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[施療院を出て、屋敷へと向かう道を辿りかけ、けれど視線は結界樹の方向を向いた]
あの中に…いるんだよな。
見にいきたいには見にいきたいが…確か羽根が無いと、側までは行けなかったんだっけか。
いや、まあ…泳ぐと言う手も有るし。一応向かってみるか。
[歩む向きを変え、足は結界樹へと向かう方角へ]
……恐いなどとよく言えたものだ。
面と合わせて舌が二枚あるのではないか。
[睨むままに短く問う。]
この騒ぎが起こってから随分と結界樹周りでお前の姿を見る。
………何を企んでいるんだ?
[返される瞬きには、ぎこちない笑顔を返し]
……うん。
自分に、できること、精一杯、する……
……後悔、しなくてすむなら、それが……一番、いいね
[リディアの顔が脳裏を過ぎ、遠い目をする。エリカの歩調に、置いていかれないように少し早足で]
……かれ?
[誰のことだろうと首を傾げ、足を速め、エリカの前に出て、顔を仰ぎ見る]
[一度倒れた姉貴分の言葉はいまいち信用できず、かといって言っても無駄な気がして。やや恨みがましい目で見るにとどめただろうか]
そうか。ならばいいけれど。
うん。ラス、家の事もあるだろうにわざわざ探しに行ってくれたみたいなんだ。ネロが結界樹で会ったと言っていた。やっぱり行き違ったままなんだな。
[そしてもうひとつ、大切なことを思い出す]
そう、それとエリカも施療院を出て行ったみたいなんだ。……アヤメ、行き先を知らない?
おや、二枚舌とはひどいもの。
俺がこわがっているかどうかなど、鷹目殿にはわからないでしょうに。
[くすくすとわらうのは、どう見てもその感情ではないが。
狐は彼を見る。]
なにも。
――信じるかは知らないが、俺はなにもたくらんではいないンですよ。
[くつり、くつりと、哂う音。]
なかなか愉しい場所だと思うだけですからねェ
[伸ばされる手、ラウルはそれを避ける事無く]
アタシが行った後で?
そう、か……んじゃ、後で謝っとかないとだね。
アイツは、色々と抱え込んでるから……アタシには、気ぃ回させたくないんだけど。
[ネロとカレン、それぞれの言葉に小さくため息をついて]
……エリィ? いや……アタシは一人で出てきたから。
[すくと立つと、目を細めて空を仰ぎ見た。
口に歪な笑みはもう無く、ただただ何も無いがらんどうの表情。
ふと背を見ると、気が抜けたか薄金の羽根は闇色とのまだらになっていて。
自嘲気味に笑いながら一度揺らすと、それは再び薄金へと戻った。]
…さ、てと。
[組んだ手を挙げ、大きく伸びる。]
ああ、捕らわれた者の話。
巫女の次が、何故、その付き人かということ。
[眉は寄り、眼は少しだけ、遠くを見る。
己より前に出られれば、自然と歩は緩んだ]
単に力ある者を潰すのならば、他にもいたはず。
それに、虚は、負の感情を糧にする……
彼に、なんらかの縁故のある者、と見るのが妥当か。
[顔を上げる。
その先に、人の姿が見えた]
………わらっておいてよくも言う。
[憤りのまま、胸倉を掴もうと爪を伸ばす。]
……楽しいだと。
巫女が封じられ、堕天尸が暗躍するこの現状をか?
― 広場 ―
[ 僅かに人がいる広場。
昨日はここでリディアが封じられた。]
………会わない日は多いですが。
寂しい…ですね…。
[ 先ほどのあった長老の顔を思い出すと腹立たしい。
あの場で罵ってやろうとでも思ったが、気が引けた。]
……さて、これからどうしましょうか。
嗚呼、そういえば。
森で見つけた、アレ、の話をするのを忘れていました。
どうしましょうか。
[ そう言うものの、戻る気にはあまりなれず。]
あは。うん。色々抱え込んてるね〜。…でもそれは、アヤメも一緒じゃないのかな。
あはははは
[ずりずりごりごりと楽しそうに地面に丸太を擦り付け]
そう、エリカから鳥の名前まだ聞いてない〜。
…あれ?
[とラウルを撫でながら、見えた人影を見て首をかしげる]
っと……
[避けなかったのか、避けられなかったのか。
胸倉を掴まれて、狐は少し苦しそうに息を吐いた。]
誰もそこまでは言わなかったが。
そう聞こえましたか。
[それでも狐はわらう]
あの中に人がいるという事実が、どうもおかしくてねェ。
そして――
たしかに、俺は、この状況も愉しんでいますよ
[村から結界樹までの距離は相応にあって、その途中で昨日の本来の目的であった人目に付かなさそうな場所を探す。
けれど、何も無いままに、結界樹の下に広がる湖まで辿り着いてしまい、]
ついてないと言うか、なんと言うか…。
向こうに人影があると泳ぎにくいよなぁ…。
[湖の向こう、結界樹に立つ誰か、に視線を送る]
そうだな。ラスはいつも、親切で、いい奴だ。
ん。アヤメが会って一言言えば、きっとラスも安心する。
[エリカを知らない、という言葉にはうーんとうなり]
そうか。……もう少し、探してみようか。いそうなのは森の中か、結界樹のあたりだろうか。
……そう、だね。巫女と、付き人。
ジョエルさんが封印、された理由……
[眉を寄せ、口を尖らせるようにむー、と唸る]
ジョエルさんと、縁故がある、人……?
……誰、だろう。アヤメさんか……ラスさん?
次もあるの、かな……?
[首を傾げ、エリカの視線が止まれば、そちらへと向く]
[蓋のしたで、その憤りに、やみがどろりとうごめいた。
それは虚というには少しちがうもの。
面の上まではそうそう――簡単には伝わるものではないと狐は思う。
伝わったとて、その傷を見たならば、意味はわかるだろう。
これが、狐が受けた憎しみの傷だと。だからこその、やみなのだと。
ゆえにあわてることもない。]
……どうかな。
ただ、次もあるとは、思う。
[挙げられた名。
少しだけ、躊躇いが滲む]
正と負は、遠くて近しいから。
[呟くように言って、
視線の先にちょうど、その片方――世帯主の姿を認め、またたいた]
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