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[何か言おうとしてぴくりと跳ねるQちゃんの身体。
ん? と見上げると同時にドアの向こうから聞こえる声。]
ん? その声ってユーゴ?
[何だろうと玄関に向かいガチャッとドアを開ける。]
こんな時間にこんなところに何の用?
[ここは男子禁制の女子寮。
ああ、そう言えば本来のヒサタカがここに入ってこれるわけがなかったのか、と今更。
主にヒサタカの度胸という点で。]
[ 扉の先には、ポケットに手を突っ込んだ気怠けそうな姿。
どうやって入り込んだかと言えば、
ケイコに教えて貰った場所をちゃっかり悪用して ]
ちょいとな、鵬谷の件で話があって。
アイツもこっちいるんだろ?
[ ひょい、と中を覗き込もうと。
当の少女はと言えば、怯えを含んだ色を見せている ]
─屋上─
[ふわり、と舞い散る紅の光。
こうやって出てくる度に、出入り口を増やそう、と思いつつ忘れているのはなんなのか]
……っつーか、俺の場合は入るのはどこからでも出来るのに、出るのはここだけって、一体どういう事なんだよ。
[陣の内部を調整した者の影響、だとかは知らない。
ともあれ、意識を済ませて『音』を放つ。
空間を渡り、目指す先は瑞雲神社]
─瑞雲神社─
[ふわり、光を散らしつつ、現れるのは境内。
戦いの場となったそこには、微かに気の乱れが残っていて]
……木……と、金、か。
都合よく、相殺できるな。
[低く呟き、一本桜の下に膝をついて、目を閉じる。
短く放たれる『音』に応じて開くのは、五色の翼。
……完治していない傷が一瞬痛んだのは、置いといて]
……過剰なる木気、我が内に宿りて火気となり。
……過剰なる金気、我が火気の前に鎮まり給え。
[呟きの後、放たれる『音』。
力と力が巡り、正しき流れを取り戻してゆく]
[ユーゴがいることに首を傾げたりしていたが、その言葉にぴしり表情が固まる。]
…………ヒサタカの?
それにアイツ…………って。
[中を覗き込むユーゴにちらりと背後を見て、Qちゃんが怯えているのを見ると]
…………あの子をどうするつもり?
[キッと睨む様な視線でユーゴを見る。]
へー。
案外、可愛いモンなんだな。
[ 睨みつけられて体勢を戻す。
さして意に介した風もなく、受け流す碧眼は揺るぎない ]
なんもせんよ。今は。俺も“そっち側”なんで、ね。
[ さらり、己の所属する側を明かす ]
ただ、桂はどうすんのかなって。
さっきの口振りだと、もう、やる気ないみたいだけど。
鵬谷が天界に反発してたのとか、
向こうがソイツ放っておくわけないとか、考えねえ?
[ その場にいなかったはずなのに、
発される台詞は、あたかも全てを知っているかのよう ]
……っと。
[そこに立つ者──自身の母の姿を見た瞬間、自然、居住まいは正された。
大丈夫なの、と。投げられる短い問いに、一つ頷いて]
まあ、色々とややこしくなっちまってるけど。
でも、大丈夫だから……心配いらない。
[静かに答えて、笑って見せる。
向けられる表情がどこか不安げなのは、恐らく一見してわかる、動きの鈍さのせいだろう]
ああ、従姉殿も大丈夫だから。
九条院の方にも知らせといて。
[そこを追及される前に、と早口に言い置いて。
じゃ、やる事あるから、と言って、幾度目かの転移を行う。
後に残るのは紅の光と──呆れたような、*母のため息*]
……そう。
[じろじろと品定めするようなユーゴの視線からQちゃんを隠しつつ、『そっち側』という言葉に完全には解かないものの警戒を緩める。
だが、続いて問いかけられた言葉に、]
…………そ……れ、は。
[言葉に詰まる。
サキは見逃してくれていたが、他の四端や天までもが金毛九尾のQちゃんを見逃してくれる保証は何もない。
その動揺は、容易にユーゴに読み取られるか。]
ソイツ単体じゃ、戦えないだろうし。
[ 悪しき心が排された今となっては、尚更。
再度一瞥して、マリーを見やった ]
そも、鵬谷を浄化したとて、
確実に還してくれるとも限らないわな。
お上の意向とやらは知らんけど、仮にも、魔に憑かれた人間だし。
こんな無茶苦茶な事やらかす奴らが、そう簡単に赦すかね。
[ “相方”を心配するように眉を寄せ、首を傾げてみせる ]
まあ、やりにくい相手もいるだろうから、全員とは言わない。
頭さえ潰せば、十分だろ。
[ユーゴの言うことは、まさに彼女がヒサタカが天魔だと知ったときに懸念していたことで。
俯いて、反論も同意もなくその言葉を聞いていたが]
…………ちょっと……考えさせて。
[そう言って、ドアを閉めようとする。]
――ちなみに。
[ ガツ、扉の閉まる前に、足を入り込ませ押し留める。
狭められた間から見える碧眼は、酷く冷えていた ]
今は、「お願い」に留めておくけど、
聞いて貰えんときには、こっちもそれなりの手段に出るんで。
ソイツには最初に会ったとき、“印”つけてる。
[ だから、此処にいるのがわかったんだけど。
そう、言い添えて ]
仮にも魔だし、相性の分、簡単に消えたりはしないだろうが、
痛い目くらいは見て貰うんで――宜しく?
……じゃ。
夜分に失礼、おやすみさん。
[ ――佳い夢を。
瞳の温度とは対照的に、一瞬、笑った口許は見えたか。
足を引き抜いて、此方から扉を閉める。
* 音もなく、気配は遠ざかった *]
[閉めようとするドアの隙間に足を滑り込ませて向けられる酷く冷たい碧眼と告げられるある意味の人質宣言に、こちらはキッと仇を見るようにユーゴを睨み付ける。
動じた風もなく、むしろ一瞬口許に哂いを浮かべたユーゴがドアを閉めて遠ざかっていっても、暫しドアを睨み続けていたが]
…………チクショウッ。
[ガンッとドアに拳を叩き付け、忌々しげに呟く。]
[俯いていた彼女の腰辺りを後ろからギュッと抱きつかれて、我に返り振り向く。
そこには、震えながらもフルフルと首を横に振り、こちらを心配そうに見上げているQちゃん。
ふー、とひとつ息を吐くと優しい微笑を浮かべ]
……大丈夫。何も心配は要らないから。
[振り向き、こちらからもキュッと抱きしめてあげる。
胸に顔を埋めたQちゃんには彼女の何かを決意した顔は見えなかっただろう。]
─『隔離の陣』→学校屋上─
[宙に舞う黄の粒子。その中から姿を現し、屋上へと降り立つ]
…ダメージ自体は、どうにかなったかな。
そんじゃ行きますか。
………直しに。
[盛大な溜息が出たのは言うまでも無い。先の戦いで住宅街のアスファルトが剥がれたり電柱に穴が開いたりしていて。大騒ぎになる前に修復しなければならない。騒ぎになっていないことを願いながら屋上から降りて行った]
[頭を撫でてあげていると、いろいろあって疲れが溜まっていたのだろう。Qちゃんが舟を漕ぎ始める。その様子に苦笑いを浮かべると]
ホラ。ワタシのベッドを使っていいカラ、寝てなさい。
[そう言って、手を引いて中へ。
ベッドに入ってしばらくも経たないうちにQちゃんはすぅすぅと寝息をたて、眠りに落ちる。
ギュッと握られた手のぬくもりに優しい顔を浮かべていたが、そっと絡まった指を外し部屋の外へ。
玄関から出る際、わずかに振り向くと]
…………ゴメンネ。
[ポツリとそう呟き、パタンと扉を閉める。]
[校舎から校庭へと抜け、中心で一度足を止めた]
…もちっと、貰っておくかな。
どうせ均しで使っちゃうし。
[学校は結界の中心。即ち土属に類される。均しに使う分だけ、土地の力を借り受けようと。瞳を閉じ、しばし集中を続ける]
─学校─
[目的の人物がなんとなーくで学校にいると判断した彼女は夜の学校を歩いていたが、目的の人物はグラウンドの中心に立って目を閉じていた。
一瞬躊躇するが、すぐに意を決すると]
……サキ先輩。こんばんわ。
[そう声をかける。表情はほんの僅か硬くなったままだったか。]
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