窓。
僅か湿った風が入り込むその場所で、カルメンはオカリナを口へとあてた。
そうして奏でるのは、幼き頃に見た大空をイメージした、小鳥の好みそうな穏やかな*曲*]
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