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―裏口―
[暫く世間話をした後で、ふと聞こえてくるのは話し声]
今日は誰か来てるのかい?
……ふぅん…俺が増えても大丈夫か?
[来客があることと、それについての懸念を問えば、使用人は笑って問題ないと告げてくる]
ならいいや。
それじゃ、ちょっと旦那に挨拶してくるわ。
うちの親父も気にしてたし。
[そう言うと、そのまま裏口から屋内へと上がりこんで、アーヴァインの居場所を聞くとそちらへと向かう]
―― 廊下 ――
[荷を崩して間もなく廊下へ。
訪れる度に増える屋敷の調度品や絵画を愛でるは、
詩うたいの愉しみのひとつ。
また胡散臭い美術商にでも押し付けられたか。
愚痴のように零す自慢話を付き合うのも、
また詩うたいの此処での仕事。
会う前に予備知識を入れておくのもまた愉しげなひと時。]
─広間─
…ぁ……ぅ……!
[文法の怪しいセシリアの叫ぶような説明。
勢いに押されて恐怖が勝った。
じりじりと後ろへ下がって行き、ソファーの背凭れにぶつかると、一目散にその陰へと隠れる。
ソファーの陰で床に座り込むと、膝を抱えて眼を瞑り、両手で耳を塞いだ]
その様が目に浮かぶようです。
もっとも、御主人も立場は弁えていますから、心配ないと思われますけれど。
[踊り子の言に苦笑を零す。
驚き後退る青年にも慣れているのか、大きな反応はなく]
大丈夫ですか。
[一声を掛けた]
[いつの間に強く閉じていた目を恐る恐る開ける。
目の前にいたはずのラッセルがいないことに気づき、赤くなっていた顔がみるみる青ざめていく]
……あ…はわ…わ…あわわ…………。
[機嫌を損ねてしまったのだろう。
何か失礼をしてしまったのではないかとぐるぐると考えをめぐらしているようだ。
視線が宙を泳いでいる。]
―裏口→アーヴァインの部屋―
[部屋の前について、軽くノックをして。誰何の声にはいつもと変わらぬ様子で]
ギルバートです。雑貨屋の。
[そうして許可を得てから部屋へと入る]
元気そうっすね、相変わらず。
親父が心配してますよ。
「あいつはちっとも顔を見せに来ない」って。
[どこか失礼な物言いもいつものことで]
親父が脚を悪くしなきゃ、いつでも来られたんですけどね…。
そんなわけだから、たまには顔見せてくれると親父も元気出ると思うんで。
[そう言うと「昔とはえらく変わったな」と笑って返されて。旦那には敵わないと苦笑い]
それもそうね。
その分別があるからこそ、人が集まるのでしょうし。
[苦笑する墓守にくすくすとたのしげに笑い。
それから、青年の様子と、青ざめる少女の様子に、あらら、とまたどこか呑気な声をあげ]
落ち着いて、セシリア。
彼は、ね……人と話すのが、あまり得意でないのよ。
だから、ちょっと驚いてしまっているだけ。
[まずは、少女を落ち着けるべきか、とやわらかい口調で声をかけた]
―― 廊下 ――
[二階の客間から廊下を伝い階段へ。
たどり着く先は裏口に近いか、使用人の砕けた声がする。
どうやら客人は多いらしい。
活気のある声に日常との差を垣間見る。
それは詠い奏でる生業を行う者特有の癖のようなもので。
ひとびとの噂を詩に、物語りに変え、伝え歩く。
声を求め。言葉を欲し。]
[暫くの間、村の様子などを話して席を立つ]
今夜はまた一晩お世話になるんで。
ええ…あ、さっきの話、考えておいてくださいよ?
[部屋から出掛けにそう言って、小さく一礼して部屋を出る]
そういや、他に客いるって言ってたっけ。
それから…あいつらにも挨拶しておかねぇとな。
[浮かんだのはこの屋敷の住人達。
広間に行けば会えるだろうかと、そちらに足を向ける]
―アーヴァインの部屋→広間―
―大浴場→玄関前―
[軽く汗を流して、厚手のセーターと青いスカートに着替える。
大浴場をでて玄関前近くを通るときに広間の方が賑やかな声が聞こえてくる。
客の出入りは別段珍しくもないこと、挨拶くらいはしたほうがいいだろうかと少し考える。]
…
[宙を巡っていた視線が一点に止まる。
ソファーの陰でうずくまるラッセルを見つけたのだ。
あわてて声を掛けようとしたところでキャロルの言葉が耳に入った]
えっと……私が何か失礼をしてしまったんじゃ…ないんでしょうか……?
[涙目になりながらキャロルを見上げる。
優しい微笑みを見て、少し落ち着いたようだ]
―館外―
[漸く辿り着いた館には確かな人の気配]
御免下さい。
[掠れ声と共に扉を叩く]
どなたか…。
[道中で転んだりしたか。
外套に留まらず中衣装までもが泥に塗れ傷んでいた]
―広間―
[広間に辿り着いて目に入るのは、なにやら慌てた様子の少女とそれを宥める女性の姿。
それと…]
……なにやってんだ、お前?
[見知った姿…ユージーンの視線を追って、見つけた姿に声を掛けて。
そうしてもう一度部屋の様子を見渡して]
……なるほど。
[と呟く。どうやら男にも馴染みのある光景らしい]
[彷徨うように慣れた屋敷を突き進むと。
客から身が空いたのか。
主の声に留まる。
そのまま挨拶も済ませていないことを理由に、
部屋に招きいれられた詩うたいは、
しばし主人の戯言と共にアルコールと酔いしれる*]
[小刻みに震えるラッセルを軽く、見て。
それから、涙目の視線を受け止める。
微笑は、崩す事無く]
ええ、大丈夫。
私も、彼との初対面の時には同じような事をやってしまったものよ。
[その時の事を思い出し、軽く、肩を竦め]
―外―
ん?
[館の方へと向かっていく、赤い影を見かけた。]
……何だ?あっかいウサギじゃあるまいし。
[興味を引かれ後を追おうとしたが、影はすぐに光の届かない場所へと隠れてまい、一旦は見失う。
残念と首をすくめると、知った館の入り口へと向かって歩いた。]
―広間―
[ソファの影に隠れてしまった青年を一瞥してから、墓守は踊り子に視線を戻した]
良いことです。
[頷く。
踊り子が青年について少女に説明するのに、また一つ頷きを添えた]
嗚呼、いらしてたんですねフェイバーさん。
いつもの通りです。
[現れた雑貨屋の青年にはそう答えた。
光景を見て納得している彼には、恐らくそれだけでも通じるだろう]
―玄関前―
[考えているといくらもしないうちに玄関の外に人の気配。
周りにだれもいないので自分が来客の接待をしないといけないのだろう。
すぐに扉を叩かれる音、無視するわけにもいかないので玄関の戸をゆっくりと開いた]
……
[玄関の外に見えたのは見知らぬ少女の姿、ペコリとお辞儀をしてこんにちわと口だけがかすかに動くが言葉にはならなかった。]
………
[村の住人ではないみかけない顔、見知らぬ相手ゆえに警戒の色は強く。その姿から物乞いか何かだろうかと思いじっと見つめている。
その視線の奥、見間違えるはずもない姿が見えてうれしそうに手を振った。]
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