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……本当に、幸せなら……ね。
[呟くような言葉はため息に紛れ、果たして届いたかどうか。
ただ、これ以上言葉を重ねてもどうにもならないような気がして。
このままゆっくりと壊れていくか、一撃で砕け散るか。
現実と向き合う、という選択肢がなければ、その二択なのは覚えもあるから]
『俺は……向き合う道を選べた。けれど』
[この子には、それだけのものが現実にあるのかどうか。
その判断は、どうしてもつかなくて。
食堂へ向かいつつ、自然、表情は陰りを帯びるか]
寺。
それであなたは達観したような物言いをするとでも?
[フユは少し驚いた顔をした。
恐らく昨夜から久しぶりの、睨むこと以外の表情。
それは、ヒサタカの声に感情らしきものが過ったことと、彼の語った内容に対してだった。]
……どのような話や、物、が。
[後ろをついていくのだから、当然その顔は見えずに。
言葉は届いていたけれど、それに返す言葉はなくて。]
そういえば、つくらなきゃいけないなら、つくるんですよねー
[自分が料理をした時のことを思い出して、少し声は苦い]
あー……そうなんだよね。
まあ、俺も多少は作れるけど……姉さんたちに付き合わされたから。
[マイコの言葉に、姉たちの料理修行に巻き込まれた頃の事を思い出してか、ふっと遠い目をしつつ。
それでも、何とかなるだろう……と思いながら、たどり着いた食堂のドアを開けて]
……誰か、いる?
[明かりがついている事に、一つ、瞬き]
………さあ、どうかな。
自分では、達観しているつもりはないからね。
[静かに答えて、視線を逸らす]
そう…いろいろだよ。呪いだの祟りだのという怪談じみた話から、呪物だの魔を封じた遺物だのね。
眉唾物も多いが……馬鹿に出来ないものも、いくらかはある。
そうだな…だから、慣れてはいる、か。
[視線は再び、桜の樹に注がれている]
へー、すっごいですね!
やっぱり、かがみせんぱいは、ものしりですねー
[それは何か違う気がするものの。
食堂のあかりに、声を上げる彼の様子に首を傾げる。
いてもおかしくないと思っているのか。――否、普段ならそれは当然なのだから、おかしくない。]
まあ、達観しているというよりかは…………。
[フユは、桜ではなくヒサタカの横顔に視線を注ぎ]
……訊いてみたらどうです。
私には分かりません。慣れてはいませんから。
昨日は、マイコが
桜の樹を殴った時にでも、現れたのでしたっけ。
─自室─
[フユが出て行ったのをぼんやりと気付いていたが、声を掛けることはせず……というか]
…………だる
[騒動の間ずっと濡れたままの服でいたわけで。当然の帰結として、夏風邪をひいていたりするわけで]
物知りというか、まあ、その……。
[視線が泳いだ。
身に着けた知識の大半が、姉たちの玩具にされた結果の産物というのはさすがに言えない]
『……御堂さん、無事……なのかな』
[なら、いいんだけど、と。
ごく小さな声で呟きつつ、食堂の中へと入り]
えっと……誰か、いますかあ?
[声をかけつつ、ふと感じた気配に目をやれば]
あれ、あの犬……?
[そこには、以前何度か見かけた仔犬の姿が]
…………確かに、ずれているとは良く言われる。
[自覚はあったようだ]
……それも考えたが、無闇に殴ると殴り返されそうでね。俺も命は惜しい。
経でも唱えてみるかな?
[口調はどこか軽い]
[手早くシャワーを済ませ、ショートパンツとTシャツに身を包み、乾かした髪をラフにまとめ、浴室を出る。
麦茶でも飲もうと食堂へ足を向ければ、誰かが入っていくのがちらと見えた。]
[一瞬躊躇うも、そのまま食堂へと向かった。]
―→寮・食堂―
…ん?
リュウ、どうしたー?
[調理の音で、人の声には気づかず。
火を止めて出来上がった野菜炒めを皿へと移し、
仔犬用に用意した煮込み野菜は少し底の深い器に。
入り口を見つめていた仔犬は振り返り、
小首を傾げながら、ひゃん、ともう一鳴き。]
[弱いところを他人に見せるのは嫌という意地っ張りな考えの下、声を掛けなかったのだが]
………限界っぽ
[そう呟くとモゾリとベッドから這い出て、寝間着の上に少し厚めの服を纏って階下へ]
いやまあ……色々と、あるから……。
[素で言われて、どう返したものか悩んで。
結局流す方向にしておいた]
この犬……前から、構内で見かけてたけど……なんで、こんなとこに?
[首を傾げて呟きつつ。
調理場の方から声が聞こえれば、一つ、瞬いて]
[食堂の入り口に立てば、確か桜の樹の下にいた二人と、犬が見え、思わず幾度か瞬きをした後。]
……こんばんわ。
[ぽつり、呟く様に声を掛けた。]
[餌の匂いを感じ取り、中に入って来て
尻尾を振る仔犬を嗜め、炊事室から顔を出す。
馴染みのある後輩の顔が、2つ。]
…れ。
カガミに、マイマイ。
―――と。
[その背後から現れた顔にも見覚えはあったが、
名前は知らず、言葉に詰まった。]
[流されてきょとんとして]
犬、みたことないですー
あれー?
ショウちゃんせんぱい?
[声に聞き覚えはあった。
それから後ろからの声に、ふりかえって]
こんばんはー!
[呟くような声を捉えて、そちらを振り返る]
あ、こんばんは。
……ええと。
[昨日、最後まで桜の元に残っていた人、というのはわかったけれど。
名前は聞いていなかったな、と思い、やや、首を傾げる]
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