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[書庫にて本を返して
ザムエルと、ナターリエの容態は心配でこそあるが、どうする術もなく。
わざわざ確認しにいく気も起きない。
なればどうするべき…といっても疑ってみるかして情報を集めるぐらいしかない。わけではあるが]
正直めんでぇな…
[…なんて、それは誤魔化しか、本心なのか。それを測るものはここにはいない]
ほんとに、ここの庭は必ず誰かいるな……。
「よいばしょ、だもの」
[思わずもらした呟きに、カーバンクルが尻尾を揺らしつつこんな言葉を返して。
ふわり、吹き込んできた夜風に金の髪を揺らしつつ、それになるほど、と呟いて。
小さな声で、歌を口ずさむ。
気持ちを鎮め、内なるものを押さえ込むために]
[どれくらいの時間が過ぎただろうか。
使用人はずっと集中力を絶やさずに少女の荷物、部屋を調べている。
少女はずっと飽きずにその様子を見ている…
やがて、少女の部屋、荷物にはオルゴールが無いことが分かると、使用人は一礼した]
…お疲れ様、です…?
[そのまま部屋を出るかと思いきや。
使用人は少し言いにくそうに…まだ、滞在して貰うことになるのだし、服を洗っておく、と言われ]
…お願い、します…
[少女も使用人も、少し頬を染め、洗い物の受け渡しをしていた]
[一通り、歌い終わる頃にはだいぶ気持ちも鎮まって。
軽く、傷痕の辺りを押さえて、よし、と呟く]
「エーリ」
閉じこもってても、仕方ない。
少し、外、歩こう。
[胸から手を離し、そっと真白を撫でつつこう言って窓辺を離れ、部屋の外へ]
[手を翳せば、変わりかけた花弁の色は元の純白に]
後でお伺いするとしましょうか。
[独り言ちる口調は、執事としてのもの。
天の月を仰げば、モノクルが光を映す]
[…ばたん。
ドアが閉まると、軽く染まった頬を撫で、少女は考えていた]
…どうしよっかなぁ…
[そう、暫く滞在するのだ。
いくら何でも、ずっと寝ていた、と祖母に告げれば呆れられるというか…]
いや、あたしは、別に、全然、構わないんだけど…
[うーん。小さく唸る。
ふと、今、使用人達は忙しいことを思い出す]
…自由?
[今なら、夜の庭園に出ても誰にも文句は言われないだろうか。
実際、庭園には四季折々の花々が咲いていた。
その、夜の顔…はどうなっているのだろうか]
さて……散歩というと、どうしてもあちらになるわけだが。
「おにわ?」
……邸の外には、出られんしな。
[苦笑しつつこう言えば、カーバンクルは嬉しげに尾を揺らし。
その様子に、今度は苦笑とは違う、笑みを浮かべて、庭へと向かう]
―2F廊下―
[立ち並ぶ客室の扉のひとつが開く。人影は廊下へと足を踏み出した。]
[途中で侍女の一人と遭遇し、検分の意を伝えられれば一つ頷くけれど、銀灰の髪に隠れ気味の双眸の色、またそれが何処か遠くを見つめていることに侍女が気づく様子はなかった。]
[部屋へと入る侍女に構う様子もなく、進めていた足はある扉の前で止まる。]
─庭園─
[ゆっくりと足を運んだ先で出迎えるのは、静かな闇と、舞う夜風。
その感触にわずかに目を細めつつ、周囲を見回す。
先ほど、見かけた人影はまだここにいるのだろうか、と。
そんな事を考えて]
[孔雀石の瞳には、静かな色]
おや、レーヴェ様。
御機嫌はいかがですか。
[白の薔薇を携えたままに一礼して、
薄い笑みを浮かべて、声を投げかけた]
[くすっ。
小さく笑ったその瞳は、無邪気な猫の様に輝いていた。
そっとドアを開けると、誰かが階段を降り…
…イレーネ?が、使用人と話していた。
その足音も遠ざかると、ゆっくりとドアの隙間から廊下へと出て…階段を降り始めた]
…誰も…居ない、ね。
[先ほど降りていった誰かの影も見えないことを確認すると、庭園の外から中に戻ってきた時に知った(少女にとっての)近道を通る]
―――…、
[ふと、まるで意識を取り戻したかの様に視線を上げる。
窓から僅か差し込む月明りが、その瞳に蒼の光を見せて。]
………ぁー…
[流石に疲れた、と軽く首を鳴らす。
ぎしりと音を響かせて、寝台から立ち上がり]
ああ……誰がいるのかと思ったら、貴方か。
[そこにいるのが誰かに気づいて、こんな呟きをもらし]
お陰様で、悪くはないですよ。
……あれから、ずっと眠ってたせいか、色々と落ち着いてますし。
[それから、投げられた言葉にこんな答えを返す]
ナターリエ、さん・・・
[部屋の主の名を呼ぶでもなく呟いて、扉を見上げる。其処に既に彼女がいないことは知らない筈なのだが、表情は何処か沈痛なものを思わせる。]
[やがて紅く染まった双眸は一筋の泪を流す。館の主の時と同じ透き通った色。]
―ホール―
まった誰もいないな。いんだけど。
[...はとりあえずホールにやってきた。別に何が目的と言うよりも、目的がないからここにきたと言うほうが正しい。
何をするにしてもここからなら移動しやすいだろうと思って。
とりあえず通りがかった使用人に軽食を頼みつつ、最初はなれなかったのに、慣れたもんだな。と微苦笑]
こんな生活、夢みたいなもんだよなー。ってことでここで起きたことは夢でしたーってな落ちにならないもんかね
[なんて都合のいいことをいっても現実は変わらないことを認識しつつ椅子に座り軽食が来るのを待つ]
御期待に添えなかったなら、申し訳ありません。
[冗談めかしてそんな事を言うも、続いた言葉には首肯]
それは好かった。
[微笑みを湛え、指先は薔薇を弄る。
棘のついたままなれど、それは執事を傷つける事なく]
……ああ。
フラウ・キアストライトの件は、御存知ですか?
[外へと続く扉を開ける…
夜の闇を纏い、月の光に照らされた眠っている花々は少女の知らない夜の顔で、小さく感嘆の声を漏らす]
綺麗…
こんな事なら…もっと、早く出れば良かった…
[お婆ちゃんも、こんな綺麗な夜の世界を見せてくれないなんてずるい。
小さく思うが、ふと、誰かの話し声が聞こえてきた気がして辺りを見回した]
…あっち?
[少し躊躇ったが、そっと足音を忍ばせて声のする方へと近づいていく]
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