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[そんな話をしていると、彼女たちの周りに現れたのが、混沌のカケラ。
現れたそれを驚いた眼で見ていたが、それは未知の恐怖ではなく、]
混沌の……カケラ、だと!?
[口に当てた手の隙間から漏れた声。
それはクレメンスがその名を呼ぶよりも早く。
そして、それを聞きとがめた者はいたのだろうか。]
―西殿:木陰前―
なら、相手はティル殿じゃない方が良いかもしれません。
ティル殿は、どうも敵を見るとのめりこんでしまうようですから……
[余計に危険だと告げて、]
支援くらいでしたら手伝いますよ。
それ以上は、あまり関わりたくありませんけれど。
……それで。
この度の騒ぎも、黒い物が原因なのでしょうか。
[ 音が収まってより暫くして、影は再度、エルザに問いを投げた。
話が終わった後にようやっと、躊躇いを抱いた様子ながら、カップに口はつけられる。温度は低かろうが、影は気にも留めぬ。
花の香を微か残した液体が、*咽喉を下っていく*]
―西殿―
そうだ、ユディ。
[時空竜の説明を思い出して、質問を投げかける]
そうなると――正攻法、直接結界を解こうというのは、不可能?
一応、式の解析などは進めていっているのだけども……。
[近しい者は、少しだけ悔しそうに見えただろうか]
って、撫でんなってばー!
[クレメンスにぐりぐりされて、そこだけは抵抗した。
それから、ふと気づいたように]
つうか。
……今、あんなんが竜郷中に出てるって事、なんだよな?
[ザムエルの言葉に、流石に彼には逆らえないといった苦笑を浮かべた時、クレメンスが近寄ってきて。
見上げていたら、手の平に手の平を重ねられたので、不思議そうに目を瞬いていれば瞬く間に傷は癒えていた。
感じる生命の力は心地よく、溜まった疲れも溶けて行く錯覚も生まれる。]
あの…有難う御座います。
[へらりと笑う顔にお礼を言って、
木陰に集まる人々の方へと目を向け、ティルの方へと向いて]
…派手すぎたようですね。
[内容は冗談だが、口調は至極真面目。]
[氷破竜の説明に目を合わさぬ感謝の会釈を向け、木陰に集まる他の人々にも目を伏せがちに会釈する。
そして混沌の欠片が消えたという場所を見、目を伏せてレンズの奥の紫紺に過ぎった痛みにも似た色を隠す。混沌の欠片が取った姿は、青年の属する王の姿と似ていた。雷撃の王とはもっと似ていたかもしれないが]
[そうして、カケラが撃退された後も口許に手を当て思案していたが、]
……皆さん。
直接の犯人はまだ見当も付きませんが。
……裏で手を引く存在の見当は付きました。
[居合わせた面々に向き、そう告げる。]
−東殿・中庭−
[ごろごろごろ。ごろごろろ。
布の塊は今日もひとりでゴロゴロ。
ただ、昨日よりも表情は不機嫌]
…。
[理由は簡単、王の声が聞こえなくなったからだ。
もそ、と起き上がって、鞄から飴玉を一つとりだす。
甘酸っぱい檸檬の味がした。
ころ、と口の中で転がしながら空を見る]
…ヨンめ。
[ぽそっと呟いた]
─西殿前─
[ティルが嫌がるのですぐ手は離したが。
撫でている間にさり気無く傷は癒しておいた。
気づいたかどうかは知らないが。
ティルの疑問にはこくり、一つ頷く。]
うちの生命の海に出てたからな、おそらくは。
[そう告げたときだけは、流石に真面目なものだったか。]
─西殿前─
ちょ、ザム爺そんな判別。
まぁ否定しねぇがよ!
[へらへら笑うが、それもまた弱い。
疲れの蓄積は、流石にクレメンスにもあった。]
まぁそうだろうけどよ。
カケラの心配はどこにでも、だろうしな。
[ザムエルの心中を丁寧に口にして、心労にさらに輪をかけておいた。]
ええ、どうやらそのようです。
私も全てを把握できているわけではありませんが。
失礼致します。
[カップに口をつけるノーラへと頭を下げ、台所から出る。
そのまま東殿も出て、西殿の騒ぎを横目に見つつ本殿の方へ。中から出てきていた先達を呼び止める]
あちらは随行者の方々が収めてくださいました。詳しい事情はもう少し落ち着いてから聞くのがよろしいかと。
それより各地へと伝令を。黒い影のようなものを見かけても刺激せぬようにと。
触れるは危険な存在が入り込んできているとのことです。
[その名は口にしない。最前に教えられたことだ。分かる者だけが分かっていればいいものもあるのだと]
はい、私はそのように。
失礼致します。
[本殿へと戻ってゆく相手に頭を下げて、踵を返した]
― →本殿前→中庭 ―
と、その前に。
[そう言うとブリジットに顔を向け、]
ブリジット、結界だけど。
それこそ、直接手を出さない方がいいかもしれない。
代わりに埋め込まれたものが何かは分からない以上、下手に掘り起こして刺激を与えた途端に、
ドカン。世界は壊れました。
なんて事が起きかねませんから。
もしかしたら、今この状態が、ある意味絶妙なバランスであるのかもしれません。
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