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ミハエルは何も悪いことをしていない。
嫌な子だとは思わない。
他の皆も同じはずだ。
[選び、かける言葉は、正しいものか、間違っているのか。
それでも気遣う心は、伝わってくれるだろうかと。
慣れない行動をする自分に、ずいぶんと変わったものだと思いながら、
ただ今目の前の少女は、あの時のことを思い起こさせて放っておくことはできなかった。
そのまま落ち着くまでの間は、ミハエルを撫で、その感情を受け止めるように。
やがて、抑えるように上がる泣き声も聞こえなくなり、眠りについたミハエルはベッドに寝かせた]
慣れないことは、難しい。
[椅子に座り、親友と顔を見合わせて、向こうの表情はどうだったか]
ゼルは、大丈夫か?
後悔の無い様に動かなくて。
[そう聞き、親友の答えを待ち、ゲルダがくれた最後のパンを*べていた*]
―道具屋―
[抑えていた分の反動は大きくて、気持ちは中々静まらなかった。
けれど、支えてくれる手があたたかくて、それが安心できたから。
自分を呼ぶ、別の声が聞こえた頃には、大分落ち着いていた]
……レェ、ねえ。
……うん。少し、話し、してた、だけ、だけど。
[側に、と言う言葉に、小さく返して頷く。
イレーネに頭を撫でられると、にぃ、と目を細めて、その微笑みを見上げた。
笑っている様子が、逆に寂しそうで。
先に言われた事の意味が、改めてわかった気がした、けれど]
……レェねえ。
お代、明日、持ってくる、から。
[何をどう言えばいいのかわからなくて、結局、言えたのはこんな言葉]
あ……そうだ。
みんなに、報せないと、だね。
[事態を知らぬ者の方が少ない事は知らない。
だから、ごく自然にこう言って]
……大丈夫、ちゃんと、立って、歩けるから。
行こ、リィにい。
[歩けるかと問われたなら、笑ってこう返す。
翳りはまだ、あるけれど。
浮かべた笑みは、自然なもの**]
─道具屋─
[イレーネがユーディットを撫でる様子を眺め。送ってあげてと言う言葉には]
それは構わないけど…。
───分かった。
[大丈夫かと言いかけて、向けられた笑みと続けられた返答に言葉を飲み込んだ。今は一人にした方が良いか、と言う判断。腕の中に居る少女の方が比重が大きかったのも少なからずあるが]
ユーディット立てるかい?
無理そうなら、運んであげるけど。
[言うが早いかユーディットを横抱きに抱え上げて運ぼうとするが、歩けると言われて少し残念そうにしながらそれは断念し。向けられた自然な笑みに安堵を覚えつつ笑み返し了承の意を示して、ユーディットに寄り添う形を取る。一度、案ずるようにイレーネに視線を向けてから、ユーディットと共に道具屋を後にした]
報せるのもそうだけど、ユーディット、休まなくても大丈夫かい?
[提案を受けて気遣う言葉をかける。それにも大丈夫と返されたなら、他の者が居る場所の当たりをつけて、報せに向かうことになる*だろう*]
─回想─
[ユーディがこちらを見上げるその目は見れなかった。
笑顔を作ることだけで精一杯だったから。
明日お代を持ってくるね、と言われれば、わかった、と頷いて。
エーリは、何か言いたそうにしていたけれど。
こちらの気持ちを汲んでくれたようで、すぐに了承してくれた。
内心感謝しながら、去っていく二人を見送って。
もう少し長くいたら、きっと二人の前で泣いてしまっていた。]
─回想・了─
─道具屋 店内─
[どれだけ時間が経っただろうか。
しゃがみこんで泣き続けて、声も枯れて。
目も喉も重く痛くなって、しゃがみこんだせいでベッティが手当てしてくれた足からもまた血が滲み出ていて。
それでも胸の痛みに敵うものは一つとしてなくて。
これだけ泣いてもまだ足りなくて、浅い息をつきながらしゃくりあげる。
こんな姿を兄が見たら、きっと困った顔をして、もう泣き止みなさいと言うだろうと思うのに。
泣き止みたいのに、止まらなくて。]
お、にい、ちゃ…ん……っ…
…ど、して…!
[しるしに気付いた時から、自分が消える覚悟はしていたのに。
大切なものを失う覚悟なんて、全然出来ていなくて。
返ることのない問いを投げたまま、立ち上がることも*できなかった。*]
―ユリアン宅―
お前のそんな顔は珍しいからな。
[珍しいと言われれば無愛想にそう答えた。
けれど頭に置いた手を外すことはなく]
……今日だけだ。
[ユリアンとミハエルから口々に言われることには眉を顰め、目を逸らす。
くしゃりと、少し雑にミハエルの頭を撫でた]
[ユリアンがミハエルの背を撫でる時には、己は少し離れて見ていた。
視線を受ければ目線だけで肯定を返して。
押し殺した泣き声が聞こえ始め、やがて静かになり]
らしくねぇ、な。
[ミハエルをベッドに運ぶ親友を見て]
……まぁ、いいんじゃねぇの。
[顔を見合わせれば、そんなことを言った]
[その後ユリアンに尋ねられ]
俺は刈られる気はねぇ。
[瞬時険を含んだ視線は親友にではなく、見えぬ『死神』への宣戦布告。
目を閉じ、一呼吸置いて]
ただ、
多分、今やらなきゃいけないことはある。
[呟くように言って]
……頼めるか?
[眠るミハエルの方を示し、親友に尋ねた]
─道具屋→村の通り─
[立って歩ける、と言ったのは、しっかりしないと、という気持ちが強かったのだけど。
それとは別の要素もあったとかなかったとか。
ようは、歩けなくなっているのか、と判断されて倍怒られたらやだな、という後ろ向きな部分も少なからずあったりしたのだが、それはそれ]
……うん、大丈夫なんだよ。
出てくる前も、ちゃんと休んでたし。
……もし、歩けなくなりそうだったら、ちゃんと、言うから。
[気遣う言葉にはこう返して]
……それに……ミィも、心配なんだよ。
もしかしたら、じいちゃの時みたいに、気がついてるかも知れないけど。
そうだったら、余計に、心配。
[長の消滅を知った時の事を思い出し。少しだけ、眉が寄った]
─村の通り─
うん、分かった。
[ちゃんと言う、とのユーディットの言葉を受けて了承するように頷いた。次いでミハエルのことを聞くと]
……気付いてる?
誰かが消えたことを感知出来るのか、ミハエルは。
[そのことについては何も聞かされていないため、驚くような表情をする]
それが本当だとしたら……。
ミハエル、今はどこに居るだろう。
ユリアンにウェンデルのことを伝えに行ったなら、そこに居るかな。
[行ってみようか、とユーディットに提案した]
─ユリアン宅─
[ずっとずっと、宥める声は届いていて、自分は随分我儘な事を言っているというのに責める言葉は聞こえずに、あやすような言葉ばかりが届いていた。
ひとりで立っていれずに、
泣きながら、何度も何度も何度も、
消えた先の気配を追うも
──声は聞こえず、手が届かず
翠の瞳の目元は赤く腫れぼったく、
あまり泣きすぎて、心だけでなく、
身体まで、重く疲れてしまったようだった。]
─ユリアン宅─
[それから。
どのくらい寝ていたのかは定かでない。
ゆるやかに意識が浮上して、
目が覚めたのは覚えのないベッドの上で]
……エーリ、兄…?
[抱き上げて運ばれた記憶は、兄の家に遊びに行って、疲れて床で寝たときのそれにぼんやりと似て思えた。
まだ上手く前後が繋がらずにぼんやりと回りを見て]
─村の通り─
消えたことを……っていうのとは、ちょっと、違ったみたい、だけど。
うん、とにかく、感じ取れるものがあるみたい、なんだ。
[話を聞いていた時は、自分も取り乱していたから、あまり良く覚えていないのだけれど]
リアにいのとこ?
そだね、もし行き違ってたら、先にティのとこに行ってもいいんだし。
[心配なのはベッティも……というか、今は心配でない相手の方が少ないのだけれど。
提案に、こくん、とひとつ、頷いた]
―自宅―
[親友の言葉に頷いて]
することがあるなら、そっち優先に。
[ミハエルのことはまかされたと頷いて。
親友の姿を見送った。
パンを食べ終えてからは、眠っているミハエルの頭をなでたりしながら]
遺してくれたものか…
[胸中に思うことは表面にでることはない。
しばらくして、目を覚まし、兄の名を呼ぶ少女に]
おはよう、エーリに会いにいくか?
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