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「――それに触れてはなりませぬ。
近寄らぬが、懸命。速やかにお離れになって下さい。」
……?どうして?
[嗚呼やはりあの物への理解には程遠かったか。如何しても在るまい。
万が一触れてしまっては間違い無く仔のみで対処出来るとは思わぬ。
近場に誰そ居れば凌ぐ事は可能ではあるが、好都合に居合わせる望みを掛けるは愚行に等しい。
――なれば万が一には、私が姿を転じれば最悪の事態は防げるが]
[其の時には、後々に王の手を煩わせる事必至。出来うる限り避けたい事である。
さて如何するか。そうも云う間に欠片との距離は随分と詰まりつつあった。]
「…あれに触れては、災いしか起こりませぬ。
仔の身に何かあれば――王が心配のあまり飛んで来られるやも。
心配をお掛けするのは、御仔の本位ではありませぬでしょう。
それに、王の叱りを受けるのは私め故。どうか私の為にも――」
……、ととさま、くるの? ここに?
[――不覚。逆効果であった。
心成しか嬉しげに見下ろされようとも、困惑するしかあるまい。
しかし私の身に降りかかる怒りなど些細も気にして居らぬ様子…
僅かながらにでも心裂いてくれれば、私とて冥利に尽きるのだが。]
―― 東殿・どこかの廊下 ――
[カシャカシャカシャと、僅かな羽音を響かせながら、人気の無い廊下を機械竜が飛んでいる。何かを探すように、或いは見回りでもしているかのように]
[その額に嵌っていた天青石が、今は、焔の色のルビーに変わっていることを気付く者は在るか...?**]
…はい、我君から教わりました。
[正確には口伝ではないが。そのことを教えてくれたのが皇竜であるのは事実。
胸元に手を当てたまま、溜息をつく]
強力な魔法具に多くあるよう、彼の剣にも意思があるとのこと。
一番良いのは諸王の方々を開放し、必要とあれば使っていただくことではないかと、私は思います。
[ミリィとオトフリートの意見を聞きながら、そう答えて]
……それは、止めて欲しいです。
[オトフリートの疑問には否定の材料がなく。
ほんの少しだけ顔が青くなったかもしれない]
解放するのにも力を使えば簡単には思いますけれど。
……竜王様方の結界としても、対するは立場を同じくする方々ですから
[エルザの答えには不思議そうにするまでで。
それから失礼をと東殿の中に入った。]
―東殿:回廊―
[中に入る。
何か音がしでそちらを見ると、機械の竜が飛んでいた。]
[色の違いには気づかない。]
なにをしているんでしょう?
[まぁ良いかと、そこを離れ、ゆく先。
小さな人影がそこにあった。]
[私の忠告を少しは心に留めてくれていると思うは…思い上がりか。
仔は自ら歩み寄りこそはしないが、その場を離れようともせぬ。
至極ゆっくりと、しかし確実に此の前へと欠片は近付いた。
幼き腕でも幾らか歩み出て伸ばせば、安易に触れられる距離。
僅かに上がる腕を制するように、身体を絡ませる力を微か強くする]
「ベアトリーチェ様。悪い事は云いませぬ、どうか――」
[此処までこれば、身を転じるのも覚悟せねばならぬ。
強い意を感じたか、幼子の視線が己へと注がれる。しかしながら好奇心と――父に会う期待と相すれば完全なる静止には遠いか。
その欠片へと、 指先が僅か、触れた。]
[幼子だ、というのは認識出来た。
危険な自体が起きていると、知っているだろうか。]
[気がかりで歩を進めると、子の目の前に黒いのがいるのに気づく。]
あ、それは、だ――!
[口に出すのは、かなり遅かった。
あわてて駆け出す前で、変化が始まる。]
―――自室
……すぴー……。
[結構な長い時間寝ているわけだが、いまだに起きる気配が無い。
力を消費しすぎたとか、疲れていたとか、そういう尤もらしい理由ではなく、ただ単にルーズに寝こけているだけである]
ん……ん。
[悩ましげな声を発して、ごろりと寝返りを打つ。
その勢いで、大方の予想通り大股開きになり、とんでもない格好になった。
開けっ放しにしていた窓から流れる風が心地よい。なんとも、寝るには絶好の条件だ]
―――。
[ゆらり。
ゆらりと、その窓から降りてくるのは黒い塊―――昨夜、大騒ぎが起こった混沌のカケラだ。
なんとも頼りなげに風に吹かれ、もしくは、力の波動に引かれて、部屋の中へと舞い降りる]
……んふふ……。
[そんなことも露知らず、ナターリエが寝笑いを漏らした。
きっと、なんかエロい夢でも見ているのだろう。
そのナターリエのすぐそば……まさにギリギリ触れるか触れないかというところに混沌のカケラが落ちる。
先程、寝返りをうっていなければ触れていたのは間違い無い。
なんとも、運の良い話である]
……ああ……いいわぁ……。
[ごろり―――あ]
―――東殿・回廊
でーーーーーーーーーーーーーっ!!
[目覚ましと言うには、あまりにもな目覚まし。
元々、攻撃力は高くないのに、寝起きばなに襲い掛かってこられたのだからたまらない。
ナターリエは着るものも着れずに、その場から逃走。
簡単に言って、ストリーキングである]
何!?
これは、何なのよぉ!?
[頭が回らない。こんなところにこんなものが出てくるとは思いもしない。
―――そのナターリエの後ろからは、ジャイアントスラッグがぬめぬめと彼女を敵とみなして追いかけてきていた]
えーと。
確か、えーと……。
[全速力で走りながら、東殿のMAPを頭の中に浮かべる。
誰かが追い払ってくれるのが一番ではあるが、最悪自分で対処しなければいけないときのために、ある場所へと向かう]
…! あ…
[凝縮された闇が一寸解き放たれる様に仔の腕へと絡みつく。
己へと届く直前に、欠片はその形を変えて引き下がるが――
此処までこれば幼子の眼にも、それが異常だと感じ取ることは既に容易い。
怯えるように一歩、その小さな足は下がる。
姿を変えたそれは瞬きの間に肥大し、幼子の遥か幾倍の大きさへと変貌した。]
……っ!
[振り下ろされる触手の撃を防ぐは突如現れた一陣の風。
とっさの事に何事か判らず、幼子は眼を見開いた。]
逃げて!
[ティルに指導を受けて良かったと思ったかどうか。
発動した魔法は、子を守るのに確かに成功した。]
[闇の少ない朝方だ。戦うには不利。
しかしせねばならないときもあるのだ。]
[まったく、本当に時折荒事に絡んでよかったと、子を守るために、わずか引いたそれとの間に身を滑らせた。
唱えた呪文は、成立。]
切れ!
[入り込む風は刃となり、触手を切りつける。力は人とたいして変わらなく、弱いが。]
確か……此処を曲がって……あそこを直進して……。
[全速力で走りながら、いまだあまり覚えてない東殿のMAPを思い浮かべる]
「―――」
[後ろからは、それに追いつけずも、引き離されずにずっと混沌のカケラが追いすがってくる]
……しつっこいわねぃ!
で・も!後は、そこの角を曲がって……!
[速度を緩めずに、十字路を曲がる。
―――と、そこにオトフリートとベアトリーチェの姿が見えた]
―――お仲間さん!?
って、あああ、そんなに荒事に強そうなメンバーじゃないかしらぁ……。
―――ああもう!なんか、他にもいるし!
[その仲間を発見したと同時に、もう一つの混沌のカケラも発見]
「…! 闇竜殿!」
[欠片との間に立ち塞がる人物に、私は声を上げた。
しかしその通り、力を持たぬ仔が傍に居ては、妨害にしかならぬ。]
「ベアトリーチェ様、お逃げ下さい。
この場は貴方様には危険過ぎます故!」
[仔には逃げろとの言葉に従えと促せど、足が竦んだか一向に動く気配を見せぬ。
一、二歩と更に下がりはすれど、ただ声も上げず怯えるのみ]
[子が逃げ出せぬ様子を感じとり、攻撃のために開いた口を変える。
守るための陣ならばと、昔使った言葉を重ねた。]
――界!
[簡易の防御壁。
子を守るために、風はそのまわりを廻るはずだが、発動を目でみれはしなかった。]
[子の方をむいた為、敵は背後というせいもあったが。
見えてしまったアレが、呪文より声をあげさせたせいだ。]
だから服を着――!
[叫ぶ言葉は、向こう側のかけらに気づいたからか、
それとも、背後からの攻撃を背に受けるせいか]
……オトフリート!?
えっと。ああ、もう!ごめん、もうちょっと待っててねぃ!
[攻撃を受けたオトフリートへと声は上げたが、速度はゆるめず、そのままオトフリートとベアトリーチェの横をすり抜け、そばにある扉を開けて飛び込んだ]
―――。
[ざぷん。
大きな波音を上げて、ナターリエが浴槽へと飛び込む。
体の隅々まで染み渡る、水の心地よさ。
その冷たさは寝起きの頭に丁度よく、神経が針の先程鋭くなる感覚。
速やかに―――覚醒していく。
少しだけ恍惚の表情を浮かべると、薄い笑いを浮かべて、水を体にまとわりつかせる]
―――さあて……。
反撃の始まりかしらぁ?
[水を体中にまとわりつかせた姿―――少しだけ濁っているので、体の各所は隠された―――で、浴室から静かに回廊へと移動した]
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