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[ユリアンが小さく首を傾げれば、同じ方向に首を傾げた。
引かれる服、チラリと覘く色。
続いたブリジットとの会話は聞こえていたけれど、何も言わずにただもくもくとプリンを食べていた]
……ごちそうさま、でした。
[立ち上がり台所へと片付けに。
置かれたままの食器があればそれも一緒に運んで。
ポトフを作っているハインリヒの手元を興味深そうに覗き込んだ]
美味しそう。
こういうのって、作る人によって全然味が違ったりするのですよね。
お婆様と母様でも味が違…。
[フッと口を噤む。軽く首を振ると洗い物を済ませて。
休む人々を横目にフラリと広間の外へ出て行った]
―回想・死体のある場所―
そうだな。では、行こうか。
[ナターリエの言に従い、己が案内する形で森へといき
雪を踏みしめしばらく歩くと昨夜の惨状の現場へとたどり着く。
その光景を見て立ち尽くすナターリエ。
それにかける言葉も見当たらなく、ただ黙って、恐怖に見開かれていた自衛団員の遺体の目をそっと閉ざさせ、狼によって食い荒らされて無残に成り果てた遺体を空いた地に集める。
しばし作業も進んだところで、アーベルが現れる
出遅れに詫びを入れるアーベルにゆるく首を横に振り]
気にするな。こういう作業は、この中じゃ慣れてるほうだろうからな
[そしてまた作業に戻る]
[作業の途上祈り続けるナターリエ。
信心に薄い自分だけじゃなくてよかっただろう。と思いながら遺体を集めていると、アーベルの悪態が聞こえる。
が、...は咎めるような気持ちはあまりなかった。
似たような気持ちは持っている。いや、むしろ、村にきてすぐな...には別段悲しいという感情を抱かない自分よりは、淡々と呟きながらもその声に微かな震えを帯びているアーベルのほうがましだろう。
そしてアーベルがギュンターの遺体を運び終えたことで遺体を集める作業は完了し]
始めていいか?
[と、ギュンターの肉親であろうアーベルに問う。
何か形見のようなものを取っておく気はないか?という意味合いの問いであったが、それにああ。と頷くアーベルを見て、油を染ませた布を、遺体を集めたところに広げ火を起こす。]
[火は遺体へと燃え広がり、緋色の火花が舞い、煙が立ち上る
こちらの作法は知らないから、自分の知っている作法で
立ったまま頭を垂れ、胸に手を当てて、じっと死者を悼む。その後ろでナターリエの鎮魂の歌が火の盛る音しかない空間で響きわたった
そして火葬も終わり、ふと気になったことを思い出したのか、森に行くというアーベル
昨日の今日であるからとめるべきなのだろうが、昨日起きたことと符合する件の連続殺人事件は夜に起きるという噂を聞いていたため]
わかった。が、自衛団員や狼には気をつけて、できるだけ早く戻ってこいよ
[といって見送ると、まだ祈りを続けるのかも知れないナターリエに向き直り
どうする?と*聞いた*]
どっちで呼ばれても……ね。
[祖母は、僕を僕として見ていなかったのだろうが]
[そうだね、と曖昧に答えて、続いて返された彼女の言葉には、否定をしたかったけれど、それを自分がするのは酷く滑稽な気がして、口に出せなかった。
カップを更に傾ける。
去っていくブリジットに、声をかけることはしなかった]
……そう言えば。
[窓の方へと視線をやる。陽のひかりが照らす。
空になった器を、卓上に置いた]
アーくんって、マテウスさんたちと、何しに行ったの?
[監視なのだろう、戻って来たかと思えば、じっとこちらを見ているリューディアへと問いかけた。……ザフィーアの視線もあるから、妙にやり辛い。
答えがどうであれ、そう、と呟いて、しばらく外を*見つめていた*]
どうしたのさ、これ。
[指で嘴をつんつんと突付きながら、黒鳥に足輪について問い掛ける。問われたほうはカァ、と一鳴きしただろうか。
勿論鳥の言葉など分からないから、首を傾げた。]
っと、・・・・・っていないし。
[鳥は不意に飛び立った。その先を追って、漸く見張るべき対象の不在を知る。
慌てて追いかけて広間に入ったものだから、ブリジットとユリアンの会話は殆ど聞くことなく終わった。]
あ、プリン。
[他の人が食べているのを見て、暖炉の前に放置されていた自分の分を確保した。温まっていたけれど、一口口に入れれば甘味は甘味として感じられる。
食べながら、それでもユリアンから一生懸命目を離さないようにする。黒はその間、広間の空いた椅子の背に止まり、こちらもじっと見ていた。]
・・・・・ん?
あれ、そういえばなんでだろう。
[問われた言葉に暫し、考える素振りを見せる。]
たしか、シスターさんは埋葬って・・・・
[思い出した単語を呟く。
何かに思い至ったか小さく眼を見開いて、そこから先は続かない。黙って、プリンの容器に視線を*落とした。*]
[窓の外をぼんやりと見つめる。
冬晴れの空に上っていく白煙。]
earth to earth;ashes to ashes, dust to dust.
贄に捧げられし羊の群れにも、せめて平穏を。
[痛みも恨みも心残りも、あの煙と一緒に空へ還るのだろうか。]
[今頃は、辿り着いた頃だろうか]
[室内へと視線を戻すと、リューディアはプリンへと意識を注いでいた。食事優先な彼女の性格は、よく知っている。
立ち上がり、そっと広間を抜け出そうとして]
……君は、とても職務に忠実ですね。
[しっかりと付いて来たザフィーアの存在に、呟いた。
まあ、その忠実さに世話になったことは、一度や二度ではないのだから、甘んじて受けるべきなのかもしれないが]
外には行かないから、さ。
[弔いの言葉が聞こえた。
白煙は雲と見紛えて、わからなかった]
羊の群れに紛れた狼は、
……いるとしたら、
どうするんでしょうね。何を望むのか。
[往生際悪く、仮定の言葉を加える]
[風呂場に行く]
[湯を流し、そこを使えるようにした]
[浴室内に血のにおいはない]
[浴室の白い煙とは違った煙が、窓の外に見えた]
さて、暖かくしておきましょうか
[タオルを濡らし、きちんと絞る]
[布はほかほかと温まる]
[幾つか絞って、それを持って広間に向かう]
[何とはなしに外に出た。
上着も着ないままではかなり寒かったけれど]
煙…埋葬…
[ぼんやりと、離れた場所で立ち昇ってゆく白い筋を見る]
Requiem aeternam dona eis, Domine,
et lux perpetua luceat eis.
[歌ったことのない歌詞。
殆ど憶えてもいない旋律。
初めの部分だけを風に乗せ]
…でも、私は。
[途切れる歌。小さな呟き。
途端に走る痛みに口を噤んで目を閉じた]
いいえ。別段、そんなことは。
[笑みは、恐らく、ぎこちなかった]
湯上りですか。
湯冷めしないよう、お気をつけて。
[形式的に返して、その横をすり抜けて音楽室へ向かおうとする。
背後から、羽ばたきの音が聞こえた]
いえいえ、別に湯上りというわけではありませんよ?
監視役を振り切って、どこかで無茶をするつもりですか?
[横を通り抜けようとする彼の前に、白い布を一枚広げる]
[ちょうどその位置は自分の肩の高さ]
[ということはつまり、背の低い彼にとっては…]
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