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[ジョエルを抱いたまま、主を探しに視線を上げれば、主の方も様子がおかしい。
負傷している――駆けつけなければならないのに、その場から動く事は出来なかった。]
ぼっちゃま!
[代わりに声をかけ大事ないか確かめる。
そうしている間に、腕の中の熱はゆっくりと流れ溶け落ちてゆく。
主が近づいてくるのが見えれば安堵はする、するが。
―――違う痛みは治まらない。]
ぼっちゃま、ジョエルさん、が…!
[治療しなければと傷口を押さえるが、貫かれたのは胸の真上。
どんなに押さえても血が止まる事はない。
青い顔、今にも泣き出しそうな表情で主を見上げた。]
─集会場・広間─
[告げられる、無機質な声。
まだ終わらない、という事実に、ぎ、と唇をかみ締める]
……いっそ。
先に死ぬなとでも、命じておけばよかった……ですか。
[吐き捨てるような低い呟きは、近くのエリカには届いたか**]
─集会場・広間─
血が。止血しないと。
[とりあえずはハンカチを取り出して、司書の傷口を押さえようとする。背後をちらりと振り返る。倒れている執事と傍に駆け寄る伶人とメイド。
聞こえてきた言葉に司書へと顔を戻す]
各々が命を狙った。
ナターシャさんも狙われた。
結果がどうなっても…同じだよ。
[同じだ。自分に言い聞かせたように。
司書に向かってもそう言った。気休めにしかならなくても]
─集会場・広間─
[泣き出しそうなエリカの様子。
感じているであろう痛みは、わかる。多分、共有しているから。
けれど、それを表に出す事はなく]
……こうなって、は。
医療システムを使っても、無理、です、よね。
[途切れがち、短く、言葉を綴る]
……とにかく、空き部屋を一室借りて、そこへ。
ここに転がしておいたら、恨まれそうですし、ね。
[告げる表情は、乱れた露草色の影で、はっきりとは伺えそうになかった**]
良い、よ。
汚しちゃうから…ね?
それに、これくらい…痛くない、もの。
[レッグの手をやんわりと抑えて、止血しようとするのを止めた。
罪滅ぼしというわけではないが、命を奪われた者、大切な人を失った者の痛みに比べれば大したことではないと。]
―集会場・広間―
[銃を構えて対象に向き直る。
相手の銃口がこちらを向いているのは見えていた。
思わず首を竦めたが、そこから放たれた銃弾が身体を貫くことはなく。
指先に力を籠めようとしたその時、
右腕に鈍い衝撃]
……あ、れ
[意図せず引かれた引き金、発射された熱線が何処へ行ったかを目視することはできなかった。
銃が手を離れ、地面に落ちる。
その音を遠く聞きながら、崩れるように座り込んだ]
─集会場・広間─
大丈夫。俺の方には来なかったから。
[一度横に首を振って頷く。
無機質な音声には一瞬だけ眉を顰めた]
…なら、医務室に行こう。
痛くないわけは、ないだろ。
生きてるんだから…。
[やんわりと止める手に眉を寄せて言った。
それは残酷な言い方かもしれなかった。けれど生き残った者には生き残った者の為すべきことがあるはずだと]
―集会場・広間―
[弾自体は外れたようで、けれどそれに抉られた傷は深い。
熱を持つ傷を押さえる指の隙間から血が零れて行く。
下唇を噛んで痛みに耐えながら、意識の外にあった銃弾の元を辿れば、そこにいた人物は]
……。
[己よりも多量の血を流して倒れていた]
―集会場・広間―
[レッグに怪我はないと知れば、良かった、と微笑み。
医務室に行こうと言われると、自分には必要ないと首を振り]
私は良いわよ、本当に…
これくらい、平気。
[それでもハンカチを手に握らされれば、むげに断ることも出来ず感謝の言葉を向けて]
─集会場・広間─
[兄がメイドに、そして先輩達に話しかけてゆく。
その内心は知らない。けれど場を冷静に取り仕切るような、撃った者撃たれた者の間に混乱が起こさないよう気を使うような言動は、流石警察官だと賞されるだろうものがあった]
…分った。これ以上は言わない。
[短い黙祷を終えると、司書に向けて*頷いた*]
―集会場・広間―
[無機質な機械音声は、目の前の人の名を呼ばない。その事が、自分でも驚くくらいに痛かった。
主の声は聞こえたが、逸れに応える事はできず。
次に届いた『無理』という言葉には、びくりと身体が震えた。
促すような言葉にようやくのろのろと立ち上がり、まだ温かな同僚の身体を正面から抱えるように肩に乗せる。上手く抱えることが出来ず足はひきずってしまったが。
広間に残った人らに何を言う事も出来なかった。
空き部屋に運ぶと、寝台に横たえる。主の手伝いは拒んだが、頑として受け入れられなかった。
シーツを胸までかけ、傷口は隠す。
それで、出来ることは、おしまい。]
……………さっきまで、生きてたのに。
[寝台の隣に立ち、二人でジョエルを見ていた。
自分の服は血で染まったままだったが、拭うこともしなかった。]
―集会場・広間―
[誰かが倒れていると、認識できたのはそこまでだった。
視界がぐらりと揺れる。
首はかくりと後ろに曲がり、天井を仰ぐ。
遠く近く安定しない聴力は、無機質な音声だけを拾い上げた]
まだ――……
[うわ言のようなその先は紡がれず。
パトラッシュか、もしくは他の誰かの案ずるような声も届かず。
仰向けに倒れ込むその直前、意識を*落とした*]
―翌日・集会場入口―
[兄の姿を探していると、風が何かの臭いを運んできた。
昨夜も嗅いだのと同じ鉄錆の臭いを]
…ラッシュ!?
[ぐったりと伏せている身体は全体に黒っぽい色をしていた。
思わず止まってしまった足を慌てて前に出す。
近寄れば深い傷と共に焦げたような痕も見えてくる。
そしてピクリとも動かない]
一発だけじゃない。
完全に動かなくなるまで撃ち込まれたのか。
それに、この火傷はどうにも不自然な付き方だよな。
…殺られる前にってか。
だからって、こんな。ここまで……!
[強く唇を噛み締めた]
―集会場・広間―
[パトラッシュが個々に話し掛けているのを見。
彼が自分にはどのように話し掛けてきただろうか、銃を向けたことを言われれば緩く頭を振ることでそれを受け入れただろう。
そのことに触れられなくても、穏やかに話をして自分よりも他の人達を気遣ってあげてほしいとお願いした。]
―集会場・個室―
[暫く無言のままだったが。]
ぼっちゃま、お怪我。
治療、しないと。
[ようやく思い出したように主の方に気が行き、肩口の傷を治療しようとする。
平気だとでも言おうものなら、今度はこちらが頑として聞き入れなかった。]
道具、とってきます。
申し訳ありませんが、脱げるようでしたら、上着、脱いでおいて下さい。
[とつとつと呟き、血塗れた服のまま医療室へ向かうと、そこから消毒液と包帯の入った箱を手にし戻り主の肩口の治療をした。
小さな羽根の塊は一部血で赤くなり。それは先ほどジョエルの血黙りにおちた羽根を思い出させた。]
―集会場・広間―
―…ありがと。
[レッグが医務室へいくことを無理強いしないでくれるのを、泣きそうな笑みで礼を言い。
手渡されたハンカチを赤く染めながら頭から流れる血を押さえ、自分が命を奪った男性が運ばれていくのを目をそらすことなく*見送った。*]
―翌日・集会場入口―
[傷口はお世辞にも綺麗ではない。
マグナムの威力は拳銃でも熊をも殺せるほどなのだ。
そして所々焼け焦げた毛並みは…無残さを強調していた]
殺したくはなかったけど。
死んでる所も見たくはなかったよ…兄さん。
[そっと頭を撫でてその場から立ち上がる。
毛布を取って戻ると包み、ゆっくりと抱き上げた。
移動の途中で誰かとすれ違うことはあるだろうか。手伝おうと言われても首を振り譲ろうとはせず]
ラッシュが殺された。
サイキッカーは時間以外にでも手を出すつもりらしいな。
[手を緋に染めて取り乱すようでもなく淡々答える姿は、相手にどう映るだろうか。一斉時間の前、最後の語らいに使った個室に入ると、そうっと寝台へと横たえた。
やってくる者には追い払いこそしないが警戒の視線を向け、説明を請われた時だけ平板な声で自分の見た状況を*伝えるだろう*]
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