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揺れても……弱気になっても、いいと思うよ。
< と、猫は本当はいいたかったのでした。
ブリジットを見て、猫はないて。 >
つらいの、悲しいから
< だけれど、その言葉は、決して黒猫にも、ほかのだれにも、意味は通じなかったでしょう。ほんとうに、ちいさかったのです。
ただ今は、ブリジットが、少しでも、かなしいのを、どうにかできるといいなって。 >
――月が…
[返ってきた答えは曖昧で、なれど酷く端的なもの。
その響きには、有無を言わせぬ深き意味が込められて]
…はい…!
[行こうという声に頷いて後を付いてゆく
月だけではないという言葉に、躊躇いよりも不安が勝った]
……はっきりとは、わからんさ。
今は大分、探査の力も落ちてるしね。
[リディの問いには、小さくため息をついて]
今の所は、この場所の事前知識と、推測と……。
[視線は一瞬、自身に縋る従魔へと]
……セレスが感じるもの。それから状況を判断しているに過ぎん。
は?くれる…て?
[意味を取りかねているうちに、右の手が首筋に触れる。触れた瞬間にその意味を理解した]
ちょ……
[逡巡…けれど振り払おうとはせず]
[黒猫は白猫のそば、ちび影の傍らで撫でる手にさからわずににゃん、と鳴く。
ちび影が落ち着くまではしょうがないから撫でさせたげる。
ぽかぽかするでしょ。あったかいでしょ。
…おちついて、おちついて。大丈夫よ。にゃーぁ]
[風を繰る。屋敷の周囲までなら、何とか範囲内。覚えている闇の気配を探る。屋上も、二階の部屋の付近も、庭も。範囲内を全て風が駆け巡る。しかし、この周囲に気配は無い]
………。
[眉間に皺が寄る。ブリジットが言ったことは本当なのか。事実である可能性は上がった。彼の闇が範囲内から外れていれば、その限りでは無いのだが]
直接下さなかったとなれば──『共犯者、か』。
[極小さな呟き。聞こえずともその前の言葉で察することは出来るだろうか。リディが降りて来たことに視線を向けて。少女がオトフリートに対して訊ねた問いを聞いて、またオトフリートに視線を戻す]
じゃあ、セレスさんは何か判るわけ?
[両手を背中の後ろに組んで、身体を傾けた]
ほら、”界の狭間”の事件のときとか、なんか色々調べたり、見付けたり出来るひとが居たって聞いたよ?
…慰めてくれるの。
[もう一度聞こえた小さな小さな、聞き落としそうな鳴き声。
その意味はやはり分からなかったのだけれど。
とても優しく響いた気がして]
ありがとう。
うん…ありがと…。
[二匹の猫を抱き寄せて。顔を伏せた]
…いそご。
早くしないと、果物の鮮度も落ちる。
[ナタリェが随分はっきりとした意思を見せたので、若干頼もしく思いながら館へ果物籠を手に戻る。
随分白猫と黒猫は仲良くなったものだとしげしげ見ながら、焦りと揺らめきに力と気配を乱すちび影の存在に気づいてあまりいい顔はしないだろう。
果物籠をとりあえずテーブルに置き、それから猫を撫でて必死にどうにか落ち着こうとしているちび影のすぐ傍らにしゃがみこんでその肩に手を重ねながら]
…おちび。大丈夫?
[葡萄酒色の瞳は細まり、影の精霊の調子を尋ねる]
< 影の少女にぎゅっと抱かれて、猫はにゃあ。となきました。
そっと、頬をすりよせて、その腕にぬくもりを伝えましょうか。
黒の猫と目があったら、にゃあ、とないて。
いっしょに、落ち着かせて、あげられると、いいね。 >
――なんでもない。
[ミリィが、首を傾げるのに、ふるふると首を振って。もう一歩下がる。
よく、判らないけど――聞こえたから。 きっと、”そう”なんだ。]
えっと、ミリィ。 …部屋の中、入る?
[ミリィの背後で繰り広げられてることは、
…あまり見せちゃいけない気がして、何となく話題を逸らす。
というか、女の子に見せるな!って、中でメーアが叫んでるから。]
[ハインリヒの呟きは捉えきれずとも、意図は察したようで、注視せねばわからぬほどに小さく頷き]
……ま、機竜の従魔というくらいですし。
機鋼竜の動きを、多少なりとも察知はできるんじゃないかと。
【界の狭間】の時は……まあ、影輝の王が力の流れを辿ったりできたようですが。
セレスの感覚は、そこまでは汎用的じゃないかな。
[黒猫は、白猫と顔を見合わせ、おんなじ気持ちと鳴いた。にゃう。
大丈夫かしら、ちび影ちゃん。
そんなことしてたら葡萄酒色の瞳をした旅の友が帰ってきて、ちび影のそばに現れて。
遅いのよ、ばかー!にゃうー!
黒猫ご立腹。とってもご立腹。
ちび影がびっくりしちゃうから暴れたりはしないけどね]
[払われなかった手は項へと回り]
[もう片手も同じように添えられる]
[顔を寄せて]
[触れ合わせ]
[口唇から直接――喰らう]
[親しくも遠い、雷撃のちから]
[オトフリートに視線を向けていたが故に彼の小さな頷きは感じられた。リディの話を聞いて浮かんだのが一つ]
そういやブリジット。
さっき言ってた「エルザは違う」、とか「無差別」とか。
ありゃどう言うことだ?
[もしかして何か分かるのでは無いか、と猫達を抱き寄せるブリジットへと視線を向ける]
―広間―
[陽の麗人に僅か後れて、広間へと入る。
中にある姿の多さに怯えを抱くも、真っ先に探すは彼の仔の姿]
セレス…!
[急ぎ側に寄れば、震える彼の仔へと跪こうか]
…はい、大丈夫です。
[肩に置かれた手。安定した陽光の力。影を生み出す存在の片方。
それに猫達にも随分と慰められていたから。
顔を上げれば今度こそしっかりと頷いた]
エルザさん、連れて行かれちゃいました。
下に引きこまれていったの。
多分、ダーヴさんもじゃないかな。
動転して、しっかりとは確かめ損なっちゃいましたけど。
[声の震えも消して、そうヘルガに答えた]
[手の中でなにやら黒猫が抗議するように動いて。
その声も理解はできないのでちょっとだけビックリ。
さらにはリディがこっちに向かってきながら]
にゃぁ?
[思わずそのまま猫真似で返してしまったり]
[駆け込んできた声と、対ならざる対の気配。
視線を向ければ、駆け寄る姿が目に入り]
……大丈夫。セレスは、無事。
[少し怯えてるけどね、と言いつつ、ぽんぽん、と従魔の背を叩く]
「……だいじょぶ、だよ……」
[声と気配に気づいてか、従魔も小さな声を上げて]
< あらあら、黒猫が怒ってるみたい。
白い猫は首をかしげて、ヘルガのことを見上げました。
ブリジットがさっきより、ちょっと、力強い声で、猫はほっとしました。
ほっとして、にゃあ、と、なきました。 >
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