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[途切れた言葉。緩く瞬く。
ナターリエが背を向けているため、瞬間過ぎった表情は、誰にも見えぬもの]
……ああ。
あちらのご老人に無理を重ねさせるよりは、良さそうだしな。
[間を置いて、紡がれる答えは淡々とした声音]
石になった人を…。
[再び言葉を失った。
何人もが問いかけるのを見ながら、ずりずりと後ずさる。
左手が小物入れを取り落としそうになり、両手で抱え直す]
どうして。
[同じ問いは逆に近づいた青年が投げていたが]
[知らない声がすぐ傍にあった。何故壊す、と聞く声にやっぱり聞いた事のない声だと思う]
あのねおじさん、さっきのゼルギウスさん、知ってるの?
知ってたら、本当に治すことができる人なの?
答えられないかもしれないけど。
おじさんが壊す人を少なく出来るように、知りたいの。
[触れた先に、老人の体があった。硬い。と感じて、その手を握る]
[ほっとため息。]
あのご老人には落ち着いてから話を聞けばいい。
[先に進み、部屋へ入り階段へ足をかけ先に進む。ライヒアルトの方を向かないまま。]
あ。先に言っておく。……ありがと。
[言葉を終える前に駆け出し、階段を駆け上った。]
…―――っ。
[壁に背を預けると走る痛みは、肩甲骨の部分。息を呑んだ。
翼がもがれた場所とも、例えられる場所。
けれど、傍にオトフリートが居ることもあり、声はあげない。]
そうなんですか?
でも、きっとその我儘と好きなことは、
随分、人に優しいことなんでしょうね。
[そして告げられる言葉に、微笑んで返す。]
本当に、オトフリートさんは、先生なんですね。
大丈夫です。水飲めそうになったら、自分で行けます。
[彼の言葉使いに再度笑みを深めた。]
[老人にはゼルギウスという人物への問いが投げられていた。
彼は一体誰なのか、確かに気にかかる部分ではあった。
彼女の中では「クスリ」とノイズ混じりのもう一つの謎の言葉「ピューリトゥーイ」。彼の様子からして長い問いは星の消滅を速める。「クスリ」の事は考えれば憶測は立てられるかもしれないと考え、ならば――]
…ピューリトゥーイ。
放送が消える前に聞こえた言葉。
この意味を知っているのなら、教えて。
[そう問いを投げたろう。]
───わかった。
[あちら]
[上品な言葉遣い]
[お育ちがよろしいのか]
[老成しているだけだろうか]
[まあ、どちらでもいい]
───おとしたら、ごめんね?
[あまり重いものは得意じゃない]
[眠っているうちに筋肉も落ちた細い腕]
[でも]
[ハインリヒの指示に従う準備はできていた]
そう、だな。
[それまで持つのか、という疑問は今は考えずに。
唐突に告げられた礼に、また一つ瞬く]
……礼を言う手合いの事か……って。
いきなり走るなっ!
[呆れたように言いつつ、自分も階段を駆け上がる。
視界にまた、かかる霞み。
数値はまだ見ていないが、多少、進行はしているらしい、と。
過ぎる思考は、今は切り捨てた]
─ → 二階へ─
…だいじょう、ぶ?
[壁際のエーリィが小さく呻くのが判ったから、声を潜めて聞く。
自分もきっと少しづつ蝕まれていっているのだろうけれど、いまは気づいていなくて。
つらそうな表情を心配そうに見あげた。]
[運ぶ際、手を貸せそうなら貸すつもりで居た。
石と化した体は重い。
ひどく、重い。
重なる問いかけ。
老人は再び眸を開くだろうか。
ぎちり、と自身の体も少し重い]
……ゼルギウス
………
[幾つかの単語を唇の内で反芻する]
本当に、そうであれば。
そっな、に幸せなことはないのですけど、ね。
[彼が、時折顔をしかめるのを見る。
声をこらえている姿に、ここを一度離れようと思った]
―― 分かりました。
どうしてもしんどいときは、お願いですから呼んでください。
[それだけを念押すと、頷いて、踵を返した]
[大広間の、集団の元へではない。
厨房と、医務室と、しばらくどちらへ向かうか逡巡するように、何度か方向をかえるように]
[開かれた扉の奥に階段が見えた。
広い城なのだからフロアがここだけだとは考え難い。
老人が問いに答えてくれてからだが
医務室に運ぶのは力仕事で手伝えそうにないので
厨房で簡単に食事を取ってから上を見に行こうと考えた。
その際、ベアトリーチェも来るかどうかは尋ねただろう。]
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