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見分ける者に策があるとしたら?
推測でしかものを言えないが、隠れていると言うことはそれなりの方法を持っていると言うことなんだろう。
人狼の逃げ場無く露見させることの出来るような策をね。
それに……多少の犠牲はやむを得ないと、そう考えているかも知れない。
確実に人狼を追い詰めるために。
[全ては憶測]
[けれど無いとは言い切れない可能性]
ああ。
ただ俺が知っていることはそう多くないよ?
[マテウスに頷く]
聞いていたか。
そうだな、保証までは出来ないが。
信じていいと思えるだけの反応を、こいつはしている。
今だけじゃない。最初に話を聞いた時にも。
[ウェンデルの言葉に、静かに返す。
今の彼に信じろというのもまた、酷だとは思いながらも]
混乱を巻き起こしたのはイヴァンじゃないか。
俺はやるべきことをしているだけ。
[ベアトリーチェを護るために]
けれど、言いたいことは分かるよ。
…ベアタを部屋に連れて行く。
これ以上ここに置いたら、発作が起きるかもしれない。
[肺の病気]
[極度の緊張を走らせているベアトリーチェ]
[精神状態は病状にも作用する]
[マテウスにそう告げて]
[引き止める者が居ないようならベアトリーチェを抱えたまま厨房を出ようとする]
わかる範囲でいい、
わからないところはあとで落ち着いたときにまたわかるやつにきくさ。
ライヒアルトが見極めるってなんのことだ?
それとなんだかウェンデルがただならない感じだったんだが?
何か知らないか?
[ウェンデル本人にもその言葉は聞こえたかもしれない]
イヴァンが本当に、「そう」だって分かるなら。
ただ伝えるだけじゃ、きっと、ダメ。
あたしは、貴方を信じたいけど。
[それが、今怯えている少女を疑うことだとしても]
それが、皆も同じだとは、限らないから。
…それからじゃ、きっと遅いよ。ゼルギウス。
……だが、きっと水掛け論なんだろうな。
[少女を庇ったまま、頑なに反論するゼルギウスに呟いた。
それ以上は言わず、出て行く二人をもう見ずに、背を向ける。
そしてゼルダと同じように、イヴァンの傍に立ち肩に手を乗せた。
『決意を持って触れ印をつけなさい。』
『その手は狼の牙を退ける守りとなるだろう。』
あの時つけた印は、まだイヴァンの元に。]
ああ、そうしてやってくれ。
[ゼルギウスに提案に頷いて、
その後ろにいるベアトリーチェに視線を一度向けて再度ゼルギウスに戻し]
頼んだ、ゼルギウス。
[向ける視線は信頼をおびたもの。
かつて彼に向けた言葉に偽りのない信頼の意]
[子供の言葉には、答えられない]
………私には、未だ、そうは思えません。
[エーリッヒに返す口調は、短く、跳ね除けるよう。
『聖なる証』を抱いた左手を、胸に当てる。
じくりと痛む。
肯定してしまえば、きっと――もっと]
[言い争いよりは、遠い位置。
声は耳を掠め過ぎ去っていくばかり。
誰が話の中心に挙がっているかは理解出来ても、何が正しいと判断するまでには至らない。
厨房から出てくる、ベアトリーチェを抱えたゼルギウスの姿。
ゆるりと立ち上がり、彼の居る方へ視線を向けた。
見るのではなく、ただ、視界に入れるだけ。]
[エーリッヒやウェンデル達。
アーベルの死を近くで見た人々の会話は届きにくく。
耳に入るのは、寧ろナターリエとゼルギウスの声ばかり]
うん、二人を離した方が良いのは、確か。
[ゼルギウスがベアトリーチェを連れて行くのを短く肯定し。
近くに来たナターリエを見つめる]
ナターリエは、イヴァンを信じる?
[こくりと、マテウスに頷きを返す]
何か分かったら、後で教えてくれ。
[信頼を含む視線には信頼を持って返す]
[こちらも、彼に信を置いているのは以前からのこと]
[それはこの状況になっても変わらない]
…迅速に、人狼を見つけ出すのも大切かも知れない。
けれどそれに確実性がないのなら、結局は同じだと思う。
[ナターリエに返す言葉はやはり相手の考えに反するもの]
[それは以前エーリッヒに返した言葉にも似ていた]
[相手の追及が無いと見ると、ベアトリーチェを抱えたまま厨房を後にする]
─ 一階厨房→二階へ─
―時は移ろい―
[部屋に戻ったのは何時になったか。どっと、疲れていた。
ベットに横にはならず、腰かけ。
服の中にしまっておいた木箱を膝に乗せ、今日もその場に座ったまま暫し時を過ごした。
イヴァンにつけておいた印は、誰にも気づかれる事なくまだ生きていた。]
あまり、触れ回りたくなかったんだけれどな。
[だが誤魔化してもきっと彼は納得しない。
どころか逆効果になると思った]
人と人狼を見定めるには二つの方法があるらしい。
一つは生者を見極める術。
もう一つは…死者を、見定める術。
[支えている同居人を見下ろす]
アーベルが人狼でないと言い切った。
それを聞いていたのなら、分かるだろう。
そういうこと。
[そして顔を上げてウェンデルを見る]
…花を持つもの、かな。
俺はそちらに関しては本当によく知らない。
ただ、証となるものがあるとしか。
[跳ね除けるような回答。
胸を押さえるような仕草に目を細める]
ウェンデル。
お前も、大丈夫か…?
[思考が霧に飲まれようとしかけた時に――かたと、箱が揺れた。]
…!
[箱の角、組み合わさった木板の僅かな隙間から、零れ落ちるのは銀色のきらめき。
立ち上がり、銀を追う。
それは窓辺から一度外へと流れ、粉雪に紛れて大気に溶けた。
再びそれが姿を現すのは、牙を持った獣の前。
銀の粒子は獣が触れえぬ結界となり、イヴァンのその身を守るだろう。
遠く、銀が動くのは感じ取れ。何が起こったのか理解できた。
イヴァンが起きていたか。牙を持つ者が一体誰なのか。
それは分からなかったが。
自分は、選んで、そして守れたのだと。]
…よかっ……。
[人知れず、部屋の中で膝をつき。
肩を抱くと、菫から零れた雫が、床に一粒、落ちて消えた。]
[マテウスの台詞は聞こえた。
しかし、何も口にはしない。
エーリッヒの問いかけにも曖昧に首を振るのみで。
無言のままに踵を返して、水場へと赴く。
付いて来る子供を、拒否することはなかった]
[エーリッヒの説明に]
なるほどな…、
[思案する姿はエ−リッヒにはどう映ったか]
これ、あいつが落としていったんだ。
[手にしてエーリッヒに見せたのは団長の鎧の欠片]
それと他に動物の毛玉、そっちはナターリエがもっている。
もし、その話が本当なら。
はめられたってことだな。
[床に横たわるアーベルを一瞥し大きく息を吐く]
[二階へ向かう途中の廊下]
[先程の騒ぎの痕が残る場所]
[そこにはウェンデルの姿]
[朱い痣とは別の紅を加えた手]
……っ!?
[不意に視界が揺らぐ]
[記憶の靄が、また少し薄くなった]
[今の彼と似た姿を、以前見たような気がする]
[あの時はもっと紅かった──]
[眩みに耐えている間にウェンデルは水場へと向かう]
[声はかけられず]
[眩みが治まった後に再び部屋を目指し二階へと]
[マテウスの声。ウェンデルの動き。
片腕は塞がったまま、階段の方を見た。
ベアトリーチェを抱えて階段を上がってゆくゼルギウスを見送る]
…わからない。
[毀れた呟きは、小さく。
疑っていたはずの少女。けれどもう一人疑っていた相手は人間だったという者が居る。
色々なものを見て。色々なものを聞いて。
そう、答えは変わる事だって、ある。
ならば]
─二階・ベアトリーチェの部屋─
[抱えたベアトリーチェをあやすようにしながら部屋へと辿り着く]
[扉を開け、中へと入り]
[寝台へ近付くとベアトリーチェを座らせ、その隣に腰を下ろした]
ベアタ。
大丈夫か?
[心配の色を浮かべ、少女の顔を覗き込むようにしながら声をかける]
そうだな。
疑惑の目を逸らそうと。
或いは、俺達の数を減らそうと。
[御伽噺。生き残るのは二つに一つ]
そういうことだと、思う。
[ゼルギウスの声は耳に届いたが、反応はしなかった。どこまでも平行線を辿り無意味だったからだ。
ゲルダに声をかけられ、翠をみやる。
問いには、間を置かず緩く頷き応えた。]
ああ。信じているよ。
イヴァンは、単純で馬鹿だけど。
嘘をついて人を陥れるような奴じゃない。
それくらい、分かってる。
[ずっと村に居たイヴァン。付き合いは、ゲルダと共に一番長い。
無条件で真っ先に信じらるのは、二人だった。]
ありがとうなエーリッヒ。
[考え込む様子に、邪魔をしないように簡潔な礼の言葉だけ述べ、
視線はイヴァンに向かう、
自分でもいけないとは思いつつも咎めるような視線となり、
話しかければきっとろくなことにはならないだろうと判断し、
イヴァンを避けるようにしながらもゲルダの傍へナターリエに向ける質問に視線がそちらへいく。]
[水に、手を浸す。
穢れを落とそうと。
冷たい。
冷えていく。
冷めてしまう。
手についた液体が流れ落ちても感触は消えず、朱い花も消えない。
それどころか、ますます、鮮やかさを増しているようだった。
替えたばかりの白いシャツにも、残る色。
あの男の衣服は、もっと赤く染まっていた。赤く、染めた]
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