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[とにかく大変な事態ということで話は進んだ。大変っていってたし、大変なんだな。で納得しとく気楽な家族だが]
「母さんは、アーベルのこと信用してるわ。あなたはそんなことしないって」
う…うん。…どしたの?改まって
「だから…素直に出しなさい。お父さんと一緒に謝ってあげるから」
[今度は本気で突っ伏した。前後の繋がりがわからんぞおい]
…ちょっ。信用してたんじゃなかったんかいっ。ってかそんなことしてねー!
「そ、そんな、いつのまにアーベルはこんな嘘をつく子に育ってしまったの…」
[思わず涙ぐむ母親。]
「…母さんを泣かしてはいけない…」
俺が泣きそうなんだが、それ以前に息子を疑うなーーーー
「こんな子に育ってしまって…少しはミハエル君やエルザちゃんを見習いなさい」
ユリアンとリディは!?
[とかなんとか色々言い合いが開始]
つまり…遅れたからそのお仕置きということですか…
「ええ。でも面白かったしいいでしょ」
[思わずぐってり疲れた。ジト目でみても笑みを絶やさない母。女性は強いと。ミハエルが呟いた言葉に同意しておいて良かったと思うが]
「でも何か大変みたいよ。ねぇ?あなた」
「…ああ…ギュンターが言っていたからな…」
…そなんか。どして?
「…仔細は聞いてない…」
…ふーん。
[なんとなく気楽に構えていたが、父が言うからにはそうなのだろう。と考えを改め、一度甕に汲んできた水を継ぎ足した後。*聞いた筆の特徴など口にした*]
[ともあれ、先ずは作業が先だと思う辺り、五十歩百歩なのは否めない。
二階自室まで辿り着き、部屋に入る。
と、]
っ、
[右の首筋を押さえた。
そこからじわ、と熱が伝わるような]
…何か、したっけ。
[そんな風に呟けど、思い当たる節と言えば、変な体勢で寝ていて寝違えた可能性くらいで。
それにしたって今更だ。
首を傾げながら、確かめようと上の釦を外し、前をはだけ。
部屋に備え付けてある鏡を覗き込んで]
な、
…これ、
[見えた形に愕然としたまま、数歩下がる。
それが意味することは、十分に理解している]
嘘だ。
なんで、僕が。
[呟きは殆ど音を為さず。
すぐ傍にある机の上、手に触れる紙がかさりと音を立て。
首はそちらに動く。
されど今、緑はただ虚ろにそれを映すだけ**]
― 図書館 ―
[書庫の一角、鍵のかかる書棚に並べられているのは歴代の絵師と、彼らの描いた絵の記録……つまりは「死者」の記録だった。絵の記録の方を手に取って、最近の部分のページをめくる]
・・・・・最近は事故や病気での若死には無かったが・・・・・
[近親者や親しい相手を亡くして絶望した者が、その反動のように空への憧れを強くするのはこれまでも起こったこと]
・・・・・・・・
[自らが記録したページの中に、その一人であった兄の名を見いだして、しばし手を止める。当時の司書であった兄は恋人を病で亡くし、その最期の願いを叶えようとして、海へと向かい、二度と帰らなかった]
[一人残された自分が、兄の絶望の真の意味を悟ったのは、司書の勤めを引き継いだその後のこと]
・・・・やはり、記録からでは人の心は見えないな。
[嘆息して記録書を棚に戻す。絵師には、絵の中の心が見えるのだろうか?と、ふと思った]
―綿毛の大畑のある区画―
[糸紡ぎ場に入ると。
すでに来ていた人々、絵筆盗人の話題に達し騒然としていた。
首を竦め、作業用の布袋を引っ張り出す。
それから袋を抱え
同職の子供と、畑へむかう道すがら]
聞いた、ティム? 絵師様の筆が盗まれたって。
たいせつな筆だけど、取引して得になる品でもなさそうだし、欲しがるひとなんて居るのかなぁ…
「盗人は、絵を描きたいんじゃない?」
「並んで歩みつつ、ティムはあっけらかんと]
…絵師様以外には使えないんじゃない、あの筆…。
ふつうは、そうかんがえるのだ。
[絵師以外が『力』を操るなど。これまで発想になかったから]
「でもさ、使おうとはしてみるんじゃない?
だって…もし俺が、絵師の力を手に入れたら」
[言って両手で示すティム。薄く輝くような、高みを]
「きっと、『空』へ行こうと、する」
そ ら …?
「つられ見上げ。俯いた。
絵師は、描く絵に心を封じ、溜める。
いつか皆で、空へ行くために。
――語り継がれてきたそれは伝説。
眠る前にいつも、祖母の口から聞いた、おはなし]
……そんなの……。勝手なのだ……。
─海水通路─
[広場を離れ、向かったのは都市で最も古い区画。
空気の感触が変わる辺りで足を止め、周囲を見回す。
人影や、人の気配がない事を確かめると、壁の一画に軽く、手を触れる。
ぽう、と灯る蒼い光。
直後に壁が口を開け、薄闇の満ちた空間が先に広がった。
淡い光と薄闇の境界を越え、その奥へと踏み込むと、壁は何事もなかったかのようにその口を閉じた]
[家に帰り、水を浴び、腕についた傷を見る。
困ったなぁという顔をして、それでも沁みる薬を貰うのはいやだから服でかくしてしまう。]
うーん。
なんか絵筆ないらしいよ
[親と会話で口にしたこんなこと。
それからはふとため息ついて、ベッドに頬杖ついて海を思った。]
─氷面鏡の間─
[海水通路の奥に隠された部屋。
表に出る事のない、言わば、都市の『闇』を秘める場所。
ここを訪れるのは、年に数回あるかないかだった]
……んー。
やっぱり、ないか。
なんかの弾みで、ここに戻ってるかと思ったんだがなぁ。
[はあ、と吐き出すため息は白く色づく。
隠された部屋は気温が低く、壁の一部が氷で覆われていた]
ま、取りあえず、『力』は込めとくかぁ。
……おかしな使い方は、せずに済ませたいんだけどなぁ。
[呟きながら、残った『絵筆』を取り出し、氷の壁の前へと置く。右手は、漆黒の持ち手に触れたまま。
蒼い光がふわりと灯り、それは『絵筆』の内へと消えてゆく]
[休息のあとに、外へ向かう。
布工房の方に行ったところで、代金の話をきいて頬をふくらませた。]
じゃあさ、その分、糸つくるからさ。
ユリアンに布おまけしてあげてよ!
安売りだよ安売り!
私が糸を一生懸命作るの、そうないんだからそれでいいでしょー?
「お前はそれが仕事だろう」
だってある程度で良いっていうじゃん。
ある程度はいつもちゃんとやってますぅー
[少女の手が動くと、綿は糸へと変化する。
真剣な表情で、集中は途切れることを知らない。
出来上がった糸はかなり細く、長く、親方たちが感嘆しているのなんて少女は知っているのか。
その集中が遮られたのは、大きな足音と声のせい。
長が封じられたことと、その絵が見つかったことを知らせる人によって*だった*]
……ふう……きっつ……。
[光が消えると同時に、零れ落ちるのはこんな呟き。
冷え込む空間にありながら、額には汗が滲んでいた。
それを拭こうとして、あ、ハンカチ貸したまんまだった、などと暢気に考える]
……さて、戻る……って、あれ?
[ふと、見やった氷の壁。
そこに映る影に、思わず呆けた声が上がった]
……『月』。
昇って……る?
― 水晶花の花畑 ―
[止め処なく流れ落ちる水の音は身体の奥まで響き渡るよう。
体内の水と呼応しているのか、心地好い感覚に満たされる。
荒れた心が、鎮まっていく]
……ふう。
とりあえずは、これくらいでいいか。
[咲き乱れる花のうちの幾輪かを摘み取り、息を吐く]
……そっか。
[ふ、と。
口元を、笑みが掠めた]
これで、いつでも『沈める』って訳か。
[口調に籠もるのは、安堵の響き。
ともあれ、漆黒の『絵筆』を再び内ポケットへと入れて、隠し部屋を出る]
さぁて、んじゃ、じじ様のとこに行くかぁ……。
[常と変わらぬ、暢気な口調で言って。
長の家へと歩き出す]
[――絵師はすごい職業。
多くの者の目が、そういったものであることは知っている。
皆が空へ行くことを夢見ていることも。
いつからか、そのようにして伝えられて来たのだから。
生を守る薬師。死を描く絵師。
彼との、互いの立場の違いも、分かっていた。
それでもお節介を止めなかったのは、
幼い頃から知っている者の見方を変えたくなかったから]
[幾つかの最期を看取り、死を描く絵師を見た。
薬師の子として。
死に対して何も為し得ない、己の無力さを知った。
死者を連れて行く、絵師を呪ったこともあった。
けれど、訪れた死と向き合うことしか出来ない絵師の心中は、
如何なるものであるのかと。
そんなことを考えたのは、何時だったろう]
因果な職業だよな。
[呟き、立ち上がって土を払った。思考を払うように。
摘み取った花の根を包み袋に収め薄く色付いた花畑を後にする。
途中に崩れた道を見、自分の為すべきことをと、*決意を改めて*]
[長の家へと近づくにつれ、ざわめきが大きくなり。
何事か、と訝りながら足を速めてそちらへ向かう]
どーしたの、なんかあった?
[嫌な予感を感じつつ問えば、返るのは長が急に倒れた、との言葉]
……いきなり?
[まさか、と。
零れたのは、掠れた呟き]
で、じじ様は、どこにっ!?
[今は私室で寝かせている、という言葉に、慌ててそちらへと走る。
心配そうな家人への挨拶もそこそこに、長の様子を見る]
……これ……は。
[医術の心得はないため、具体的な状態の判断はつかないが。
一つだけ、理解が及ぶ事があった]
……『絵筆』の……『力』。
[自身に取っては馴染み深い力。
その干渉の残滓が、微かに感じられた]
……とにかく、誰か、薬師殿を呼んで来て。
俺じゃ、じじ様の状態は判断つかん。
それと……。
[続く言葉は、やや言い難く。
それでも、言わねばならない、と言葉を続けた]
俺の考えが正しければ、都市のどこかに、じじ様の姿絵があるはずだ。
急いで、探して来てくれ。
[告げる言葉は、何処か、冷えて聞こえたかも知れない。
普段、軽く振舞う『絵師』とはかけ離れた様子に周囲は戸惑ったようだが、それに構っている暇はなかった]
[ひとまず、長の私室を離れ、応接室へと移動する。
それから、どれほど時間が過ぎたのか。
持ち込まれたのは、長を描いた一枚の絵]
……最悪、過ぎだ。
[それを見るなり、低い呟きが*口をついた*]
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