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―住宅街・路地―
黒江さんね。 覚えたわぁ。
私は高井百華。この子の伯母で、スナックのママやってる。
……千恵ちゃん、おねぇちゃん、よ。
[女性の店員だったから、名札は気にしていなかった。
しかし、姪にとっては20前後で既におばちゃんに見えるのだろうか。
黒江さんの肌は私より数段綺麗で、若さが溢れていて……羨ましかった]
出たわね。
[私は黒江さんの促しに従い、千恵ちゃんを壁際に寄せ奥に進んだ]
霞? ……この辺、霞なんてでたっけ。
[少し、首を*傾げた*]
……忘れたときは、遠慮なく、『浄化』すりゃいい。
[忠告のような言葉に対する言葉は、届いたか。
半ば予測していた通り、窓から飛び降りる姿に、零れたのは嘆息]
龍先輩も、近い事はやってくれたが……。
って、俺ものんびりはしてられん、か。
[誰もいなくなった窓を閉め、それから、ジャケットを引っつかむ。
戸締りだけは確認した後、ジャケットを羽織ながら階段を駆け下りた]
[走り出しながら、探すのを手伝ってくれると申し出た男性に]
あっ、私は稲田瑞穂って言います。
[自己紹介をした、思えばその人の名前すら自分は知らない。
きっと作家としての名前を聞けばすぐにわかるだろうが。]
こちらは高井伽矢、私の幼馴染です。
[自己紹介を終えると後は黙って走りだした向かうのは住宅街の方へ]
―住宅街・路地―
千恵ちゃんと、高井…百華さん。
よろしく。
[路地奥に入りながら軽く会釈した。
おねぇちゃんと訂正してくれたことに心の中で喜んだ。
こうしたのが表に出せればきっともっと友人もいたはず]
さあ。
桜が狂い咲く位ですから、気象が変にもなってるのでは。
[首を傾げる百華に答えた。
呟きを聞きとがめられていたなら、おまじないですとだけ答えるつもりだった。実際そんな程度のつもりしかない。長く続いてくれるものでもなし]
「きめるはこころ。
おもいのままに。
えらぶことなど。
たしゃにはできぬ。
ゆくもかえるも。
しるべはこころ。
やみにしずむや、ひかりにまうや。
そのゆくすえはだれもしらぬよ」
[移動しながら自己紹介する幼馴染。
オレが余裕が無いのを悟ってか、代わりにオレの名前も伝えてくれていた。
白銀の髪の人物から名乗られれば、耳に入れるくらいはしただろうか]
千恵ー!
居たら返事しろ!
[もはや形振り構わず、従妹の名を呼びながら住宅街を進んで行った]
響く、歌声。
それは、鈴の音とそして、花弁と共に、風に乗る。
ひら、はらり。
はら、はらり。
舞い散る薄紅は雪の如く。
ただ、響く歌の声の主は。
桜の帳に、その身を隠したまま──**
―住宅街・路地―
くろえおねえちゃ。
[百華に言われて、こくり、頷いていいなおす。
本をしっかりもったまま、先に奥のほうに入れられたので、遠くが霞んでいるのにはうすぼんやりとしか気づかない。
一人手前の方に立つ黒江を、きょとと見つめ。
うさぎも脇から、こっそり覗く。
おじさんの声が遠い。]
「どこだぁ〜い千恵ちゃぁあん。
ほら、飴玉あげるよおぉ?
出ておいでぇえ。」
[とか言いながら、おじさんの声はどんどん遠くなっていった。
はふぅと、息つきほっとした。]
―マンション前―
[落下の最中届いた声に、口許を笑みが掠める。
そのまま地面に激突する寸前で体勢を変え、片足ずつ着地し、……足裏からの痛みに眉を顰めた]
……あぁ、やっぱ使い辛ぇな。
多少傷付くかも知れないが、……まぁ仕方ねぇか。
[手をぱたぱたと払って]
あっ。
[おじさんの声の代わりに、知った声が聞こえてくる。]
かやにいちゃ!
[ぱっと百華の手を離し、黒江をすりぬけ霞の向こうへ。
おじさんがまだいるかもしれない、とかいう思いはすっとんでいた。
路地の間から、ひょっこりうさぎと飛び出した。]
千恵ちゃん、いたら出ておいで。
[伽矢と一緒にこちらも声に出して名前を呼ぶ。
歌声と鈴の音が今はしっかりと聞き取れた。近くにいる二人はどうだっただろうか?]
千恵ちゃん、返事して。
―住宅街・路地―
[千恵にも言い直されて頷き返した。
子供なら逆に聡く微妙に頬が緩んだことも気づけただろうか]
…行ったみたい。
誰か頼れる人がいるなら、移動しましょうか。
[男の声が遠ざかり、千恵と百華を振り返って提案した。
霞も流れ薄れてゆき、先ほどよりずっと若い声が千恵を呼ぶのが聞こえてきた]
あ、待って。
[駆け出してゆく千恵を百華と二人追いかけて路地を出た]
[呼びかけながら駆けて。
そして見つける大切な姿]
千恵!!
[他に何かが居るとまでは気付いていなかったが、従妹の姿を見つけて急いで駆け寄る。
手を伸ばし、膝から崩れるようにしながら従妹を抱き締めた]
千恵……良かった……。
[千恵の声と路地の間から見えたうさぎ、千恵の姿]
千恵ちゃん。
[駆け寄っていき抱きしめようとして、それよりも早く伽矢が千恵に駆け寄っていた。
自分は二人の後ろに立って安堵のため息]
よかった、千恵ちゃん、心配したんだからね。
[目の端にはちょっと涙が浮かんでいた]
ありがとうございました、おかげで見つけることができました。
[一緒に探しに来てくれた雪夜にお礼を言う]
[階段を駆け下りる途中、微かに聞こえた声。
覚えのある歌だった]
……『しるべはこころ』か。
[小さく呟いて。
最後の一フロア分の階段は、残り三分の二から飛び降りてショートカットした。
取材のために駆け回るのが常の生活、基礎的な身体能力は決して低くはない。
外に飛び出した時、史人の姿はまだあるか]
……暴れるのは勝手だが、あんまり目立ちすぎてもまずいんじゃねーの?
[もしあるならば、呆れたように。
こんな言葉を投げも*するのだが*]
[黒江の頬がちょっと緩んだのに、気づくとちょっと嬉しくなった。
なんとなく、これが『ねえちゃ』と呼ぶ効果なのかなとは薄ぼんやりと理解したり。
そんな黒江から静止の声をかけられてもお構いなしに。]
かやにいちゃー!
[ててってと路地から飛び出し、伽矢に飛びつきぎゅぅとしがみついた。]
よかった、かやにいちゃ、いたー。
[逆に捜されていたのだが。
そんな事はおかまいなしに、嬉しそうに頬をすりよせた。]
―住宅街―
[千恵に駆け寄り抱きとめる姿。
その後ろからやってくる人々をじっと見た]
えらぶことなど。
たしゃにはできぬ。
[小さな呟きは近くの百華にも聞こえたかどうか]
よかったね。
[心配したという瑞穂の言葉が聞こえて、言った]
みずねえちゃ!
[瑞穂も一緒で、わぁと嬉しそうに顔を輝かせる。
知った人が多くて幸せそうに。
心配したと言われると、ちょっと首を傾げたが。]
ええと、ええと、ごめんなさい。
[何だかおおごとになっている、そんな雰囲気も微妙に感じ取れたので、素直にあやまった。]
うん!
[黒江には元気良く、うさぎといっしょに頷いた。
呟きは遠くて、聞こえなかった。]
さぁて。
……と思ったが、出向くまでもないようだな。
[近付いて来る気配の方に目を向けた]
気配も隠せねぇ奴だ、喰えたとして大した力にもならんだろうが。
まぁ、肩慣らしにゃ丁度いいか。
[躊躇も何もなく呟く。
一度手を握り、開いて]
お前こそ、隠れといた方がいいんじゃねぇか。
『非力な一般人』なんだろ?
[掛かった声には振り返りもせずに言い。
やがて現れた『憑魔』に、にやりと獰猛な笑みを*向けた*]
千恵…怪我、したりしてないか?
一人で怖くなかったか?
[従妹の姿を見つけたことで、オレの身体に走っていた緊張が途切れた。
涙が溢れそうになったが、そこは従妹の前と言うことでどうにか堪える]
………お袋も。
それと……?
[いつもは敬遠しがちな母親の姿を見ても、今回ばかりは安堵の色が浮かんだ。
次いでもう一人の人物を見遣るが、どこかで見たことが、と言う程度ですぐさま誰とは直結しない]
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