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ははん。
そう言われりゃ、納得はできるな。
[フーゴーの返答に、再び先のような笑みを見せる]
悪ぃね。
まず疑って掛かるんが性分なんだよ。
ま、確かに。
んな手の込んだコトが、獣にできるたぁ思えねぇな。
それこそどっかの組織でもねぇと。
[ひらひらと手を振る]
銀は人狼にとって致命的だって話だった。
メッキだって無理そうだ。
[頬を掻きながらフーゴーとウェンデルの遣り取りを聞き。
派手な音を立てて開いた扉に表情を引き締める]
…そうだったな。
[判別する手段がある。
フーゴーの主張に沈黙した。沈黙している間も人は、時は動く]
[話しの途中、やって来た自衛団。
彼らの口にする処刑、という言葉に無意識の内に、すぐ側にいたゲルダの腕を掴んでいた。
震えと、微かな怯えのいろは隠しようもなく。
フーゴーと自衛団の交渉は決裂し、そして。
自衛団が連れて行ったのは、ゲルダが保護した、と聞いた赤毛の騎士]
……っ……。
[止める術は、自分には、なくて。
ただ、見送るしか、できず]
えぇっ!?それはありなのぉ?
[あまりに手荒な方法に、おもわず(ひそめながら)声を上げた。
それでも、もっと荒々しい音が扉のほうからきこえ、息をのむ]
あ…っ、ダーヴィッドさ…、
[追いすがるように、手を伸ばした。
その華奢な手は、すぐにもふりはらわれて、服の端すらふれることはできないまま。
やがて、そのすがたはみえなくなる]
[争う音は小さくなり消えていった。
左手で口元を覆う。
命の遣り取りをしたことがないわけではない。自分の手で奪ったことすらある。だからそう取り乱しはしない。けれど]
悪い。ちと。
頭冷やさせて、くれ。
[視界が揺れた。周囲の音が遠ざかっていく。
座ったままだったからテーブルに伏せることができたのは、不幸中の幸いだった*かもしれない*]
[会話の最中、席で茶を飲むダーヴィッドをちらと見て、密かに懐に手を入れる。
……が]
あ?
[勢いよく開く扉と、入り込んでくる団員たち。
手を離し、代わりに腕を組んで動向を見やった。
やがて彼らが取り囲んだのは、男が先程目の端に捉えた――余所者]
……へぇ。
[目を細め、僅かに息を洩らすだけで、男は腕組みしたまま動かない。
彼らが扉の向こうに消えるまで、その行動を黙認するかのように、ただ静観していた]
[外から、声の交差が聞こえてきたのは、それからさして間を置かず。
訪れた、静寂。
それを待ち受けていたかのように響くのは、囁く『声』]
……っ!
[一際大きな震え。
気づいた周囲が案ずる声を上げたとしても、今は、囁く『声』によって飲まれ]
ウチ…………みてくるっ!
[『声』を止める方法は、それしか知らないから。
外へ、駆け出した]
[ヘルムートの苦言は聴こえていないのか、
少女を抱えた学者の眸はフーゴーを見つめる。]
…―――
[何かを口にしようとした瞬間。
荒々しい音が室内に響き、ダーヴィッドが連行されて行く。]
…――後悔をするなら、動いての方が良い、ですかね。
[それはフーゴーに向けられたものだったのか否か。
自衛団に勝手に選ばれるよりは、話し合いの方が良いのかどうか。
問いかけるような視線を一度周囲に巡らせ]
それで、空き部屋はどこですか?
[非情にも思える淡々とした声で、
リッキーに空き部屋を聴いていたヘルムートに尋ねた。]
おい、ライ…あまり、無茶は…
…なん、だ?
[リディを気絶させて連れていこうとするライに、手荒はするな、と言おうとしたところで自衛団員が連れ立って入ってきて。
フーゴーと短いやり取りの後、カウンターについていたダーヴィッドがいきなり連れていかれそうになるのを見ると、待て、と。]
そいつが怪しいと、なぜ決めた。
適当に選んだというなら、俺は止めるぞ。
ダーヴィッド、こっちへ…っぐ…!?
[剣を向けられても引くことはせず、ダーヴィッドに手を伸ばすこの男の首に、別の自衛団員が剣の柄を打ち付ける。
そのまま崩れ落ちる男に、余計な真似は死に急ぐぞ、と言い残し、自衛団員は赤毛の騎士を連れていった。
響いた音は、しかし意識を落とした男には聞こえなかった。**]
ヴィリーさんの方が、無茶をしてるのではないですか。
[意識を失った幼馴染を、困った色を滲ませた碧が見下ろす。]
空き部屋は、まだありましたっけ?
[どこまでもマイペースに、幼馴染も後で運ぼうと、フーゴーにかリッキーにか、尋ねる言葉を紡いだ。]
[駆け出した先の人だかり。
行きたくない、と行かないと、がぐるぐるぐるぐる、交差する。
震えはするけれど、足は止められず。
──いろが、みえた]
……しろ。
ひとの、いろ。
[掠れた呟きの後]
……なんでっ!
[口をついた叫びは、どう受け止められたのか。
返されたのは、お前たちが選ばなかったからだ、という言葉。
それに返す術はなく、しばし、立ち尽くす]
[払いのけられた先、誰も座っていないテーブルの傍でフーゴーはダーヴィッドが連れて行かれるのを見やることしか出来なかった]
……くそっ!
連中、何が何でも日に一人槍玉に挙げろってのかよ!
んなことしたって、下手すりゃ被害が拡大するだけだってのに…!
[ダンッと勢いよく拳をテーブルに叩き付ける。静寂が訪れた刹那、クロエが外へと飛び出すのを見た]
んなっ、クロエ、待て!
[団長の時とは様子が違うとは分かっていても、また倒れてはと思いその後を追いかける]
[訊ねられたリッキーは、言い淀みながらも一番最初に死亡した旅人の部屋なら空いていると告げることだろう]
[同じようにダーヴィッドへとむけられる救いの手。
しっかりとしたそのおとこの手も、何をもつかむことは出来ず。
なすすべのない空気がひろがったように思えてくる]
こんな…ひどい。
[かすれたことば。
外にとびだすひとたちの背を追うには、ふたりぶんの注意と天秤ではかれども、かるすぎて]
――……。
[淡々とたずねるライヒアルトにめずらしくもまゆをひそめ。
それでも、リッキーに伝えられたことをそのままくりかえす]
そうかも、だけど。だけど、でも……!
[まとまらない思考は、ループする言葉を繰り返させて。
『声』はきこえなくなったけれど。
言いようのない苦しさが力を奪い、足元がぐらついた]
……どうしろ、って。
あれもこれも、どうしろって、言うの……。
ウチ……は……。
[その場に座り込みつつ、零れる呟きは泣きそうな声。
それでも、「なかない」の矜持は崩そうとはせず。
見えたものを問われたなら、ひとのいろ、とだけ*小さく返す*]
ヴィリーさんを運ぶの…手伝ってもいいかしら?
[さきほどの少女はたやすく抱えられたけれど。
大のおとなならば、そうもいかないだろうと、手伝いを申し出る]
これでも、いちおう…そういうことはできるのよぉ?
[見た目からでは説得力がないかもしれないが]
─宿屋外─
[人だかりの傍にクロエの姿を見つける。「選ばなかったからだ」と告げられ、立ち尽くすクロエの横に辿り着き]
……ダーヴィッド……。
[変わり果てた姿に視線を落とした。彼を取り囲む団員が「コイツの言ってたことどうする?」と他の団員に訊ねるのを聞く。詳細を聞くと祖国への伝言を今際の時に遺したらしい]
……だったら、伝えてやってくれ。
そのくらいならてめぇらでも出来るだろう。
てめぇらが手に掛けた奴の最期の頼みくらい、聞いてやれ。
[それは懇願に近かった。クロエからはダーヴィッドが人であると聞かされる。自衛団員達に彼の遺した言葉を伝えるように頼むのは、無為に死なせてしまった相手にしてやれる唯一のこと。心の中で謝罪しながら、彼の遺体が片付けられるのを見やった]
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