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[今一度仔の頭を撫でる手に、親を思い出したか。一寸幼竜の表情に影が過ぎる。
…約束の通り、我慢すると決めたか口に出しこそはしなかったが。
向き直る氷竜と心竜の間に交わされる言の葉の、幼子には何と難儀な事か。
聞えた所で恐らく、その意味は欠片と判らぬに違いない。]
「いえ、エーリッヒ殿。私めにはお構いせずとも――
名の一つ、記憶の端に留めて頂ければ幸いです故。」
[頭を下げる機竜には、ゆるりと身をくねらせる。
此方が敬いこそすれ、下げられる身などある筈も無い。]
―西殿・結界前―
[慌てて逸らされる瞳に、どこか困ったような、どこか寂しそうな――
そんな笑みを、浮かべただろうか。気を取り直し、微かに首を振るって]
そう、ありがとう。難儀な結界ねえ、本当に。
[ぽつり呟いた後、気まずそうに俯くアーベルの姿を見て。
今度はどこか優しい笑みを浮かべ、昔よくやったように、頭を撫でた]
ふふ。気にしちゃ駄目よ?
封印結界のことなんだから、おばあさんにお任せなさいな。
[そんな言葉を掛けたところで、生命竜の言葉が聞こえてきただろうか]
……「揺らすもの」
……「力ある剣」
なるほどねぃ。
目的は、それですか。
[それは、先程考えていた答えの一つに当てはまるものだった]
……一つ質問よろしいかしらぁ?
私は、いまいちよく分からないのですけれども、その「力ある剣」とやらは、そんなに巨大な力を持っているのかしらぁ?
もっと、具体的には、それでどこまでのことが出来るようになるのかしらねぃ?
[ダーヴィッドが触媒を手に取る様子に少し視線を走らせつつ]
詳細を教えて欲しいとは言わぬ。
じゃが予測として、注意すべきではあるのでは、と言うことじゃな。
本当にその剣を「揺らすもの」が狙って居るというのであれば、大方の場所は検討がついて居るじゃろう。
かように強大な力を持つ物が保管出来る場所と言えば、限られておる。
[それが何を意味するかは伝わることだろうか]
あくまで推測の域に過ぎんが……注意するに越したことはないじゃろうからのぅ。
―西殿・結界前―
[命竜へと、手をひらり振ろうと開いたところで――閉じたまま、手を上げた。
奇妙なポーズになりながら、直ぐに手を下げる]
いらっしゃい、クレメンス。
まあ……こちらは、見たままって感じかしらね。
解析は進んでるけれど、肝心の糸口まで今一歩。まだ、結構時間がかかりそう。
[ほぅと薄く息を零すも、まだまだ頑張る気は満々の様子で]
そちらは何か進展、あったかしら?
焔が?
誰かを?
調べるぅ?
[その言葉には思いっきり嫌悪感をあらわにした]
……破壊を象徴する焔にそんな繊細なことが出来るのかしらねぃ。
まかり間違って、「あ。壊しちゃったー」とか言い出すんじゃないのかしらぁ?
剣…
それは絶つものにして、刃にあらず。
その力に、断てぬものなし。
[聞こえた言葉に応じて呟く。]
人間の伝承では、そのように。
異世界の魔王すら一刀両断だとか言われていたなぁ。
、わ。
[天青の光が機械竜を包むのを見やり、小さく仔が声を上げる。
幼子には全てが珍しき事の所為か――伸ばす手は一度躊躇われ
しかし一寸後には興味が勝ったか、その羽に指先が触れる。
傍らで見る己ですら、お眼に掛かる機会はそう無い。
仔には尚更興味深いに相違なかった。]
……?
…こんにちは?
[静止した竜に、仔は問いながら柔く首を傾ぐ。
羽に触れた小さな手は、拙いながらも次はその頭を撫ぜる様に。]
―西殿/結界前―
[反射的に視線を逸らすのは見る事により忌避されるのを防ぐ為か、見てしまう事への罪悪感か、もはや青年にもわからない。長年の習い性というのが一番近いのだろう。
氷破竜の寂しげな心の動きは感じたが、何も言わず大人しく撫でられるに任せた。
新たにやって来た生命竜の問いには短く首を横に振って答える]
……いえ。そちらは?
[そうして逆に生命竜に問いかけた]
そうであろうとの推測、ですね。
[左腿の辺りを軽く摩りながらナターリエの言葉に頷いた]
数多の世界で唯一、神の力にすら干渉し、退ける事も適う剣。
その力は強すぎるがゆえ、常には二振りと為され存在する。
稀なるもの以外制御適わず、具現化することは滅多にない。
…合っているでしょうか。
[最後に尋ねた先は、ノーラ]
儂が知るは図書館にて得た知識のみ。
それには剣の存在を綴った書はあれど、その詳細が書かれたものは無かった。
ただ、「強力な力を持つ」とだけ書かれて居ったの。
[ナターリエの問いには得た知識についてを告げる]
[ 老いた大地竜がはっきりと明示せずにいた内容は、厭でも理解出来る。影竜王と会話した際の苛立ちが、不意にこみ上げた。
瞳の色を漆黒から深紫へと移ろわせ、腕を動かすと共に、一時、覆いを払った。]
正しいな。
伝えられている限りでは、そうだ。
[ 火炎竜と、天聖竜と。
二人の言を共に肯定した後、ザムエルへと顔を向ける。]
注意すべきではあろうな。
真に狙われているのであれば、相対するものの手には渡らずとも、
既に竜王の手元にはないであろうから。
―西殿・結界前―
[閉じた手に、いい笑顔ですたすた笑いながら近づいて無理やり開かせ重ねた。
3秒、ほど重ねた後で。
離せば元通りの手の平が戻ってくるだろう。
笑顔は一瞬軽く消えて、溜息へと変わる。]
まーた無茶やったみたいだなぁ。
気張るのはいいが、程ほどにしとけよ?
[そう言いながら。
アーベルと、ブリジットの答えと問いには、そうかと小さく呟いて。]
こっちは『揺らすもの』の目的が分かったくらいか。
ダム爺さんの予想じゃ『力ある剣』らしい。
あとは…ああそうだ、ダーヴィットが何か、調べるとか言ってたな。
[あちらで知りえた事実を述べる。]
―― 西殿・結界前 ――
[機械竜に力を注ぐことに気を取られて、生命竜がやってきたことに気付くのは遅れた。声が聞こえてから、初めて振り向いて、にこりと笑う]
こんにちは、クレメンスさん。お出かけだったんですか?
[その間に翠樹の仔に撫でられた機械竜は、細いメタルの首を僅かに伸ばして、その指に頭を軽く擦り付けると、青く瞳を明滅させた]
…あのさ。
[流水の言葉に、珍しく機嫌を損ねた様子で]
竜じゃないあんたにはよくわかんないだろうけどさ、
竜の「律」とは、使うことではなく正しい方向へ導くこと。
俺らは「公使者」ではなく「番人」であるべきだ。
火炎の竜は「破壊」の「番人」。
無闇に振るわれる事を防ぎ、他に道がない時に扱う為に、適切な時まで管理することが使命。
気の赴くままに力を振るう獣たちとは違うんだっての。
…尤も…色欲本能しか知らぬ生き物にゃ、理解不能だろうけども。
神の力をも退ける、か…。
[エルザの発した詳細を繰り返すように呟き。ノーラからの言葉に視線をそちらへと向ける]
既に竜王様の手元に無いとは。
何ゆえ言い切れる?
ふむ。
[与えられた情報を得て、少しだけ考え込んだ。
焔から教えられるのは癪ではあったが、情報は情報。貴重なものの一つだ]
つまり。
自制するべき心の無い者に渡ることがあれば、世界を変えることが出来るということかしらねぃ。
竜王様一人討伐するだけで、世界は大きく変わるのですからぁ。
なるほど。
目的としては合点がいったわぁ。
…『力ある剣』…
[生命竜の言葉に、呟きが漏れる。その剣のことはインストールされた知識の中にあった]
では、竜王の手に、その剣は今は無いんですね。
[出した結論は過程を省いて一足飛び]
―西殿・結界前―
[精神竜の仕草を見て、ふと過ぎったのは。悔悟のような、微かな思い。
もっと強力な封印のレンズを、もっと若い時に作ってあげる事ができれば。
今更仕方ないことだとは思っても、ゆるりと首を振るった所で――
――目の前には、笑顔の命竜]
あら、あら。ばれちゃってるわねえ。
[困ったような笑みを浮かべて直ぐ、痛みも赤みも引いていった]
ごめんなさいね、クレメンス。ありがとう。
[ほどほどに、という言葉にはあえて答えずに礼を告げる。
その後、目的が分かったと聞けば、微かに目を細める]
―― 西殿・結界前 ――
ああ、ちょいと調べ物で。
[尋ねるエーリッヒにそう答える。
結局自身で調べずとも、ザムエルのおかげで途中で帰ってこれたのだが。まぁ些細な違いなのでそこは暈した。
機械竜と幼竜の様子には、軽く目を細めた。
微笑ましい、と言わんばかりに。]
「狙われているのであれば」の話だ。
……我らに予想がつく事を、
竜王とも在ろう者が予想がつかないと思うのか。
封印を受けた時点で、察せられるであろうよ。
己が手元に置いておけば奪われる可能性が高いこともな。
なればそなたの言うように、別の「保管場所」に移すは道理。
[ 二度目にザムエルに返した声は、不機嫌さが篭っていた。己でもそれは分かったが、抑える事は叶わなかった。]
何より。
彼奴が其の話題について避けていたからだ。
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