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[ロミルダから見せられた絵に、鸚鵡は丸い目をきょろりとさせて、首を傾げる]
「ろーとす?」
[それきり、鸚鵡は何も言わずに喉をくるると鳴らすのみ]
んー、難しいっつーか、なんつーか。
ま、いいや、本人来てからの方がはえーし。
[説明を放棄したのは、そうであってほしくない、という思いのもたらしたもの。
ともあれ、鸚鵡は広間に置いて台所へ。
作るのは、魚の干物に火を通したものを堅焼きのパンに挟むだけの簡単なもの。
手伝う、というロミルダには食器を出すとか、そんな簡単な仕事を頼んだのだが]
……あれ。なんか、随分蓄えとかしっかりしてんな。
青物あるとか、めっずらし……。
[滅多に口にできない新鮮な青菜の類がある事に、こんな呟きがもれた]
[ともあれ、あるものは使え、とばかりにしっかりサンドイッチに真新しい野菜も挟みこみ。
お茶を淹れて広間に戻ると、耳に届いたのはオカリナの音色。
静かに、といわんばかりにこちらを見やる鸚鵡に、軽く肩をすくめて返すと、できるだけ静かにテーブルに戻る]
……ぁー。
お師さんに怒られっかな……。
長引かなきゃいいんだけど。
[ため息にのせ、零れたのはこんな呟き]
[ユリアンに言われた通りに食器を出そうと、ロミルダは棚を見上げる]
あれれ。
そういえばお話聞きに来る人、まだいるですか?
みんな集まるまで待ってなさいって、言われたです。
[棚の前で考え込むポーズ。
結局今いる3人の分と、あと何皿かを余分に出してきたのだった]
[しばらく後に準備が終わって、ロミルダはユリアンの後ろから広間に戻って来た]
わ。
[カルメンが吹くオカリナの音に、ロミルダはつい小さく声を上げた。
ロートスと目が合ったから、口に人差し指を当てて頷いた。
そうっと忍び足で、さっきの椅子に戻る]
[忍び足で戻るロミルダの様子に、ほんの少し、笑んで。
音色に上機嫌で聞き入っているらしい鸚鵡の様子に、今度は眉を寄せる]
……俺のには、ケチしかつけねーのに。
ったく、調子いいんだから。
[思わず零れた呟きに、鸚鵡はとぼけるようにこきゅ、と首を傾げた]
ロートス、いじわるはだめですよ。
[ユリアンとロートスのやり取りにくすくすと笑いながら、ロミルダは言う。
オカリナの音があるから、声は小さなままだ]
「いじわる、してない、よー」
[笑いながらの言葉に、鸚鵡はふるふる、と首を振る。
いつもはやかましいほどの声だが、遠慮しているのか、やはり、声は小さめ]
……この確信犯は。
[それへの突っ込みも、やはり小声。
表情だけ見ると怒っているようだが、こんなやり取りは日常。
物心ついた頃には共にいた、兄弟のような存在だからこそのもの]
[元より瞳に光は映らねど、瞼を落としながら音を奏でるのは常よりの癖。
しばらく音を奏でて居たが、いつも耳にする羽音はやはり無かった。
まるでこの先に起こることを暗喩するかのように]
───……。
[音が途切れたのは広間に他の気配が戻って来てからしばらくしてのこと。
直ぐに気付かなかったところを見ると、それだけ集中していたと言うことなのだろう]
……?
おか、えり?
[瞼を持ち上げ、色映さぬ瞳を音のする方へと向ける。
視線こそ合ってはいないが、声と微笑みは台所から戻って来た二人へと向けられた]
[途切れた旋律と呼びかける声に、窓の方を振り返る]
よ、ただいま。
カルメンも、食べるかー?
じい様、いつ来るかわかんねぇし、メシはちゃんと食っといた方がいいだろ。
[言いながら立ち上がる。
テーブルに戻るなら、手を貸さなくてはならないから]
本当ですか?
ロートスはいつも、ユーリにぃにきびしいです。
[こんなやり取りはもう何度も見ていて、その度にロミルダは笑った。
そうしていると、オカリナの音が止んだ]
ただいまです。
ご飯できてるですよー。
[視線は合わないけれど、ロミルダもカルメンに笑顔を向ける。
それからカルメンが動くなら、さっきみたいに椅子を引くために、椅子から降りる]
ご、はん?
うん、たべる。
[誘いに応じ、頷きを返す。
オカリナを仕舞うと窓辺から身体を離し。
ユリアンが手を貸そうと立ち上がってくれたのも見ることが出来ないため、窓辺へと来た時と同じように床へとしゃがみ込んだ。
そうしてペタペタと床に触れながらテーブルを目指し進み始める]
「しかたない、よー。
ユーリィは、抜けてるからー」
[悪びれた様子もなく、鸚鵡はロミルダにこう返し]
るっせーっての。
[それに突っ込みを入れている間に、カルメンは床伝いに動き始め]
っと、ストップストップ!
ほら、手、貸せって。
テーブルまで連れてくから!
[慌てて駆け寄り、声をかけながら手を差し出す]
「ほら、ぬけてる、でしょー?」
[その様子に、鸚鵡がこんな突っ込みを入れているのは、黙殺した]
[ペタペタペタ。
少し進んだところで制止の声が飛んだ]
ユーラ?
うん、ありがと。
[連れて行くと言う言葉に感謝するように微笑む。
床から離した手をユリアンに伸ばそうとして、一度引っ込めてパタパタ。
手の汚れを払い落してから改めて手を伸ばす。
けれどどこにあるのか分からず、しばらくは宙を彷徨うか]
ユーラ、ぬけてる?
[何のことを指しているのかさっぱり分からない様子で言葉を繰り返す。
ユリアンに手を借りたなら、連れられてテーブルへと向かうだろう]
[ロートスのあんまりな物言いに、やっぱりくすくすと笑った]
…あらら。
ロミも抜けてたです。
[それからカルメンの様子に気付いて、ロミルダはぱたぱたと反対側の椅子へ。
がたがた音をさせながら椅子を引く]
[宙を彷徨う手は、こちらでしっかりと掴み]
ほい、ゆっくり立ち上がってー。
慌てなくていいかんな?
[軽い口調で言いつつ、テーブルへとカルメンを導く]
「ぬけてる、ぬけてるー。
ユーリィ、いつもー」
[言葉を繰り返すカルメンに鸚鵡は楽しげにこう返し]
……ロートス、てめぇ。
[思わず、声が低くなった]
[彷徨わせていた手を掴んでもらうと、カルメンはゆっくりと立ち上がる。
それからテーブルへと連れて行ってもらい、ロミルダが引いてくれた椅子の背凭れへと手をかけた]
ユーラ、いつも、ぬけてる。
[ロートスが楽しげに返す言葉を再び繰り返す。
こてりと首を傾げたところを見ると、理解はしていないようだ。
それからユリアンに預けていた手を離してもらい、座る位置を手で確かめてから椅子に腰掛ける]
あり、がと。
[声の低くなるユリアンには気付かず、二人に微笑んで礼を言った]
あんまり言ってると怒られちゃうですよ。
[ユリアンの声が低くなったのに気がついたのかどうか、ロートスを諭すように言った。
やっぱり笑っていたけれど]
わ。
カルねぇがロートスになったです。
[カルメンがロートスの言葉を繰り返したものだから、そんなことを言いながら]
どういたしましてですよ。
[カルメンのお礼にはそう返してから、またぱたぱたと席に戻った]
[ロミルダに諭された鸚鵡はこてり、と首を傾げてくるる、と一鳴き。
そんな鸚鵡をじとり、と睨んでいたものの、カルメンの様子に毒気を抜かれた気分になり、はあ、とため息一つ]
ん、気にすんな。
[笑みと共に向けられた礼に、いつもと変わらぬ声で言って、作ってきたサンドイッチを皿に取り分ける]
お、そうそう。
なんでかわかんないけど、新鮮な野菜が蓄えに入ってたんだ。
滅多に食べらんないし、味わっとけよー。
……?
カーラ、が、ローテュ?
[ロミルダの言葉に再びカルメンは首を傾げる。
自分は自分だけどな、そんな雰囲気を含んで居ただろうか]
お、やさい。
めずら、しい、ね。
い、ただき、ます。
[食事の挨拶をしてからサンドイッチへと手を伸ばす。
最初はテーブルの上で皿の端を探し、そこから更に手を伸ばしてようやく目的のサンドイッチへと。
サンドイッチを持ち上げるのではなく、顔を皿に近付けて食べるのは長年の癖。
零して床や服を汚さないための工夫だった]
……おいし、いね。
[サンドイッチを口に含むとしゃくりと音が立つ。
咀嚼し飲み込んでから嬉しそうに笑みを浮かべた]
[急に備蓄が増えた事への疑問はあるのだが、そこらは考えても仕方ない、と割りきり、自分も椅子に座ってサンドイッチに手を伸ばす]
前に『陸』に寄った時は、あんまり数入らなかったからなぁ。
[しみじみとした口調で言いながら、一口齧り。
瑞々しさに、表情が綻んだ]
ん、美味い。
しっかし、じい様、いつ来るんだか……。
[窓の外へと視線を向けつつ、小さく呟く。
外では、自衛団員が忙しく動き回っているのが見て取れた]
カルねぇ、ロートスのまねしてたです。
[カルメンが不思議そうにしていたから、ロミルダはそう理由を付け加える]
いただきますです。
[おんなじように食前の挨拶をしてから、サンドイッチをひとつ取った]
野菜、きれいな色してるですね。
おいしそうです。
[パンの間に挟まっている野菜を、珍しいものを見るみたいにまじまじと見てから、ロミルダは口に運んだ。
実際新鮮なものなんて、滅多に食べたことなどないのだ]
わ、おいしいです。
[一口目をごくんと飲み込んで、もう一口]
むぐ。
みんな来るまで待ってなさいって、団員さん言ってたです。
まだみんな集まってないですか?
[二口目を飲み込んだところで、ユリアンの言葉に首をこてんと傾けた]
[しばらくはもぐもぐと、手にしたサンドイッチを頬張り続ける。
野菜の色についてや自衛団員が忙しそうな様子には反応せず。
否、反応出来ず。
ただ言葉を耳にするだけだった]
ローテュ、の、まね。
ユーラ、いつも、ぬけて、る?
[ロミルダが口にした理由に、また言葉を繰り返した。
最後が疑問形になっていたけれど]
んー、まだ、集まりきってないんだろーな。
呼ばれたのが俺らだけなら、とっくにじい様来てるだろうし。
なんでもいいけど、長く引き止められるとなあ。
お師さんに、何言われるやら……。
[ロミルダの疑問の声に、零れるのはため息。
修行中の身だけに、それが途切れるのは気がかりだった]
[繰り返された言葉に、何となくがっくりと来た]
……何度も何度も言わんでくれっつの……。
さすがにそれ、泣けるぞ……。
[カルメンに他意がないのはわかるものの、嬉しくはなく。
そんな相棒の様子に、鸚鵡は楽しげに喉を鳴らしていた]
はい、それです。
[カルメンの疑問系の繰り返しに、ロミルダは大きく頷いた。
伝わるのは声だけだろうけど]
むぅ。
ユーリにぃはお仕事大変なのですね。
ロミも早く、陸に行きたいです。
[床に付かない足をぶらぶらさせて言いながら、ロミルダはサンドイッチを一つ食べ終えた。
がっくりと来たようすには、喉を鳴らすロートスと顔を合わせて、やっぱり笑うのだった]
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