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―広間―
重ね重ね、ありがとうございます…
[ぺこりと一礼して、広間へと入る。
先客が居るのが見えたので、なるべく足音をさせないように隅っこのほうへ…
…最近はすっかりからかわれることもなくなったけど、
それでもやっぱり地味に人は苦手なのだった。]
― ふもとの村・教会 ―
やっぱり、神父さま、いらっしゃるなら後にして下さい。
リックが戻ってきて、誰もいなかったら、きっと泣いてしまいますもの。
ね、神父さま。
わたしもう、10歳ですのよ。
一人でお使いも出来ます。ね。
それにアーヴァインおじさまにも、作っておいたお花のしおりをさしあげたいの。
ハーヴェイおにいさまもいらしていたみたいだもの、わたしからのプレゼント、させてくださいな。
[説得は小一時間。
結局甘い神父が許可を出し、ウェンディは破顔して、手を伸ばす。
めいっぱい背伸びして、首の方へと手をやって]
ありがとうございます、神父さま。
だいすき。
―→広間―
[廊下に出て、先程宛がわれた個室へ向かおうと足を進め。
不意に立ち止まり、顎に手を当てて床を見つめた]
まあ。
一応、顔出しとくか。他の客もいるみたいだし?
[暫しの間を経て、呟く表情は如何にも面倒そうだったけれども。
個室の前を通り過ぎ、向かうのは人の声のする広間]
[酒のにおいが濃い息を吐き出せば、それは白く変わる。
冬が近づいた証拠にこげ茶の目が細まった]
――寒ィなァ……
[冷たい風に首をすくめて。
くたびれた上着の襟にあごをうずめた。
酔っているのがわかりやすいふらふらとした足取りは、それでも間違えることなくアーヴァインの屋敷へと向かっている]
[照れ笑いして神父から離れると、身を翻す。
置いた箒を拾って、道具入れに片付けると、教会の中に入って。
それから、いくつかの持ち物をバスケットに入れて、外に出る。
神父に微笑んで、スカートを摘んで]
もし遅くなってしまったら、また泊めていただくことにします。
それか、アーヴァインおじさまが、泊まっていくようにって言ってくださったら。
それでは、行ってまいります、神父さま。
リックが帰ってきたら、伝えておいてくださいね。
[知らないなんて言っても、二人きりの血族を、気にしないわけもない。神父に挨拶をしてから、教会を出る。
歩くペースは速くはないけれど、ゆっくりと向かう途中、ふらふらする人の姿に気付いて、慌てて駆けよる]
あ、あの、大丈夫ですか? お加減が悪いのでしょうか?
[心配そうにケネスの顔を見上げる。
彼が来てからは、まだ、アーヴァインの屋敷にいったことがなく。
ウェンディを相手に彼の噂をする人もまたいなかったから、思い当たる節もなく、ただ純粋に心配だけを滲ませて]
んァ……?
[酒場で酔っ払っていることがおおい男は、村人からも倦厭されている。
だから駆け寄ってくる軽い足音が聞こえても、まさか声をかけてくるとは思わなくて。
意外な声にひっくりかえった頓狂な声を出す]
……あー……、だァいじょうぶだとも。
[視線を落としてみれば、少女の姿が見えた。
心配している様子に、赤ら顔でぶっきらぼうに答える]
おじょーちゃんが心配するこたァないない。
[酒の匂いに気付いたのは近付いた後。
少しうろたえたけれど、心配そうな様子は崩れなかった]
ですが、足元が、ふらついて。
その、よろしければ、お水を飲まれますか?
[腕に下げたバスケットから、小さな水筒を取り出して。
蓋を開けて、差し出して、首を傾げる]
無理にとは、言いませんけれど。
少しは、楽になるかも、しれませんから……。
―広間―
お強請り、だなんて人聞きが悪いね。ソフィーくん。
[実際“お強請り”したものは別のものであると、問うた相手は知っているのかどうか。
いずれであっても表情には出さず、にこにことしたまま]
欲しい資料がどうしても手に入らなくてね。
ここなら蔵書も多いし、あるかと思ってさ。
[村人に向けたものと同じ言葉を並べ立てた]
こんぐらい、平気だァな……
[酒臭い息を吐き出し。
近づいても尚心配する様子を見せられて、酒に酔った目にわずかに困惑がまじる。
水筒を差し出す親切な行動には、ぼさぼさの髪をかくことで動揺を抑えた]
…… あ゛〜……
まァ……んなら、一口、もらっとくわァ……
[断った後の少女の反応が読めず、というかそこまで思考はまわらず。
断るのも面倒だったためにとりあえず水筒を受け取って、水を一口飲んだ。
ごくりと喉仏が上下して、小さな水筒の中身を一口で半分近くまで減らしてから返した]
ありがとよォ……
[そっけなく返しながら、歩く足はかわらずふらふらと千鳥足]
─ 厨房 ─
……貴方方、何をしているので?
[お湯の追加を準備しようと厨房へ向かうと、生姜の砂糖漬けを持たせた使用人と、もう1人の使用人が何やらこそこそとしていた。
それに気付き声をかけると、2人はびくりと身を強張らせる。
どうやら砂糖漬けをこっそり摘んでいたようだった]
───摘み食いですか。
頂き物とは言え、感心しませんね。
…辛い?
そんなに辛味が強いのですか。
[それでは主や他の来訪客には勧められないな、と。
瞬時に考えるのはそんなこと。
使用人達に関しては、摘み食いをした罰である]
とは言え、頂いたものを無下には出来ませんね…。
何か別の調理に使えないか、考えてみましょう。
[小さく息を吐くと、貰った生姜の砂糖漬けは保管庫に仕舞うよう指示を出し。
2人の使用人にはそれぞれの業務に戻るよう言いつける。
自分もお湯の調達をすると、再び広間へと戻って行った]
たいらな道が続くわけでもないですから。
[受け取ってくれたのに、ほっとして、頬が緩んだ。
少し赤く染めて、水を飲んでいくのを見守って]
良いんです。
神父さまは、おつらそうな方に手を差し伸べるように、って。
そうおっしゃっていましたから。
少しでも、楽に…?
[しかし歩く様子に、困ったように眉を寄せる。
しっかりと水筒をしまいなおして、とこ、と後についていって]
あの、…おじさま。
どちらまで、行かれますか?
ご案内いたします。
─ 広間 ─
[安堵しているらしき様子>>49に、なんだか昔の自分を思い出しつつ]
あ、ぼくは、ソフィー・フェアフィールド。
よろしくね。
[ハーヴェイに答えて名乗るのに、自分も名を告げて]
あれ、違ったの?
[ハーヴェイの言葉>>50には、不思議そうに瞬きしてみせる。
はっきりそれと知っているわけではない、が。
来訪の後の養い親の様子から、単なる『お強請り』でない事は、うっすらと察してはいた。
もっとも、確証もないため、特につつくつもりもないのだが]
確かに、ここの蔵書はすさまじいからね……ぼくには、なんであんなに本ばっかり集められるのか、その理解に苦しむけれど。
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