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まぁ、ヘーキなら…いーんスけど。
無理はしちゃダメッスよー?
[目元を擦った相手に、不安も過ぎったが
無理強いする事でも無いし、と思い直して。
相手の返事に、りょーかい、と。軽く返事を返す。
と、続きかけて消えた言葉に、ん?と首を傾げるも
投げられたボールに、咄嗟にポケットに突っ込んだ片手を抜いた。
一度弾いて、今度は両手で受け止めて。]
…センパイの部屋っスね。
ういス、頼まれましたー、と。
[気をつけて下さいね、と。左腕にボールを抱えると、
ヒラリ手を振って。そのまま寮へと*足を向けた*]
ん。じゃなー。
[へらり、笑みを浮かべて見せて。
相手の返答に頷いて、裏庭へと駆け出す。
感覚はあるのに、何処か、*現実味がなかった*]
[ツインテールの女子の背をぼんやりと見つめ。]
死、ぬ………?
ばかばかしい……。
非科学的な現実が現実のはずないわ……。
[そうして、桜に歩み寄り、幹にもたれかかるように膝を抱えて座り込み、空虚の瞳で薄紅を見上げる。]
あぁでも……この桜は綺麗。
こんなに綺麗だったっけ?
[そうして、しばらくそうした後、*寮へと戻るだろう。*]
―明け方:自室―
[意識を失ってから数刻後。
まつげが震えて、どこか遠い目が開いた。
誰が運んでくれたのか、そこがだいぶなれた寮の部屋だということに気付く。
外はしずか。
ゆっくりと起き上がって、机へと。]
……
[家族五人の写真。
隣同士に並んで、笑った。
ぽたと、雫がそこに伝った。]
……だ、たったん、だよ
なんで、あやまった……の?
[答えなどない。
涙腺は壊れてしまったんじゃないかと思えるほどで。]
−昨晩/学校・裏庭−
[蝉の合唱も、梟の声も聞こえない、静謐な空間。
茂る草は水分をたっぷり吸い込み、頭を垂れていた]
…リュウ―――
[普段より小さな声で名を呼び、口笛を吹く。
いつもの合図。 けれど、反応は返って来ない。
住家は学外にあるから、夜は、いつもいない。
だから、当たり前。
それでも捜そうと、1歩、先へと進んで、
叢に、鞄が落ちているのが見えた。
忘れ物―――では、ないだろう。
無造作に投げ捨てられた学生鞄の口は開いていて、
まだ新しい筆記用具やノートなどの中身が零れていた。
惨劇の痕などなく、残されているのは、それだけ。]
[それでもなんとかタオルで目を押さえて、ふらり。
まだ明るくなっていないのに、部屋の外へと出て行く。
向かう先は男子寮。
廊下は暗く、どこか現実味がなかった。
やがて辿り着いたその部屋。
躊躇いもせずに中に入ると、ベッドの脇に腰を下ろして]
亘……
すき
[小さな言葉は、*闇の中に消えた*]
[ぺたんと。
力が抜けて、その場に座り込んだ]
………夢じゃ、ない。
[小さく、呟きを洩らす。
のろのろと、膝を抱えて、頭を乗せた。
濡れた草は冷たくて、ぬくもりなどない]
ハルヒが、―――居なくなったのも。
[しんだのも。ゆめじゃない。繰り返す。
自分の目で、確かに、見たのだ。彼の、その姿を。
改めて口にすると、急に実感が生まれて来て、
認めたくなかったのに、認めざるを得なくなって、
…心の底から、湧き上がって来る感情。]
[どれだけの間、そうしていただろうか。
朧な意識の中で、声を聞き、気配を感じて、顔を上げる。
ぼやけた視界に映るのは、短い茶の毛並みの仔犬。
尻尾がぱたぱたと揺れていた。]
……、リュウ?
なんでオマエ、ここにいるんだよ。
[少し躊躇いがちに、手を伸ばして、抱き上げる。
くぅん。温かな舌に、頬を舐められて、思わず目を瞑った。
涙と泥混じり、汚いから止めさせようとしても、止めず。]
―――ばぁか。
ゴメン、な。
大丈夫だから。
…ちょっと、泣かせて。
[柔らかな身体を抱いて、顔を埋める。
その温もりに安堵して、*瞼を下ろした*]
─桜の下/昨夜─
[一人、去り、二人、去り。
集まっていた者が散っていく。
最後まで残っていたサヤカも戻って行くと。
そう、と、桜の幹に手を触れて]
いのちのまつり。
おもいのめぐり。
[小さな声で、桜花の歌っていた歌を繰り返す]
きみゃくはめぐる、ちからのままに……。
[力、と。短い言葉を繰り返して、ぐ、と拳を握り締める。
その周囲にふわりと舞う、風。さながら、ここにある、と言わんばかりに]
……俺は……。
護れない。護れなかった……。
………………また。
……また、かよ!
[苛立ちを帯びた声と共に、握り締めた拳で桜の幹を殴りつける。
風が、揺らいだ]
…………。
[しばし、そのまま立ち尽くして。
それから、ゆっくりと校門の方へと向かう。
門の向こうには、変わらぬ世界が広がっているようで。
……しかし、そことの間には、隔てるような壁がある、と。
感覚は確りと告げていた]
……これ……消さないと……出られない……。
[なら、どうすればいいか。
それは、『わかって』いる。
いる、けれど]
…………。
[唇をかみ締めて、携帯と鈴を握り締める。
そうやって、しばし立ち尽くした後、ゆっくりと踵を返し、自分の部屋へと戻っていく。
……戻ったところで、*眠れる自信は皆無だけれど*]
[ウミと共に自室へ戻ったフユは、
その空間で口にするべき言葉も思い付かないまま、
弛緩して横になっていた。
沈黙によって、夏の湿気以上の重量感を持った空気が
小さな部屋の暗闇にたっぷり溶けている。
寝返りを打つ。ベッドの小さく軋む音にすら、
大気は小揺るぎもしない。]
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