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[場は混乱していた為か、誰に遮られることもない]
[片割れの声すら聞こえないかのように]
[エーファは白猫のすぐ傍まで来て、屈みこんだ]
……、
[運ばれていくエーリッヒには目を向けずに、哀しい声で鳴く赤い白猫に両手を伸ばす]
[赤で服が汚れるのも構わずに、その生き物を抱き寄せた]
私は、大丈夫。
―…みて、いなかった、から。
アーベルは……
フォルカーちゃん達は、大丈夫…?
私よりも、あの子たちの方が心配だわ。
[こちらを案じて来てくれたアーベルに、弱く頭を振って。
自分よりも、彼のそばにいた双子の方が気がかりで不安げに彼を見上げた。
祝福ではなく呪いだと小さく囁いたゲルダには、なにも言うことが出来ず。
ただ彼女の手に自分のそれを重ねた。]
エー、ファ?
[手を伸ばしたままに、猫を抱き寄せて赤に染まる妹の名前を呼ぶ。
震えを抑えようとしてぎゅっと一度手を強く握り、つめが手のひらに食い込む。
それで幾分かは収まるだろうか、再度手を伸ばしたまま]
大丈夫…?
[エーリッヒがクレメンスとエルゼの手で運ばれていくのは目を伏せ黙祷を捧げた。
ゼルがこちらを気遣いアーベルに頼んでくれる声が聞こえると、ゼルは大丈夫かと不安と心配の入り混じった瞳で彼を見つめて。]
…んー…それはちょっと誤解ですね。
エーリッヒさんは自分で、誰でも人狼の可能性はあるっていってましたし、進まねばならない道なら、進む意外ないでしょう。
[違うと思いたい気持ちというのには語弊があるというように答え]
別に大した理由じゃないですよ。
ただ、さっき服をはだけてみてもわかりましたが、事件前から比べても太ってないどころかむしろ痩せてましたからね。
[探る視線になんとも薬師らしい回答を述べ]
掃除でもすっかな
[顔についた血を服で拭う。血溜まりがここにあるのはよろしくないなとどこか冷静な思考の訴えに従い、掃除をはじめ、その後自分についた血も洗うために浴室に*向かうだろう*]
―広間―
[ブリジットの手が重なる。
そっと、彼女の方を見て。
それからちいさく笑った]
ありがとう。
[アーベルが来たからもう大丈夫かな、と思えど、
その手は優しくて、離し難い。
双子のことに言及するのに、そちらへと視線をやった。心配そうに]
―二階/自室―
[ライヒアルトの声が何処か哀しげに聞こえるのは気のせいだろうか。
女はエーリッヒの事を未だ知らず少しだけ不思議そうな貌をする]
あったかいね。
[同じ言葉を返して微かに笑みを浮かべた。
出会ったばかりの頃は勝手にライヒアルトの傍に寄り
何をするでもなく一緒に居ようとしたけれど
彼の方はなかなかそれを受け入れてくれなかったように思う]
ラーイ……
[名を呼んで隣り合う彼の方へと身体を向ける]
私はラーイが大好きよ。
だから、ラーイと同じが良かった。
[女は自分と彼が違うことを識っていた]
―二階・ナターリエの部屋―
[微かな笑みにつられるように、僅か唇を緩ませる。
最初はこんな風に並んでくる少女が嫌で。物理的に振り払ってはクレムに鉄拳込みでも怒られたりして。辛抱強く繰り返されるうちに、いつのまにか。何よりも居心地のよい場所になっていた]
なに?
[間近で深緑と菫が交差する。
彼女が既に真実を知っていることを彼は知らない]
俺も、ナータが大好きだよ。
同じでありたいと思っていた。
[だからそれは、人か人狼かの話ではなく、神に仕える者として。
けれど既に、過去形となってしまっているのだった]
[小さな小さな声で、呟いていた]
[近くにいても辛うじて聞き取れるか分からない程度の音量]
[周囲の音にまぎれてしまうかもしれない]
あのひとは、どっち、だったのかな。
[白猫への問い]
[聞いているのかいないのか、猫は哀しげに鳴くのみで]
ごめんね、わからない、や。
人間、だったら、……まもって、あげたら、よかった、ね。
[何かが抜け落ちた様な無表情で]
[赤く固まりかけた猫の毛を、撫で続けていた]
─ →広間─
[階段を下りる直前で一度足を止めて、オレは一つ深呼吸する。
階下の空気が重いように感じるのは、気のせいじゃないよな、多分。
さっきは驚き過ぎて気にしなかったけど、濃い鉄錆の匂いがして少しくらくらする。
ふるりと首を横に振ると、もう一度深呼吸してからオレは階下に降りた]
[降りた時にはゼルギウスとヴィリーのやり取りは終わっていたかな。
床の掃除を始めていたゼルギウスを手伝おうとオレは傍に寄る。
その途中で一回広間を見回し、ゲルダの姿を探した。
…ブリジットの傍か。
……アーベルも居るな。
アイツに良い印象は無い。
人狼かそうでないとか抜きにして、警戒する相手だった。
だけど意識を向けたのは少しだけ、今はゼルギウスの掃除を手伝うことにする]
一旦溜まりを吸い取って……そこから水拭きかな?
[血の掃除ってあんました事ねぇから分かんねぇ。
ゼルギウスなら仕事上、少しは知ってるかな?
アーベルに先に風呂に入るよう言われてた>>68から、そうするならオレが今やっとくと引き受けて。
そうじゃないなら一緒に掃除を続けた。
まぁどっちに転ぼうがオレは最終的に掃除用具を引き受けてゼルギウスが浴室へと向かうのを見送ることになる]
―広間―
ああ、いや。良いよ。
僕も、…話させてもらって助かったから。
[アーベルの言葉に笑って、それから震えているという言葉に少しきょとんとして。
手に持ったストールを見ると、困ったように笑った]
そうだね、
ありがとう。
[そっとブリジットの手から離して、首にストールを巻きつける。
先ほどと同じように、そっと前をピンで留めて]
エルには言わないでおいてね。疑うとかじゃなくて、言うと面倒そうだろう?
[気付いたのだろう、と予想して。アーベルには少し笑いかけた。
それから、視線を感じてそちらを見ればエルザの姿があった。ただ、そちらに近づくことはせずに]
ブリジットは大丈夫かな、アーベルにまかせれば。
― 外/井戸端 ―
[昨日までは、建物のすぐ側を見張っていた自衛団員の姿は無く、耳を澄ましても波の音しか聞こえない]
着替えもしねえとなあ…
[ぼやきながら、冷たい井戸水で手を洗う男の身体にはしかし、返り血もほとんどついてはいない。ナイフを拭った袖口と、直接エーリッヒを刺した手が赤く染まっているだけだ]
[ゲルダから礼を言われると、小さく頭を振った。
自分にはこんなことくらいしか出来ないのが申し訳なくて。
ゼルが掃除をしようとするなら手伝おうかと思ったが、今の自分は迷惑になるかもとも思いどうしようか思案するようにアーベルを見た。
彼がゲルダにストールを巻くよう勧めたのを聞くと、邪魔にならないようにそっと手を離して彼女に弱く微笑んだ。]
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