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[砂にまみれて投げ出したままの手足に、鴉が幾羽か舞い降りた。
わずかに身じろぐ。
それに驚いたのか、黒い翼は飛び立っていく。
うっすらと開けた目に映る冬空。]
─嘆き島・墓地管理小屋─
[いや、違った。
彼は小屋の奥に行くと、厚みのある箱を持ってきた。
箱の前には鍵がついている。
数秒、数分、どれくらいかは分からなかったが暫く眺めた後、その箱を鞄の中にいれた。
栞を挟んだままの本を鞄の一番上に入れると、裸電球の近くから下がっている紐を引いた。]
流れ者 ギルバート が参加しました。
[冬枯れの森を抜けて、茶色い革のジャンパーをまとった人影が歩く]
ちっ…もう夜じゃねえか。話が違うぜクラークの野郎…。
[村と、森の奥の『あの場所』を結ぶ道を書いた地図がいい加減だったのか。それとも、時が流れて道のほうが変わってしまったのか。
まあ、そんなことはどうでもいい。
問題は、『村に戻れない』というその一点のみ]
この分じゃ、野宿するしかないのか。
[そう呟く声を聞きつけたかのように、遠く、獣の鳴く声が響いた]
野犬か?それとも…。
[歩きながら来た道を振り返る。何だろう。どうしてこう不穏な空気が流れるのか。自分は何を不安がっているのか。
しばらく歩いて気がついた。
『それとも…』
それとも。あの獣の声が犬でないなら、その正体は何だ。自分は何の名を言いよどんで…]
─嘆き島・墓地管理小屋─
用意が出来ました。
[彼は、カンテラを手に外に出て来ると、待っていた青年に声をかけた。]
机の上に代わりの人への手紙が置いてあります。
確認をしてもらっても構いませんが…
[青年は中に入ると、カンテラに照らされた手紙をざっと読んで、また外に出た。
小屋の扉に鍵をかけ、扉近くに青い鉢を持ってくると、その下に鍵を置いた。]
行きましょう。
[潮の匂いがした。]
…灯り。
[木々の向こうに集落と思しき光が見える]
灯りじゃねえかよ。…村。やったぜ戻れた!
[...は疲れも、今しがたまでの不安も忘れて足を速めた。森が途切れて...が出てきたのは海へと続くかに見える長い坂。]
宿に帰ってまずはストーブ。んでもって熱いコーヒー。それからメシ…。
[...は今晩一晩幸福になるために必要なものを、楽しく数え上げながら歩いていた。不幸にしてその耳には自警団員の誰何の声が聞こえなかった]
そうだ、熱々のアサリのリゾットが食いたいな。
[いや、不幸だったのは自警団員の方だったかもしれない。]
不審者を取り押さえようとした自警団の青年はその一瞬後には高々と投げ上げられて宙に浮いていた]
何すんだよコソ泥。金ならないぜ!?
[足早に...はその場を去ろうとした。相手をすりか何かだと思ったまま。
しかし、そうたやすくことは運ばない。
起き上がった自警団員は呼子を吹いたのだ]
なっ…どこからこんなに沸いてきた!?
[思い違いから起こった悲劇とも、喜劇ともつかない乱闘を、糸のように細い弦月が照らしている。低い空で朧に輝く姿が、海に映って波に揺れる]
―30分後―
だーかーらー!
アレは、不幸な事故なんだって。
[顔にいくつもの絆創膏を張り、手首に包帯を巻いた姿…で...を先導していく自警団員]
確かに、鼻血出した奴とか、歯を折った奴とかには悪かったけど。
だからって連行することないだろう?
[村に相次ぐ殺人事件。今も今とて山狩りの最中だったと言われ、さすがに顔色が変わる]
ちょっと、なあ、待ってくれよ。
そんなの言いがかりだって。あんた、オレにブン投げられて腹が立ったから、それで脅しを言ってるんだろう。
なあ、そうだよな?
[集会所に容疑者を集めているところだと言われ、自警団員たちが本気なのだとようやく理解する]
こんなの、オレがよそ者だから疑ってるだけだろうが。証拠があるのかよ。あるんなら見せてみろ。納得できないまま連行なんかされねえぞ、このクソッタレ!
[『では、村の宿屋に泊まったまま、毎日森と宿を行き来していた不審な行動をどう説明する?』
そう尋ねられて言葉に詰まる]
友達との約束があったんだよ。
ガキの頃森に隠した宝物の箱を見つけてくれって。馬鹿げた言い訳なんかじゃない。
[必死の言葉を笑い飛ばして、自警団員は引きずるように彼を集会所へと連行していく]
聞いてくれ。本当にそれだけなんだよ。
オレはマジで人殺しなんかとは関わりない。本当なんだ…!!
[...に銃口を向けるアーヴァイン]
取調べが済む前に、村から出たら…って、ことかよ。
[こいつら、本気だ。
殺気立った様子に、抗うことをやめる。うかつに騒ぐと、本当に撃たれそうだった]
分かったよ。
集会所とやらでとっくりと調べてもらおうじゃねえか。
侘びを入れてもらうのは、無罪放免になった後でも構わないもんな。
[軽口をたたいて見せながら、...は背を伝う汗を感じていた。
…みんなイカレていやがる]
─嘆き島─
[緩い傾斜をもった島の坂。
小屋からは墓地が一望出来る。
数は少ないけれど、悪戯に来る子供や大人はいるからこその立地だった。墓石が無言で佇んでいる。
外套の頭隠から、仰ぎ見るように左を見ると、処刑台が見えた。
彼は、島に連れてくる手間がかかってもここに作ったのは、やはり本土に作るより住人の非難がないからだろうと思う。
カンテラがぼんやりと照らし出した緩い坂道が急になる。島の船着場のすぐ近くに来ていたのだった。船着場につくと二艘あるうちの一艘に乗り、青年に頷いて本土へ向けて出発した。
海の泡が集まって出来た花が、小さくつぷつぷと啼いていた。]
―回想―
「長い事帰ってないけどな。この仕事が終わったら、一緒に連れて行ってやるぜ。きっとお前も気に入るから」
…酔うといつもクラークはそう言った。
「海が青くて、アサリが美味くて」
それは何度も聞かされた。耳タコだ。オレをシーフードにしてどうする。
「絶対気に入るから。惚れるから。間違いないって」
ふふっ…
[自警団員に連行されながら、つい、笑っていた]
お前、生きてる間は本当に嘘ばっかりだったな。どうしてくれるんだよ、クラーク。
[誰にも聞こえぬほど小さな声で、亡き友に文句を言った。けれどそれは、怒っているのでも嘆いているのでもなくて、懐かしさに満ちた、軽口]
ギルバート=W=モーレンジ
■1. 名前:ギルバート=W=モーレンジ
■2. 職業:今は流れ者。いろいろな仕事をかじってきたが、特技と呼べるのはむやみと立つ腕っ節くらい(が、たいていトラブルしか起こさない)。23歳。
村に入った数日前から、友人クラークの遺言を叶えるため、森の中でクラークの宝箱を探し続けていた。
挙動不審は言い訳の仕様もない。
クラークの遺品と、宝箱の両方をそろえてから遺族に会おうというのは、ギルバート自身のただの意地に過ぎなかったから。
/中/ 死んだ友人クラークの遺品を持ってきた、と言う設定なので、クラークの遺族(老若男女問わない)を大募集中。クラークとの関係はなんでも構わない。
が、今いる人間にはよそ者がそもそも多いんだな…。
―集会所―
[ハーヴェイと名乗った青年がくるくると、目の前で皿を回し始めてから。細い棒が(多分意図的に)危うげな動きを見せる度には、と息を飲んだり
クラウンが微笑んで広げた荷物をしまい始めたときにはつい、拍手と笑顔を送っていた。
流石は本職だな、と感心する]
此処へ来るより前に、きっと、沢山の場所を回ってらしたんですよね。
ご家族とか…一緒では無いのですか?
―集会所―
そうですね、確かに色々回りました。
昔は、ずっとこういう役だったんですけどね。
[最近は大掛かりなものもやるようになりました、と笑って。
むしろ笑うしかなかったともいう。]
家族は、一人。姉が居ますね。……ええ、姉、が。
[あんなのが、とは口に出さなかった。]
―集会所―
[入れ、と言う言葉と同時に、...は強く突き飛ばされた]
のうわあっ!
[つんのめって、かなり勢いよく、転んだ。その背後で、ぴしゃり、入り口を閉める音]
いててて。嫌われてるなあ、オレ。
[何となく意味深な気配で”姉が”と言われたことに、少し違う感想を持ったようで]
お姉さまですか。
ええと、あなたがこのような事になって此処へ呼ばれて…お姉様は……ええと、早く解放して貰えれば良いですね。
─海辺・船着場─
[船は黒い海を越え、櫓の最後の一漕ぎが船着場への道をゆるやかに波立たせ、コツンと船先が当たった。
青年が先ず船から降りたった。]
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