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[強い力で首をしめられて、一生懸命もがいても、だんだん苦しくて訳がわからなくなってきました。
それでもあがいてあがいていたら、突然、ぷつんと糸が切れたように、
少女の動きが止まりました。
「……ない」
真っ白な肌でした。
真っ赤な口唇でした。
髪は長くて、人形のようでした。]
[枝の根元に刺さった矢に目を止め、地上に視線を戻す]
こんばんは。
[マコトの挨拶に応えてから、アーチェリーを持ったウミに視線を移した]
………あの矢は、君のか?
[広い校庭に、明かりは無い。
寮までの短い道を、小走りに駆けていく。
振り返ったら何かに追われているのでは無いだろうか
道の脇の植え込みは実は得体の知れない生き物なのでは無いのだろうか。暗闇は無闇に恐怖を助長する。
徐々に速度を上げる。]
―昼・自室―
[ルームメイトは帰省し、一人きりの部屋。]
[昨夜見た夢は彼女を安らげるどころか疲れさせるだけで。気だるさが離れず、ベッドの中から這い上がれないまま無駄な時間が過ぎていった。]
くだらない……たかが夢なのに……。
[天井へと手を翳し。]
私に掴めるものなんて、何もない、かな……。
えっ、あ。
[フユの強い口調にたじろいで。
どうすればいいか戸惑っている間にその背は遠ざかってしまう。
それから気が付いた人物には生憎と見覚えが無く。
とりあえず先輩らしいと思って頭を下げた]
こんばんは。
伝説? ああ、桜の幽霊だとか何とかって奴か
まあ真偽はどうあれ、あまりビビっていると関係ないものもああいう風に怖く見えますし、むしろその方が逆にそういうのが集まって来やすくなっちゃいますよ
[マコトの言葉には流し目を向けてニヤリと笑うと]
承知の上だから射ったんだよ。あれが避けれないようじゃあマコトももう駄目だろうし
[悪びれずそう言い放つ。マコトを睨んだ後立ち去っていくフユには]
まあ、八つ当たりはみっともないですから程々にしといた方がいいですよ
[そう言ってみたり。そこでヒサタカの存在に気づき]
おお、いつの間に。気配が読めなかった
[とびっくり]
[月の下、桜の花が少女の上に散っています。
だけれど彼女は、咳き込みながらも後ずさって、走り出しました。
少女は追ってきません。
ただ、ただ、ないと呟くばかり。
恐怖のあまりに、彼女はそのことを、あまり覚えてはいませんでしたが……]
…れ。
[何気なく遣った視線が寝転がる小柄な影を捉えた。それを見て洋亮の中で思い当たる人物といえば、それを口にすればまず怒られるだろうが。]
イチ君じゃん。
[二階からの声は届くだろうか。]
[バタンッ
大きな音を立ててドアが閉まりました。
心配そうな顔で彼女の親が出てきて、ぎょっとします。
「何、それ。どうしたの?」
「なに、が……?」
指されたのは首でした。
おそるおそる、鏡をのぞいてみると]
[西に男子寮。東に女子寮。
共用設備棟が間を繋いでいる。
建物の形作る”コ”の字の中へ駆け込んで息をついた。
玄関の扉に手をつき、暫くそのままの姿勢で呼吸を整える。走るのはいつ以来だろう。]
[ひとしきり、ヒサタカの大きさとかぼけーとしてるとことかこれがウドの何とかかとか色々観察していたが、ヒサタカからの問い掛けに自分の右手の弓をチラリと見ると]
……そうですけど
[短く単刀直入に返答]
うー……。
[やっぱり苦手だなあ、と。
走り去るフユを見送りつつ、心の奥で小さく呟いて]
わかってて、ってねー。
……っとに、もう……。
[ウミの言葉に、はあ、とやや大げさにため息をつく。
この明度で的確に狙ったところに当てる、その技量には感心するものの、狙われた方としてはやはりたまったものではない、らしい]
的以外に矢を立てるものじゃない。
練習は射場で終らせたまえ。
[ウミの返答を聞くと、珍しく(なのは、彼女は知らないだろう)淀み無い口調で言った]
んー?
[頭上から振って来た声に顔を上げる。
流石に視認までは出来ないが、聞き覚えはあり]
その声、スケさんー?
…って、うおっ
[物凄い勢いで駆け抜けていく何かに、思わず叫び]
なーんだ、ありゃ。
[立ち上がって砂埃を叩きつつ、
人影の去って行った方を見遣り、首を傾げた]
[それから、彼女は決して夜に、一人で出歩かなくなりました。
たまにうわさが聞こえてきます。
「〜〜さんね、なんだか家出したんだってー」
「なんか親が捜索願出したらしいけど見つかってないとか」
「イイオトコでもできたんじゃない?」
「うっわぁ、興味なさそうなのにやるぅ」
――行方不明になった少女たちは、その後も決して見つかることはありませんでした。
そして彼女たちは、全員、
彼女と同じように黒い長い髪、でした。]
えと。
あの方はどなたでしょうか。
[大きな姿と強い語調。
先刻見間違いに驚いたばかりでもあり、直接声を掛けるのは怖いと思ってしまった。
こっそりマコトの方に近付くと、小さな声で訊ねる]
まぁさー
怖い話なんてただのツクリバナシなのにどうしてこわいんだろーねー?
[妙に怖がっていたテレビの中の女優たちを考えて。
当然、宿題に手なんてつけていない。]
……こっちの方が怖いなぁ!
[Pi───、
甲高い電子音で、出来上がりを知らせる電子レンジに
バラエティ番組へ向けていた意識を切り上げる。
プラスチック製のフォーク(コンビニで買ったときに付いてきた)を
ビニール袋から破いて取り出しながら、電子レンジからパスタを取り出して。]
おー、美味そうに出来た。
……っとと、おんやぁ?
[共有スペースの入り口から、僅かに見える
寮玄関のすりガラス越しに人影が映るのを認め、緩く首を傾ぐ。
生徒ならばその内に入ってくるだろうが、
暫く動かないその人影に、微妙にいぶかむ視線を向ける]
[ヨウコの問いに、え? と言いつつ一つ瞬き]
ああ……留学から帰国して、二年に編入した、天野久鷹さん。
夏休み前に戻るはずが、事情で遅れてきたらしいよ?
[とりあえず、姉情報はすっぱり切り離して、簡単に説明を]
[だけれどまあどうにもならない。
あとで誰かのをうつさせてもらおうかなーなんて考えながら]
うーん
何かたべられるものないかなーお菓子とかお菓子とか
……太るかなぁ
[呟きながらも部屋を出て下へと]
[壁際から離れて、玄関の方へと足を向ける。
その姿は、制服ではないものの、見慣れたもので]
フユっちじゃん。
どうしたんー。
[背後から声を投げかけた。]
[”すりガラス越しの人影”は消え
フユは、声の掛けられた方へ。]
[滲んだ汗で、額に張り付いた髪をかきあげる。]
ああ、ショウ。
アンタ今度は何してんの
当たりー。
何してんの、んなとこで?
[返答が来たことで自分の認識が間違いでなかったことを知る。相手からは見えないかもしれないが、へらっと笑みを浮かべた。]
あー、んーと。確かあの人だ。ミ…じゃなかった、フユさん。
どーしたんだろ、何か慌てて。
[そういうタイプには見えないのにと、また名前を間違えかけながらも首を捻った。]
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