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―住宅街―
[タッタッタと走る。
広い道を走っていると何となく怖かった。から、気配の確認もせずに路地の一つへと入り込んだ]
っ。
[前方に大小の人影。
奥の方が暗いから、相手の顔までは分からない。足が止まる]
[落胆に俯いていたが、白銀の髪の人物に訊ねられ、オレは顔を上げる]
千恵は、身長はこのくらい。
髪が金髪で、今はピンクの服を着てるはずだ。
[自分の身長と比べての従妹の背丈を伝え。
外見の特徴も伝えた]
[千恵の外見を伝える伽矢、携帯のことを思い出し]
あっ、私の携帯に千恵ちゃん撮った写真があります。
[圏外表示のままの携帯を開いて千恵と伽矢が並んでいる写真を雪夜に見せた。
千恵の方はうれしそうにこちらに満面の笑みを浮かべながらピースをしていた。]
そっちの女の子です。
[伽矢の言葉に]
んや。
せったん持っていっていいよ。だから、大丈夫よ。
私が危ないってだけだから。
[そして、瑞穂の言葉には]
だーいじょうぶ。私はみずちー達を信じてるからさ。
憑魔に囚われた人間の行く末、か。
とりあえず、憑魔になったものは、生者の血肉を食らう存在になるらしい。実際襲われたし。
助けられるかどうかは……難しい、としか言いようが無いかな。
私に出来るのは死者の浄化だけだから、あまりたいしたことできないんだよ。
どうやら憑かれてはいないらしいな。
……今のところはだが。
[促しに視線を合わせて告げた。
二言目はやや抑えた声で]
あぁ、傷のほうはすぐ直るから心配するな。
[聞かれてもいないことを付け足してから、背を向けた]
―住宅街・路地―
[反対側の手には絵本。うさぎは背中で動きにあわせてひょこひょこしている。
百華が何でか笑っているのか分からなかったが、笑みにつられてこっちもはふり、微笑む。
伯母の胸中で不安やら心配やらが渦巻いている事などしらず。
知った大人と一緒にいられると安心してくる。
怯えはちまりと残るものの、だいぶ元気よく歩き出した。]
あっ。
[と同時に前に人影が見えた。
とたんにびくっとうさぎが止まる。]
それはうれしいですけど…、
[綾野の言葉に神楽の返答、思うところがあったがそのことは口にはださず。
代わりにもう一つの質問をした]
その憑魔になったら、その、身体能力あがったりとかそういうのあったりするんですか?
[ずいぶんと自分でも具体的なことを聞いた気がした]
― 住宅街 ―
[千恵ちゃんの手を引いて、歩いた。
できるだけ彼女の足に合わせようと、急く気持ちを押さえゆっくり歩く]
『タッタッタ……』
[規則的な足音にぴくりと止まる。
足音が近づいてきて、主の影と共にぴたりと止まる。
私は雑誌の入った袋をしっかりと握り締めた]
離れちゃだめよ。
[隣の姪に小声で言うと背中に庇い、相手の挙動をじっと見た。
雲が途切れ、さした月明かりに薄っすらと顔が見える]
……あんた、コンビニの子?
─自宅─
……今のところは、ね。
[抑えられた二言目に、口の端が上がる]
後にも先にも、憑かれる気はないさ。
……知り合いに、自分が『喰われて』浄化される未来なんざ、考えたくもない。
[それは、実際に目の当たりにした光景だから。
考えたいとも思わなかった]
……なら、いいけどって。
それより、黒江嬢。
大丈夫、かね?
[伽矢から聞いた身体的特徴と、瑞穂から見せられた写真を見ると、]
ああ、だいたいわかった。
とりあえず、急いだ方がよさそうだな。
……時間が惜しい。行くぞ。
[そう言って駆け出す。だが、数歩進んだところへ振り向くと、]
……で、神楽。お前どうするつもりだ?
ここでそいつと一緒にジッとしているつもりか?
[そう言って、ギロリと綾野に目を向ける。]
―住宅街―
子供…?
[最初に上がった声は高く聞こえて。
ガサという聞き慣れた袋の音と一緒に届いた声は、どこか覚えのあるものだった]
アルバイトはしてますが。
[緊張していても声は普段と変わらずに、答える]
………そっか。
[神楽の返答には更に重い落胆の色を示す。
次いで視線は紅を纏う女性へと向いた。
桜についての警告をしていた人物。
彼女が手伝ってくれることはあるのだろうかと考える]
身体能力向上?
あんのかな?
さっきの憑魔の群れを見ている感じだと、あんまりそうは思わなかったけど。出不精のせったんでも逃げ切れたぐらいなんだから。
司はあるらしいよ。
なんかこー、自然の力を借り受けて、常人には発揮できない身体能力が上がるの。
どっちかってーと、そういうの詳しいのあやのっちじゃないかな。
あやのっち、どうなの?
[綾野に話を促した]
―住宅街・路地―
[百華に言われてこっくり頷き、手をきゅっと握った。
月明かりで見えた顔、たぶん女の人。
怖い印象はないように思うが、知らない人なので戸惑い気味。
うさぎも背中でじーっとしている。]
………おばちゃ、だあれ?
[黒江に言ってみる。]
― 住宅街 ―
ああ、やっぱり。
[私や千恵ちゃんを追いかけていた者の様な、ラリった様子はなかった。
それで私は少し安心し、コンビニの子に数歩近寄った]
あんまり笑わない子。よく覚えてる。
OK。
行ってらっしゃい。
[と、雪夜に手を振りかけたところで、彼が振り向き、言葉をかけてきた]
もー、なんで女の子をそういう目で見るかなあ。
あやのっちだって、色々と大変なんだよ?そこまでちゃんとケアしてあげないと。
私は、迷惑かからないようにどこかでしばらく隠れていよっかなって思ってる。
ここにいたら、憑魔呼び寄せて、またあやのっちとか他の人に迷惑かけるかもしんないしね。
ま。憑魔が来てもなんとか逃げ切って見せるよ。こう見えて逃げ足は速いほうだし。
見よ。この黄金の足を。
[んなことを言ったが、袴なので見えなかった。
いや。おみ足が少し見えるというのは、なんというか、すごく色気があった]
[神楽の説明を聞き、自分の中で結論のようなものが出た。
そう思うとなんだかそれは確信に思えた。
重ねて聞かされる綾野の話はほとんど耳に入ってなかった。
すでに気持ちは千恵のことに向いていたから]
ありがとうございました、静音さん。
[頭を下げてもう一人の女性にも頭を下げてから名前につまると綾野だと伝えられた。]
その、『静音さんも』気をつけてくださいね。
[もう今にも探しにいこうとする伽矢達に]
いこっ、早く千恵ちゃん探しに。
その様子なら、当分は大丈夫だろうな。
[振り返り、にやりと笑み返す]
さぁて。
さっきの奴が憑魔じゃねぇという保障も無いが……
[再び視線は窓の外へ]
いなくなられっと色々面倒だしな。
残り時間も少ないが、少し暴れてくるか。
[言って、窓を開け放つ]
これで、俺が『憑魔』になったら。
龍先輩に、申し訳ないからな。
[珠樹にも、と。
それは口には出さずに]
それは、否定しないが……って、ちょ。
[開け放たれる窓。
ほんの少し、嫌な予感がした]
おい、ここ、三階……!
うん。
気をつけて行ってらっしゃい。
怪我しないようにね。
[離れていく瑞穂に笑顔で手を振った]
さーて、隠れ場所探さなきゃなー。
あ。あやのっち、そんじゃまた後でね。
お互い、生きて会えるといいね。
[そう言い残し、神楽が隠れ場所を求めて*彷徨い始めた*]
―住宅街・路地―
おばちゃ…って私?
私は黒江瑤子。百貨店に行く手前のコンビニでバイトしてる。
[この年でその呼ばれ方は内心引き攣らないでもなかったが。顔に出ないのは嬉しいことか哀しいことか。
百華への答えを補強するかのように名乗った。
笑わない子、には事実なのでコクリと頷いた]
「どぉこだぁ〜い」
[離れた場所から響く男の声]
奥に。やり過ごしましょう。
[近づく百華の横に並んで今来た道を振り返った。
コンビニ袋だけで成人男性らしき相手に勝てるとは思えなかった]
ああ、行こう。
[話し終えたらしい幼馴染の言葉に頷きを返して。
オレは急ぎ足で移動を始める]
千恵……!!
[無事で居てくれと、願いを込めて名を呟いた]
……その言葉忘れんなよ。
[忠告のような言葉と共に、手摺に飛び乗り、その上に立つ]
あぁ悪い、窓閉めといて。
[何でもないようにそんな謝罪を残し、にまりと笑って 跳んだ]
―住宅街・路地―
[伽矢と瑞穂より上、20代から全員おばちゃんに見えるのは子供の性。
黒江の心の嘆きは聞こえず、名前を言われると覚えようとして頷いて。]
ちえ、高井千恵っていうの。
[行儀よく名前を言うと、さっき聞こえた飴のおじさんの声がして固まった。]
ぁぅ、おじさん…。
[今はものすごく、会いたくない。
奥にと言われると、きょとりとする。
促されると、大人しく奥のほうへと連れられる。]
……………はっ、俺はまだこいつを信用しちゃいないんでね。
そもそも、自分のではないとは言え子供の危機に動かねぇ女なんざ、碌なもんじゃねぇよ。
[神楽の言葉に、嫌悪感露わに返す。
身を隠すという神楽には、「そうかよ」と短くぶっきらぼうに返すと、]
……ああ、今行く。
[先に行く瑞穂たちに続いて、その場を後にする。]
…………逃げるだけじゃ、何にも救えやしないのに、な。
[ポツリ呟いた言葉は、誰の耳にも届かず風に*消えるだろう*。]
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