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―→平原エリア―
[とりあえずライヒアルトが行くと言っていたそっちに向かおうということになるだろうか。
ミリィとの新忍術談義はいまだ続いていた]
あらぁ、あれライヒアルトさんとハインリヒさんかしら?
[普通の人よりは目がいいので見つけるのは割かし早めに、一番最初に見つけたかもしれない]
何かお話中のようだわ〜♪
[邪魔するといけないからと遠巻きに少しその様子を眺めているだろうか。
ミリィは魔法とかクロウ使ったりでなんとかしてたかもしれない、してないかもしれない]
―平原エリア―
『お、おれはあんたのことがしりたい……とか言っちゃってみればいいのに』
いやそれなんか違うだろ
[シチの小さな言葉に小さくツッコミを返す。ライヒアルトからは顔をそむけながら。
ある意味そのまんまの言葉だが、そのまんま過ぎてイヤな方向に勘違いされそうで嫌だった。
ケホンと咳払い、ポケットから手を出した。]
……お前は何をとじこめた、琥珀……
……栄光の時か、堕落の日々か……
[小さく詠唱すると、それをライヒアルトと自分の間に転がした。
熱を持った琥珀は枯葉色の煙をゆっくり立ち昇らせていく。]
─平原エリア─
…………?
[小声のやり取りは聞き取れず、首を傾げる。
ちなみに、そう言われたら言われたできっと、特大の『何か』が墜落した事でしょう。
それも、条件反射『だけ』で。
とかいうもしも、はさておいて]
……んで、何しとるわけ、一体?
[転がされた琥珀と、立ち昇る煙。
天鵞絨がす、と細められる]
―平原エリア―
[周囲をゆったりと煙と甘ったるい香りが支配していく。
カルメンらが覗き見していることには気づいてなかったが、そちらにまで煙が及ぶかもしれないしそこまで拡散しないかも分からない。]
端的に説明すると……この煙の中に一定時間いると夢を見るんだ。
んで、その夢から早く起きた方が勝ち。
経験でどうこう、って差はねえよ。自分の意思の問題だからな。
[ポケットの中にある琥珀は、燃やせば煙を出して周囲一帯に拡散する……自らの記憶を刺激して過去の映像を脳内に再生させるという幻覚作用をもった煙だ。
良い夢を見られるか悪い夢を見られるかは、人それぞれで異なるし、深く入れ込みすぎると現実とは異なる妄想に襲われるだろう。バッドトリップというやつか。
良い夢を見られたとしても、心地よすぎて離れがたく思ってしまう。
一時期ヤケになってたハインリヒがこの術を使いすぎて廃人になりかけたところを保護人にぶんなぐられたとかそうでもないとか。
中毒性はない上に魔法として制御出来るあたり、ある意味オクスリよりタチが悪いのかもしれない。
シチは良い夢しか見たことが無かった。]
使い魔に頼って起こしてもらうのは、ナシ。
あんま眠りすぎないようには設定してあるから。
[ふわ、とあくび一つ。
このままでいけば{5}分後には二人とも眠りに落ちることだろう。]
─平原エリア─
……はぁ?
[なされた説明に、天鵞絨はきょとり、と瞬き。
数分沈黙]
別に、それはそれで構いやせんが。
担当導師に、単位として承認されなくても、俺、責任とらんぜ?
『……そういう問題か、アル』
いや、実際そうだろ。
それで留年した、って言われても、困る。
[漆黒の突っ込みには、真顔で返した。
実際どうなるかなんて、多分、学長のみぞ知る所だろうけれど]
―平原エリア―
そーお?実戦にも使えると思うんだけど。
闇討ちにはけっこう便利だぜ、これ?
[とは言ってもハインリヒ自身も実戦には使ったことが無いのだが]
それに、始めちまったもんは仕方ない。
[そもそも目的は別の処にあるのだから]
精神力も肝心だろ?
あとでどんな夢みたか教えてくれよ。
ほいじゃあ、おやすみ……。
[まぶたをゆっくり落とし、ハインリヒは眠りに落ちた。]
─平原エリア─
んー……煙幕設置型のトラップ系スペルには、色々と、欠点も多いと思うぞ。
[なんか真顔で突っ込みつつ]
夢、ねぇ……。
ここン十年、まともなの、見た覚えないんだがなぁ……。
[正確には、拒絶している部分もあるのだが、それはそれとして。
白もふがうとうとし始めるのと前後するよに、ふわり、眠気に包まれた]
[遠くでハインリヒが何かをしている、あがる煙、やがてそれはこちらに近づいてくる。
遠すぎてさすがに口の動きをつかむこともできず]
まぁ、死ぬことはないと思うわ〜♪
[とりあえず口元を布で覆いつつ、飛翔はいち早く夢の世界に旅立っていた。
ミリィやクロウはどうしていたか、自分も意識が落ち始めてよく覚えてない]
[そも、夢見を拒絶している、という事の可否はさておいて。
不自然に呼び込まれた眠りは、逆に意思を無視してそこへと至らせる。
見えるものは、様々で。
例えば、身に宿した魔獣と最初に出会った時の事とか。
その力の暴走で、故郷である『魔獣使いの郷』を半壊させ、両親と幼馴染たちを文字通り『喰らい尽くした』事とか。
……そんな自分を、これまた文字通りの命がけで止め、引き取ってくれた養父との事とか。
そうかと思うと、学院に来てからの事。
ケンカ屋として暴れまわった日々の事とか。
(この辺りは、ひっそり記録に残っているかも知れない)
ナターリエと出会う切欠となった、迷宮試練での事とか、卒業前にやらかした、魔獣との存在をかけた盟約戦とか。
宮廷占星術師となってからも、騒動がなかった試しはなく。
長となってからは、多分、より一層顕著なわけで。
……どうにも平穏ではない人生の記録の早送りは、無意味に長かった]
[それでも、総じて。
今は、全て、受け入れようとしている事で。
完全に、割り切れている訳ではないけれど。
目を逸らさないと決めた──右の腕に刻まれている、とある印にかけて、誓ったから。
寝顔は特に苦しそうとか、そういう事もなく。
むしろ、普通に寝てる様子は、外見年齢と比しても幼いというかなんというか。
それだけで十分ネタになるくらい、かわいいものだったとかなんとか]
―夢の中―
『あきらめちゃえば……』
そうは言っても愛しい故郷だ。そう簡単にはなあ……。
『でも、帰れた人……いるの』
……。
[シチとの会話か。学院に入った当初はまだ元の世界に帰る方法があるはずと望みがあった。
調べれば調べるほど絶望することになった。]
―夢の中―
「こんなところで寝転がって……。」
こ、ここはどこだ……。
「どこの言葉を使っていらっしゃるのかしら?
……まあいいわ。今日は機嫌が悪いの。拾って差し上げます。」
[ガブリエラと出会った記憶か。よく分からない理由で拾われ、保護されることになった。
あの時拾われて生き延びることがなければ、ここまで苦しまずに済んでいたかもしれないとは思う、正直。]
「私に拾われたのだから、そんな顔をせずに笑いなさい。
私は笑い話が好きですの。何かお話になって?」
―平原エリア―
[ぱちり、と目を覚ます。
隣を見ればまだライヒアルトは眠っていた。
その寝顔は幼く見える。]
……。
『……やっちゃう?』
ああ。
[同じく起きたシチ―あとから聞いた話によると、どうやら人間になってゲルダとかくれんぼして遊んだ夢を見たらしい―と、目を合わせて頷き一つ。]
―平原エリア―
[ハインリヒはゆっくりとライヒアルトの顔の真横に左手をつき、彼の顔を真上から見下ろして、ゆっくりと――
――右手の赤いカラーペンで頬にぐるぐるを描いた]
─平原エリア─
[ちなみに、白もふと漆黒も、一緒に同じ状態になっていたわけですが。
しばらく前から体内に戻っていたため、忘れられていた黒もふだけは、きっちり起きており]
『何を、している、か』
[不意に響く、高めの声。
するり、と身体の中から抜け出すように黒もふが現れる。
現状を見て取った黒もふ、ゆらり、と不機嫌そうに尻尾を揺らし]
『ついでに、瞼にも、目、描いちゃうの……』
そうだな。
[今度は黒のカラーペンできゅっきゅっと、彼を起こさないようにらくがきをする。
両頬に赤いぐるぐる、そして瞼に第二の瞳。まつげもばしばし。]
これでいいだろ。
[布袋から小さめの琥珀を取り出すと、ライヒアルトの顔の真上にかざして]
……覚えろ琥珀、これがお前がとどめるべきもの、伝えるべきもの……
[ハインリヒ本人は真剣そのものだ。でも傍目から見るとまぬけ。シチは笑いをこらえている。
熱写よる映像の記録化は難しい。何度も挑戦してもピンボケになる。ハインリヒのレベルではコントロールが効かなかった。]
『だめ。ボケてる。やり直し……』
あーくそ、起きちまう……。
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