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……あれ?
あれって、もしか……して?
[きょとり、と瞬き一つ]
ホラントの……お気に入り?
なんで、壊れて……それに、この布……。
は……はは。
ま、まさか、な。
[見慣れたものはあっても、姿はなくて。
それが、なんだか嫌な感じで]
……と、とにかく、まずは、ヒルダをだな、うん。
それから、もっかい、探しに、こよう。
[途中、ヴィルへイムと行き合えばヒルダのことを伝えて。
これ以上留まらない方が良いとも伝える]
もしお手間で無ければ、後から来るヨハンさんを手伝って差し上げて下さい。
私はヴェルナー先生を呼んできます。
[頼むとヴィルへイムに対し頭を下げ。
再び村の方へと駆け出す。
向かう先は、ヴェルナーの診療所]
……いやいや。
まったく、困った子らだ。
ヨハンくん、おぉい、
ヨハンくん、聞こえるかね!
[森の入り口。奥へ向かって声を投げる。
灯りを翳す。ゆら、ゆら、ゆら。月の明かりを森が隠す]
ああ。
無事だったかね、ヨハンくん。
いいや、
ヒルダは無事ではないのだったか。
メルセデスくんに聞いたよ。
いったい、どうしたというのかね?
どうした、って言われても、俺にも何がなんだか。
神父様と一緒に、ヒルダとホラント探しにきたら、ヒルダが木の下に座り込んでて……。
その時には、もう、こうなっちまってて。
……なんか、ホラントも、なんかあったみたいっす。
姿は、どこにもないんだけど……森ん中に、あいつのお気に入りのランタン……壊れて、散らばって、て……。
……森で、ヒルダさんが……。
[言おうとして、迷い]
…あ、覗いては──!
[扉の先を覗こうとするのなら、慌てながら阻止しようとマルガレーテへ手を伸ばす]
ランタンが?
壊れて、
散らばって?
……。
大方、単に思わせぶりな噂をばら撒くだけじゃあ、
人の気を引けないと思ったのだろう。
ヒルダに関しては、そうだな、貧血でも起こしたんじゃないかね。
黒い森は謂れのある場所だ、
しかしだからと言って、些細なことに惑わされては、いけないよ。
御伽噺は、御伽噺に過ぎないのだからね。
そうは思わないかい、ヨハンくん。
非常識と思えることは、大抵、人の妄想から出来ている。
そりゃ、御伽噺は御伽噺かもしなんいっすけど!
俺も、弟寝かしつけるのに、使ってましたし……。
でも、あいつ、あのランタンは大事にしてたし。
いくら気を引くためとはいえ、壊すとか……。
服の切れ端みたいなのも、散らばってて。
……やっぱ、なんか、おかしいっすよ。
……ふむ。
まあ、何にせよ、だ。
今、これ以上、あの場に踏み込むのは、
それこそ森に喰われに行くようなものだ。
あの森も広い。そして、夜の闇は深い。
ひとまず、今は、ヒルダを連れて行くのが先だ。
君一人で支えて行けるかね?
私はこの通り、灯りが邪魔だ。
…すみません、声を荒げてしまって。
ええ、見ない方が、良いです。
[そこにあったのは綺麗に半分欠けた、ヒトの形をしたもの。
これ以上人目に晒されぬよう、一度診療所の扉を閉める。
自分を落ち着かせるためか、マルガレーテを落ち着かせるためか。
彼女の頭を優しく撫でた]
……そう、っすね。
夜に踏み込むのは、止めた方が、いいかも知れない……。
[少しだけ、森を振り返って。
それから、村長に向き直って]
ああ、支えるのは大丈夫っすよ。
力仕事は、慣れてますから。
いいえ、私も直ぐに扉を閉めれば良かったことですので…。
謝らないで下さい。
…けれど、どうしましょうか…。
ヒルダさんもそうですが、ヴェルナー先生がこのようなことになるなんて…。
ヨハンさん達も、大丈夫でしょうか。
[灯りを翳す。ゆら、ゆら、ゆら。診療所から漏れる光と混ざる]
……ああ、
そこにいるのは、メルセデスくんかね?
どうしたのかね、入り口で突っ立って――
[腕に力を入れなおし、村長に続いて診療所へと歩いてゆき]
あれ、神父様……入り口に突っ立って、どしたんですか?
マルガレーテも。
ヴェルナー先生、いないんすか?
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