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[ダーヴィッドに視線だけで頷いた。]
ユリアン。
体力を消耗するからしゃべるな。
[と言いながらも、何時もの調子が聞こえるうちは、焦燥に駆られてのミスをせずに済むのかもしれない。
埋もれていた蛇が足首に絡み付こうとする感触にぞくりとした時、入口が近付いた。待機しているライヒアルトの姿。]
……、
は、ライヒアルト。
続きを 頼む。
[ノーラの視線を追って切り傷に気づく。]
ちょっと待ってね。
[救急箱を開ける。消毒薬を見つけた。]
大丈夫かな。
[フタを開けて匂いを嗅ぐ。大丈夫そうな気がするが。]
[男に、ゆっくり手を伸ばす。手のひらを、上にして
視線は、うろうろさまよって。
行き着く先は、彼の手の中の、注射器]
めー てー あー
[睨む男に、払われた手を握って。
苦しげに、眉を寄せる…咳が、零れた。]
――…薬を、打たせてくれ。
[そうすれば、そうすれば。
数値が下がる…症状が軽くなれば、
彼だって喋れるようになるかもしれない。
そうすれば――…咳、揺れて、目の焦点が少しぶれる。
ポケットに入った首輪。
アリスの名からカルメンを連想することはできなかった。]
[ピューリトゥーイ。メモに書いてあった名前。放送で聞こえてきた言葉。ああ。あれはそういう意味だったのかと思い当たる。それでも]
それでも、きっと違うわ。
先生は、優しかったもの。
今の手の温もりだって、変わってないもの。
だから、違う。
言葉がわからなくても、先生の優しさは、今も変わってないのよ。
[アーベルの呟きが耳に入る。誰の、と言われて。千切れた跡。誰かの死を見てきたのだろうかと、思った]
[無事に戻ってきた様子に、ゆっくりと立ち上がる。
続きを頼む、といわれれば、一つ頷いて]
……なるべく、部屋の入り口から、離れて。
風のある方に。
[場のいる者への指示は淡々と。
そんな様子はやはり、『園芸家』らしからぬもの]
……そういえば。
真夏に冷房壊れた時に、これをやるって言って。
全員に殴られてたっけな。
[容器に移した事で気化の始まる危険物をちらり、と見て、呟く。
思い出したのは、破壊的料理を作っていた同僚の事。
それを振り払うように軽く首を振って。
入れ代わるように部屋の中へと踏み込んだ]
迷惑…かけて、ばかりね。
…救急箱の中の物は、エーリッヒが
確認して大丈夫そうなものを入れていたわ。
[ユリアンにも、皆にも。後で謝らなければと思う。
強張っていた腕をだら、と落とす。]
[かさり]
[下した手が何かに触れた。紙だろうか。ポケットを探る。]
私たちの中の、誰かに投与された薬よ。
……悪趣味なことだわ。
[悪趣味――と。ゼルギウスへ向けてか、
そう小さく呟くのだった。
ガードシーカー――己のことをノーラはそう謂った。
いくつかのクスリの名を思う。
自分を抱くように、腕を組んだ。]
[首を振る。首を振る]
[注射器が封を切られそうになると、首を振る。
いらだつ]
[ただ、手は出したまま。
つかまれそうになると、鋭く奇声を上げて払おうとするけれど]
───クスリ。
[少しだけ表情が硬い]
[それはさっき打たれた薬の事なのか]
[問いかけるようにブリジットに向かう視線]
副作用───攻撃性。
[息を吐き出す]
[まだ、不快感が収まらない]
投薬───「された」?
[過去形]
[それは]
今の薬じゃ、なくて
[右の手がゆっくり]
[左の腕をさする]
[不快感]
[奇妙な]
[眩暈にも似た]
大丈夫で、す。
これぐらいで倒れる僕じゃないで、す。
それに、まだ、生きてるです。
手がかりを先に探してください。
[二人の手を振り払おうとした。
精一杯の力を込めたつもりだったが、どれぐらいの力が篭っていたかは定かではない]
[ナターリエが足に塗った液、冷たさも痛みもどこか遠い。]
…
[気になったのかその紙を開いてみれば長い間握られていたせいか色あせて文字も読みにくかった。
それでも目を凝らして、それを視れば――はっきりと文字が見えた。それが自分に投与された薬のせいだとは気付かないままそこに連ねられた文字を見る。]
『ファイル名:ゼルギウス
――― パスワード:Pegasus』
[書かれていた文字、その意味。考えて、沈黙を守った。]
[ノーラに大丈夫そうと言われて消毒薬を塗りながら。]
そっか、エーリッヒも頑張ってたんだ。
[小さく笑って。一番最初に手を差し伸べてくれた事を思い出した。あの時の事、謝りたくなって。でも後の祭りで。]
ユリアンも、消毒しよ。ちょっと染みるだろうけど。
[ノーラのが終わってユリアンをみた。]
[オトフリートの首振る所作に眉を寄せる。
こちらの苛立ちも表情に滲み出たか。]
[ただ…、ただ、護りたいだけなのに。]
[その為に作っているのに…]
…何故、薬を打とうとしない。
[そうすれば…助かるかもしれないのに。]
……何が、言いたいんだ。
[『どうせ助からない。』…そう言ったのは誰だったか。]
[議員とともにユリアンを運び出す。
そして、ライヒアルトの指示通り、屋上方面の床に彼を下ろした。]
ユリアン……まず、蛇、とるからな。
[足に絡みついたそれを一本ずつひきはがしていく。
蛇は血に染まっている。それは頭をつぶしたのもあるけれど……]
…………
[ユリアンの怪我の箇所を訊ねる。]
[中に踏み込めば、すぐに蛇の近寄る気配。
足元を確かめつつ、一つ、深呼吸をして]
どれだけいるのかは、しらんが。
……しばらく、大人しく、してろっ!
[容器の中身を、部屋の奥へ向けて文字通りぶちまける。
大気の冷えるのを感じつつ。
酸素が失われる前に、とすぐ、部屋の入り口へ取って返した]
先生に、打つのね?
なら、邪魔しない。
[注射を打つらしいと気づき、身体を避ける]
アーベルさん、大丈夫? 薬は打ったのよね。
気分、悪いの?
[アーベルの声から不調なのだろうかと心配して]
そのお薬、あのヘリから出てきたんだって、聞いたの。ノーラさんが、持ってきてくれたんだ。
[そのノーラの心配はなくなったようで、今までと変わらない糸がそこにあった]
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