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―中央ビル4階食堂―
それでは、少しお待ちくださいね。
[中を覗くと先に厨房らしき方へと向かう。
自動機械が使われていたが、これも調整の仕方で変わることを知っている。
ココアも程好い熱さと濃度に整えた。店で出すものには程遠くなってしまったが、少しは良くなったはずだ]
はい、どうぞ。
[もしエルザが興味を示したのなら、自分の分に持ってきた珈琲はまずお代わりとして渡し、もう一度厨房へ戻る*だろう*]
―中央ビル内―
そう考えると、難しおすなぁ。
[首を傾け、薄紅の髪を揺らす。
付き従う虎と目を合わせ]
ともあれ、今んとこは休むしかあらへんでしょ。
警戒ばっかりしとって、いざって時に疲れてたら本末転倒やし。
[会話のつもりか独り言か、そんな風な言葉を紡ぎながら。
食道に辿り着けば先に来ていた者には会釈をし、虎は一瞥をくれるか。
そのままそこで暫しの時を*過ごす*]
─中央エリア・一階─
『だしょ?』
グリズ…。
[鴉に大いに同意したものの、殺気含む呼び声に、剣は口笛吹いてごまかした。
主はライヒアルトもぎろと睨みつつ。告げられた情報には、そうかと一言だけ返した。]
『ふんふん、4階にラウンジと食堂ネ。あとは2階に個室設備と…。
やー、まだここのは覗いてないから俺もワカンナイんだよねーどもども。』
[脳内(と呼べるものがあるのか)で剣は諸々を整理し。
早々に立ち去った鴉には、主はふんとひとつ息を、剣はひらんと飾り紐を振り。]
『あら兄さんにかみつく勇ましいワンコもいたのねぇ、ご愁傷サマ。
お休みまたね良い夢ヲー。』
[そんな言葉を言い切る前に、主の方はさっさと反対側へと歩き出す。]
―中央ビル・4階食堂―
[自分の携帯端末を弄っていると、数名が入ってくるのに気づき、席に座ったまま軽く頭を下げる]
こんにちは、お先にいただいております。
[中には初顔あわせのものもいたが、先ほどまで眺めていたデータから相手のおおまかなことはわかった。
相手も自分のことはわかっているだろうから、特に聞かれなければ自己紹介をする気はなかった。
ユーディッドが厨房に入る様子に興味深そうに視線を向ける。
程なくして珈琲を淹れてくると感嘆の吐息をもらした]
―中央ビル・4階食堂―
ユーディットさん、私もお願いしていいでしょうか?
[尋ねると持ってきていた珈琲をひとつもらい]
ありがとうございます。
[礼を言いながら厨房に向かう様子を見送り、戻ってくれば再度頭を下げた。
淹れてもらった珈琲は先ほどとは違い]
とても美味しいです。
[再度の礼の*言葉を*]
[依頼を果たすため、総帥の居たビル付近へ向けて疾走している]
(まずい、これは、まずい)
(俺は今、間違いなく動揺している)
[少し時間を遡る]
[中央ビルの一階で見かけた女に目を奪われたその直後には、その後を追って4階の食堂へ向かっていた]
[他の面々と一緒に席に着き、気づいたら珈琲を頼んでしまっていた]
[その場であったことはそれだけだ。ほとんど会話すら交わしていない]
[だが後になって、自分が他人の淹れた珈琲を抵抗なく口にしていた、という事実に気づいて、彼は愕然としていた]
(そもそも、ターゲットが現れたというのに詳しい位置を探すでもなく、何をしていたんだ俺は…)
(しかし、あいつは確かに)
(『万華鏡』、か。まさかよりにもよって、こんなところで…)
─中央エリア・高層ビル屋上─
[不意に響く、リィィィィ、という唸るよな音。
閉ざされていた深紫がゆるりと開き、音の源である剣を見やる]
……やれ、お前が逸ってどうする、『魂喰い』。
場に満ちる『力』と『気』に当てられたか?
[からかうよに言いながら、剣の柄をす、と撫でる。
しかし、唸りは静まらず。
は、と零れるのは嘆息]
……ふむ。
上手く、『相手』がいればよいが。
過度の期待はするな?
[どこか呆れたよに呟きつつ、無造作に歩き出す。
ビルの内部へ向けて──ではなく。
無空間の方へと]
[そんな内心の動揺とはお構いなしに、絶好のチャンスが目前にあった]
[総帥がビルの屋上から飛び降りるように踏み出し、しかし何事もないように静かにゆっくりと降下していく]
[標的を前に、瞬時に頭が切り替わる]
[懐から仮面を取り出して被ると、総帥の降下予測位置の後方へ、四角を伝って回り込む]
[それは、本当に何気ない動き。
足場のない空間に歩みを進め、そのまま、すとん、と下へ降りる。
高層ビルの屋上から、下の道まで。
その距離は、語るまでもないもの。
それほどの距離を、階段を一段降りるような、そんな当たり前の動きで越えると、そのまま悠然と歩き出す。
近づく気配には気づいているのかいないのか、それは傍目からは読み取れず]
[標的が歩いている、まるで無警戒に]
(狙われているなんて思ってないのか、返り討ちにする自信があるのか…)
(恐らくは後者か。所作から雰囲気まで、なるほど、これが世界最大組織の『総帥』)
(だが、やることは変わらない)
[静かにナイフを抜くと、それを前方、総帥の首めがけ、音も立てずしかし猛烈な勢いで投擲した]
[飛来する刃に気づいているのかいないのか。
黒衣の歩みは止まる事はなく。
刃はそのまま、狙い違わず標的を貫くか──とも見えたが]
……ふむ。
お前が反応したのは、これか、『魂喰い』。
[静かな声が上がったのは、刃が到達する直前。
キン、という甲高い音が響き、飛来した刃は、何かに弾かれたように地に落ちる]
……中々に、良い『気』を持っているようではあるが、な。
[悠然とした口調で言い放ちつつ、ゆっくりと踵を返し、そして]
……して、何用かな?
[投げかけるのは、こんな一言]
[投擲したナイフの柄にはワイヤーが付いている。それを袖の内の装置で巻き取りながら、疾走、総帥に肉薄する]
(どうやって弾いた?どこまでの防御能力だ?接近戦では機能するのか?)
(押して確かめる!)
[投げかけられた言葉に応じるという考えは、はなから持っていない]
[左手に握ったもう一振りのナイフで突きかかる]
[答える事無く、突きかかる様子。
ふ、と掠めるのは楽しむような笑み]
……行動を持って、答えを成す、という所か。
[若いな、という呟きはごく小さく。
それをかき消すように、リィィィ、という音が響く。
突きの一撃は僅かな動きで避けるものの、僅かに及ばず金糸の如き長髪の一部が断たれ、風に散った]
なれば、こちらも相応の対応をさせていただくとしよう……。
[言いつつ、軽く飛びずさる事で距離を取り、腰の剣を抜き放つ]
……喰らうのはならぬぞ、『魂喰い』。
[ぽつり、小さな呟きを漏らしつつ、先に開けた距離を詰め。
下段の構えから、相手の左肩へと抜ける切り上げの一閃を放った]
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