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[エーリッヒを見つめていたのは数秒、わざとらしく息を吐き出して、ユリアンへと視線を滑らす。
行かない、とのイレーネの言に理由は想像出来たか、重ねて何事かを言う事はせず、「そう」と短く言を返したのみで]
行き倒れる前に、宿まで行ったら?
[心配そうなイレーネと交互に見て、提案した]
ええ、そこが一番大切です。
[酒場の新しいメニューの話など、他愛ない会話が弾む]
では置いてきてしまいますね。
[一言断り診療所の中へ。数分もすれば戻るだろうか]
[ユリアンの様子に、大丈夫なのか、と思いつつ]
ああ。
さすがに、それを忘れたら怒られるから。
[アーベルの言葉に、軽く肩を竦めつつ言って]
俺の仕事は、「目に見えないもの」を追いかける事だけどね。
……というか、何が言いたいのかな、君は。
[一応わかってはいるが、ややジト目になって聞くだけ聞いてみた]
[考え事しながら歩いていたら、なんとなく、店が集まっている方向へ歩いていたようで。
そこで、普段あまり見ない姿を見つけた]
うお。
あそこにいるのは、ユーディットさんじゃない。
[手を振り、大声を出しながら近づく]
おーい!
ユーディットさーん!
略して、ユーディーさーん!
[あまり略されてません]
ん………。
ちょっと、寝てないだけ。
[見上げてくるイレーネに状況を端的に伝えて。
それから思い出したようにポケットに手を突っ込んだ]
…そうだ。
これ、イレーネに。
[引っ張り出したのは小瓶にチェーンを括りつけたもの。
小瓶の中には水と、その中で漂う乳白色の小さな宝石。
宝石が動くたびに、キラキラと何色にも輝いた]
俺は生憎、自分の目で見た事のないものは信じないので。
[芸術家とはまるで意を異にする上、教会から出て来た者とも思えない発言。
ジト目を向けられても、平然とした顔。同じ親から生まれた姉弟で、どうしてこうも違うのか――そんな印象を持たれても、仕方がない]
……御自身の想像力を働かせてみたらお分かりになるかと思います。
[わざわざ丁寧な口調で言い退けた]
[さてそろそろ帰ろうか、と踵を返しかけた瞬間、自分の名前を呼ぶ声に気付いた。
辺りを見回しかけて、前方から手を振り近づいてくるその姿に、すぐ声の主を理解する。]
あら。
[夕陽の赤に彼女の髪の赤が流れて、ああ綺麗だな、なんて思いながら。その声の主の言葉にくすくすと笑う。]
こんにちは、ミリエッタさん。えっと、……略してミリィさん?
[冗談めかして真似っこして返し。]
珍しいですね、こんなところで。
お買い物でも頼まれたんですか?
うん、まってまーす。
[診療所の中に入っていくオトフリートを見送り、しばし外で待つ。
ふと空を見上げれば、きれいな夕焼けの色。
ゆっくりと日が落ちていくのを眺めながら、オトフリートが戻ってくるのを待っていた]
[意識に留まったのは、ユリアンのぼけっとした返事より、その挙動]
さて、と。
まだ行くところもあるので、失礼しようかな。
お客様方、当店にてごゆっくり。
エーリ兄も、程ほどに。
[確りと二人の遣り取りを横目に見ながら、おざなりな挨拶と、エーリッヒに対しては意図の読み取り難い言葉――それは彼の癖であったり、それ以外の事であったりするのだが――を投げ、歩みだす]
< 白猫もまた、尻尾を揺らしてから、*その後を追った* >
……相も変わらず、現実的ですこと。
[ぐしゃ、と金の髪を描きつつ、大げさなため息と共にこんな言葉を吐き出す。
昔から見知った相手ではあるが、こういう所は反りが合わない、と妙にしみじみ思ってしまう]
……端的な解説、ありがとう。
[丁寧語の返答には、低く、こう返して]
お買い物は頼まれてないかな。
絵画モードになってるときは、訳の分からんもん買ってくるって、両親が覚えたみたいで。
おかげで楽してます。わはは。
[何故か、胸を張って言い放った]
ユーディットさんは、夕げのお買い物?
毎日毎日、大変よねえ。
献立考えるのもそうだけど、放蕩癖のあるご主人様が、ご飯食べてくれないんじゃないかってことまで考えなくちゃいけないんだから。
今度、無理矢理縄で縛って家に拘束してみるといいかもよ?
[にひ、と笑う]
あ、そっか。作ったものを、他の人にも分かってもらわないといけないんですよね。
難しそう…。
[そういった漠然としたものは理解しずらい。
もっとも理解するものではなく感じるものなので、分かり難いのは当然なのだが。]
[アーベルの言葉に頷いてよいものか、ユリアンの方を見て。寝てない、には微かに表情を曇らせた。]
そんなに大変だったんだ。…今日はちゃんと寝ないとね。
えっと、なあに?
[取り出されたものに一瞬、何だろうと目を瞬かせ。
それが小さなオパールだと気づくと、わぁと、小さな溜息のようなものをついた。]
綺麗…。あ、でも。いいの?
[工房で研磨したものだろうというのは分かったが、それを自分が貰ってもよいのか、一瞬躊躇う。]
ふぅ。
[首を振る。後ろで無造作に束ねた髪が大きく揺れた]
お待たせしました。
それでは行きましょうか。
[扉を開け、茜色に染まった空に目を細める。
ティルに視線を戻すと、促すように声を掛けた]
村の設定が変更されました。
……程ほどにって、何を。
[何となく、言わんとする所はわかるものの、一応、立ち去るアーベルの背にはこう突っ込んでおいた。
勿論、返答があるとは思っていないが]
ああ、そうだね。
創り手としての俺と、受け取り手としての周囲と。
ここに行き違いがあると、思うような評価は得られない。
評価を気にしなくてもいいんならともかく、『仕事』として成り立たせてる以上は、そうも行かないしね。
[イレーネに向き直り、返す言葉はやや苦笑交じり]
難しいのは確かだけど、好きでやってる事だから。
気にはならないよ。
…親方に飯持ってたら、寝るよ。
飯は食いたいし。
[この状況でも食欲はあるようで。
食べる前に寝潰れる可能性は否めないが、今は戻るつもりは無いようだ。
取り出した小瓶をイレーネへ手渡し]
…ん。
イレーネに、似合うと思ったから。
……本当はちゃんと加工してネックレスに出来れば良かったんだけど。
[そこまではまだやらせてもらえなくて。
「…この状態で悪いけど」と付け足した]
絵画モード……。じゃ、今は芸術家の散策ってとこかな?
[うちのご主人様みたいに、と付け足す。]
何かに打ち込んでると、他のことは気が回らなくなるんですね。わかります。とっても。
[大きく頷いてみせて]
……特に、ミリィさんのご両親の気持ちがね。
[くすり、と笑う。]
ええ、お夕飯は毎日作らないといけませんしね。作るのは楽しいからいいんですけど。
まあ……でも、エーリッヒ様はそういう方ですから。
仕方ないですよ。
[肩を竦めつつも、そこにあるのは柔らかい表情。提案には、ふと考えるように宙を見上げて]
……縄で縛っても、あの方、いつの間にか抜け出してるんじゃないかしら。
[ふるふると首を振って。小瓶を両手で受け取って、そっと握り締める。]
ううん、嬉しい。
[その後に微かに唇が動いたが、声にはならなかった。]
ありがとう、大事にする。
似合うかは…わからないけど。
[それくらい、水の中をたゆたう小さな宝石は美しいと思った。
暫く握った後、鎖をといて首に回し着けようと手をもたつかせた。]
芸術家の散策。それだ!
うん。さっすがユーディーさん。分かってるう。
[満足げにうむうむと頷く]
そう頭が回らなくなっちゃう。
昔、じゃがいも買ってきてと言われたときに、間違ってドリアン買ってったことあるらしい。
「臭え!持ってたお前の体も臭え!」って、言われたときはショックだったなあ。乙女に言うセリフじゃないよね。あれは。
[間違ったほうが悪いと言う考えはないらしい]
そかそか。作るのが楽しいか。
私が絵を描いてるのと同じ感覚なのかな。楽しく出来ることはよきかなよきかな。
[最後のセリフには、眉根を寄せて]
……うーん。あやつなら、ありうる。
いっそ、鞭とかで打って調教するほうが早いような気もしてきた。
[こちらも真顔]
―ささやかな新居―
お帰りなさい、フランツ。
[汗と土で汚れた逞しい胸板に飛び込んで。
結ばれてからもっと優しくなった腕の中に身を預けるこの一時が最も幸せな時間。
あまり無理をするなと言ういたわりの言葉もうれしくて。]
心配かけちゃってごめんなさい。
…ううん、大丈夫。
お医者様もね、安定してるなら適度に働いた方がいいって。
[あまり遅くならないようにすると言い残し、実家へと。]
[仕事についてはこくりと頷く。
お金にさほど執着はないが、その価値と必要性は彼女にも理解できていた。]
思うままに作ったものが評価される事が、一番良い事なのかも。
…好きな事を仕事に出来る事は幸せな事、なんですよね。
[ふと、幸せの定義を一つ、見つけた気がした。]
[重い溜息を吐いて立ち上がった。
机に残された伝達書簡の最後にはこう記されている]
『場合によっては全員を対象とすることも在ると心得られよ』
[表に出ると硬い表情で呼び集めた団員に指示を下してゆく]
荒唐無稽と思うかもしれないが、太守殿も冗談でこのような規模の行動をされたりはしないだろう。
[団員の間にピリリとした空気が流れた]
該当者には私が話す。
皆は他の村人達がパニックを起こさないように動いてくれ。
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