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確か、最初は全てのカードを表にして、一枚だけ裏にしてシャッフルするのでしたか。
[購入時に聞いた手法を思い出しながら、その手順通りに実行していく。
裏返しにしたカードは、幻視が起きた隠者のカード]
そしてシャッフルの間に呪を一つ唱える…。
呪は、確か───。
[一度瞑目し、記憶の引き出しの中を探る。
ややあって思い出した言葉は]
[紡いだ言葉は力を持ち、リィン、と微かな音を伴って裏返したカードを淡く光らせた]
……───!!
まさか、本当に……?
[細い眼を見開き、驚きの声を溢して。
淡く光ったカードをしばし凝視する。
それから通常のタロット占いの時と同様、カードを纏めて山札を作り上げた。
表にされたカードの中で一枚だけ裏にされた、光るカードが一番上になるようにする。
そして、ゆっくりとそのカードを横に捲って展開した]
……これ、は。
そんなはずは…!
[捲られたカードである隠者の位置は、正位置。
それを見て再び驚愕の声を上げる。
大抵のカードは正位置だと良い状態を示すものが多い。
隠者のカードもまた然り]
[けれど]
問いに対する、正位置。
つまりは肯定を意味する……。
そんな、人狼はローレンス様のはずでは───。
[示された結果が信じられなかった。
シャッフルの時に紡いだ呪、それはカード自身、ひいては幻視される人物に問いかけたもの。
呪の意味は「貴方は人狼ですか?」だと、行商人から聞いている]
……………。
…そうです、他の人でも試せば。
そうすれば本当かどうかが──。
[そう思って全てのカードを見てみたが、どのカードにも人物は重ならない。
先程占いに使用した隠者のカードですら、何も視えなくなっていた]
制約か何かがあると言うことなのでしょうか…。
……あの一度だけでは、簡単には信じられません。
占いはあくまで可能性を示すもの。
外れる可能性だって、あります。
[自分の占いの的中率も6割程と、外れることは多々ある。
これ以上占うことが出来ないならばと、カードは再び纏めて机の中央に置かれ。
ようやく着替えを行い就寝の準備をする]
[呪を用いた占いに関しては外れが無いのを知らぬまま、ベッドへと潜り込み、そのまま静かに*夜を明かした*]
― 時間軸・不明 ―
[アーヴァインの埋葬を始めとした、激動の一日。
疲れは普段の日常よりも各自大きかった事だろう。
男は、瞑っていた眸を開いた。]
…………。
[廊下へと出る。
赤い声の直後だった。
男は知る由はなかったが、襲われたネリーは、
庭に出て邸の中に戻ってきたところだった。]
[暫く廊下を歩いて行けば、ある扉の前に、
暗い中に広がる暗渠のように広がる染みがあった。
場所は、普段客人達の往来があまりない廊下。
使用人達が殆ど居なくなった今となっては、
何が起こっても、あまり人の目に触れない場所だろう。]
[襲われた後に引きずり込まれたのか、
襲う前に引きずり込まれたのか。
血溜まりが広がってゆく中では、
それを推し量る事は既に難しくなっている。]
[ネリーの姿は扉向こうで見えない。
首の深手の傷と流れた血の多さで
確実にもう死んでいる事は分かる。
悲鳴を上げる暇もなかったろうが、
息絶えるのも早かった筈で苦しみは短かっただろう。]
[廊下の奥まで行ったところで立ち止まる。
何事か言いかけようと唇は微かに動いたが、
ぎゅっと唇を引き締めると踵を返し、戻った。**]
―個室―
[埋葬を後ろの方で見守った後は、再び個室へと引き返した。
栞を挟めた本を何気なくぱらぱらと捲れば、人狼の記述のあるページに辿り着く。
その中のある文章に目を止めた、その時だった]
……ぐ、
[呻き声を上げ、顔を押さえてその場に崩れた。本が床に落ちる音。
瞳の紫の色が、じわりと濃さを増す]
また、か……ということは……
[ゆるゆると顔を上げる。
予想通り、視えてはならないはずの存在がそこにいた]
なるほど。グレンさんとヒューバートさん、ですかね。
御愁傷様でした。
[彼女が疑われていた様子なのを思い出す。彼らが動いてからどれだけの時間が経っていただろう。
死人に口無し。そう思っているから、彼女に対して偽物の笑みを向けることはない。
暗い目をした少女が言葉を返すこともまた、ない]
ああ、そう言えば。
……まあ、まさかとは思うけれど。
[ふと、先程読んだばかりの記述を思い起こして。
少し考えた後、彼女の幻影に手を伸ばし、触れる]
……!
[途端に細い目が見開かれた。
快活な印象の短髪の少女の姿が歪み、変容した為に。
彼女は何も語らないけれど、その姿は如何見ても――]
く、くく……っ
本当に、本当か……!
[こらえきれず笑いが溢れる。
自身がその能力を持ち合わせていたという事実と、そして。
緩慢に立ち上がり、“それ”を見据えた]
残念でしたね。
……とっとと失せろ、「人狼」。
[目をみひらき、口角を上げ、相手を見下すように告げる。
紫掛かった目の奥は、いつも以上に冷えきっていた**]
[鎮魂の曲を捧げ終えた後も、立て続けに曲を紡いでいく。
戸惑ってばかりではいられない。
いられないならどうするか。
何をどうすれば、と。
そんな思いを巡らせながら、無心に音色を奏でてゆく。
それに集中していたから、夕方に起きた出来事に気づく余裕はなく。
自室に戻って間もなく、深い眠りに落ちていた。*]
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